カーゴニュース 2025年11月6日 第5385号
コマツ(本社・東京都港区、今吉琢也社長兼CEO)とコマツ物流(本社・東京都港区、千田悟郎社長)は、粟津工場(石川県小松市)~大阪工場(大阪府枚方市)間の輸送でダブル連結トラックの運用を10月1日から開始した。海運や鉄道へのモーダルシフトが難しい300㎞以下の中距離輸送を対象に、大型トラック2台分を一度に運べるダブル連結トラックを導入。中間地点の営業所でドライバーが交替するスキームを構築し、CO2排出量の削減とドライバーの長時間労働の抑制を実現する。今後は冬場の対策も含めてオペレーションのさらなる改善を進めていく。
長距離はモーダルシフト、中距離では車格を拡大
コマツ、コマツ物流ではCO2排出量の削減や持続可能な輸送体系の構築に継続的に取り組んでおり、近年、長距離輸送を対象にモーダルシフトを加速。2018年5月、エンジン・油圧機器を生産する小山工場(栃木県小山市)と中小型建設機械を生産する粟津工場間の輸送で鉄道の利用を開始。油圧シリンダーを生産する郡山工場(福島県郡山市)と中大型建設機械を生産する大阪工場間でも、鉄道へのモーダルシフトを実現した。
また、粟津工場で生産しているトランスミッションの一部については、鉄道輸送における12ftコンテナの積載重量制限(最大5t)やサイズなどによる制約から、従来は長距離でも鉄道とトラック輸送を併用していたが、日本通運、JR貨物と連携し、最大10tまで積載可能な20ftの私有コンテナ6基を新造。25年3月、粟津工場からタイヤ式大型建設・鉱山機械を生産する茨城工場(茨城県ひたちなか市)までの鉄道輸送を開始した。
500㎞以上の長距離輸送では鉄道、内航船へのモーダルシフトが進捗し、360㎞以上の完成車輸送では中継輸送のスキームを導入。一方、納期やコスト面でモーダルシフトが困難な300㎞以下の中距離輸送では、車格の拡大による輸送効率化に挑戦。高床トレーラの導入も選択肢としてあったが、水濡れ厳禁の部品等には利用できないため、昨年11月からダブル連結トラック活用の検討を本格的に開始した。
中間地点営業所でドライバーが交替するスキーム
ダブル連結トラック活用の対象ルートに選定したのが、粟津工場~大阪工場間の輸送。粟津工場から大阪工場へはコンポーネント部品、北陸サプライヤーの大阪工場向け部品、空パレットを運んでおり、大阪工場から粟津工場へは補給部品、コンポーネント部品、関西のサプライヤーの粟津工場向け部品、空パレットを、1日に10tトラック2台ずつ出荷していた。
ダブル連結トラックの導入では、北陸自動車道で運行実績のあった日本梱包運輸倉庫をパートナーとし、具体的なオペレーションを検討。重量勝ちの貨物であるため、当初は全長21mの車両を採用。ドライバーの拘束時間を短縮し、日帰り運行が可能となるよう、粟津工場と大阪工場の中間地点(両工場から約130㎞の地点)にあたる日本梱包運輸倉庫長浜営業所(滋賀県長浜市)でドライバーが交替するスキームとした。
ダブル連結トラック運行のための特殊車両通行許可申請を行い、「C条件・D条件」(誘導車付き)を取得後、トライアル動画を撮影したり、軌跡図を用いて安全に運行できることを各都道府県道路管理者に説明し、誘導車なしで運行できるよう条件緩和を実施。また、ダブル連結トラックへの切り替えにあたっては、スポット輸送業務を集約するなどして既存の運送会社の業務量の維持にも配慮した。
積載容積は89%アップ、CO2排出量を36%削減
工場内でのオペレーションのスケジュールも綿密に計画した。粟津工場のケースをみると、荷降ろしでは午前5時30分に西門から入場し、中間地点のスペースで後部のトレーラを切り離し(台切り)、コマツ物流の作業員が午前中に荷降ろしを実施。前方のけん引トラックは東門に近い粟津補給センター前で停車し、ドライバーが荷降ろしする。空になったけん引トラックは午前7時頃いったん退場し、ドライバーは休憩を取る。
荷積みでは、午後2時に再び西門からけん引トラックが入場し、構内の駐車場でコマツ物流の作業員が荷積みを行い、荷降ろし時に台切りした場所に移動。午前中に荷積みが完了している後部トレーラをけん引トラックに連結し、東門から退場する。運用開始から1ヵ月が経過し、連結作業もほぼ時間通りに行えるようになり、コマツ物流側での荷積み作業も習熟が進んだ。11月以降、冬期の積雪時の対応策を早急に詰める。
今回の取り組みは、「石川県 大阪府ダブル連結トラック輸送の確立」として、石川県、コマツ物流、日本梱包運輸倉庫の連名により、国交省の「地域連携モーダルシフト等促進事業」に採択された。ダブル連結トラックを活用することで、10tトラックによる従来の輸送と比べ、積載重量で64%、積載容積で89%アップし、CO2排出量を36%(積載率60%、1日輸送距離400㎞想定)削減できる見込み。
今後の課題では、ダブル連結トラックの構内滞留時間の短縮に取り組む。粟津工場での荷降ろしの入場時間を午前5時30分から午前9時に後ろ倒しすることや、両工場で後部トレーラを連結したままでのオペレーションも検討。積載重量を増やすため、全長23mの車両への切り替えも視野に入れる。新たなルートとして氷見工場(富山県氷見市)と大阪工場間の輸送でもダブル連結トラックの運用の可能性も探る。
購読残数: / 本
恐れ入りますが、ログインをした後に再度印刷をしてください。