カーゴニュース 2025年11月13日 第5387号
オンライン特別編集「10月8日」は通関業の日
財務省関税局は、通関業者が適正な通関業務料金を収受するための環境整備を促す。越境ECの急増に伴い、社会悪物品の国内への流入防止や関税等の適正な徴収のため、通関業者が果たす社会的役割の重要性は一層増している。一方で、労務費上昇分の価格転嫁が進んでいないほか、関税・消費税の立替払いも長年、通関業者の負担となっている。関税局では、通関業者の健全な業務運営に対する荷主の配慮を求めるとともに、現在、国土交通省などが策定を進めている次期総合物流施策大綱にも通関業の振興に関わる施策を盛り込むよう働きかけていく構えだ。
コストの適切な転嫁を促す環境整備が必要
財務省が6月に立ち上げた「急増する少額輸入貨物への対応に関するワーキンググループ」では、1万円以下の少額貨物の輸入件数が近年増加する中、水際取締りにおける課題や、国内外の事業者間のイコールフッティングを図る観点から、少額貨物に係る関税・消費税の免税制度(デミニミス)、少額輸入貨物に係る簡易税率、課税価格決定の特例の見直し等の課税に関する課題が検討され、通関業者を取り巻く状況についても議論のテーマとなっている。
通関業者の適正な業務運営を確保するため、通関業務にかかるコストの通関業務料⾦への適切な転嫁を促す環境の整備を促していく必要性が指摘されるとともに、少額貨物に対して消費税を課税する場合、新たに生じる消費税の立替払いが通関業者に大きな負担となる可能性があり、少額輸入貨物に関する制度見直しにあたって考慮が必要とされた。
適正通関に必要な収入を確保できていない?
通関業者を取り巻く状況をみると、国内の通関業者数は緩やかな増加傾向にあり、2025年4月1日時点では988者(営業所数は2042ヵ所)。ほぼすべての通関業者が港湾運送事業・倉庫業等を兼業している実態があり、資本金が多い大手事業者の方が事業全体の収入に占める通関業収入の割合(通関業収入比率)が小さい傾向にある。
16年度と23年度の通関業者数を比較すると、「資本金1000万円未満」の通関業者が約1・8倍に増加。増加した中小規模の新規参入事業者の中には、越境ECのBtoC貨物を扱う事業者の新規参入があったとみられる。「資本金1000万円未満」の通関業者の約4割は、通関業収入比率が10%以上となっており、大手事業者に比べて比率が高い。
17年10月の輸出入申告官署の自由化に合わせ、通関業務料金の上限額が撤廃され、通関業者は自由に通関業務料金を定められるようになった。しかし、事業者全体の収入に占める通関業収入の割合は低く、通関業の収入の額は過去20年間ほとんど変化していない。また、輸入許可件数の伸びに対し、通関業収入は横ばいとなっている。
輸入申告1件あたりの収入が低下していることは、通関業者が適正な通関を行ううえで必要な収入を確保できていない可能性がある。また、近年、賃金が上昇しているにもかかわらず、通関業の収入・事業者全体の収入ともに伸びていないのは、通関業だけでなく、通関業者が営む事業全般で労務費の転嫁が進んでいないことが考えられる。
通関業の役割や取り巻く状況について周知
一方、税関を取り巻く環境を見ると、越境ECの拡大により24年の輸入許可件数は約1億9000万件とコロナ前の4倍超に増えた。課税価格の合計額が1万円以下の少額輸入貨物が約9割を占めており、従来のBtoBによる輸入を前提とした水際取締りでは、社会悪物品の流入等の不正事案の発生を防げなくなるおそれがある。
BtoC貨物の輸入は今後も増える見込みで、税関がすべての貨物を確認できない中でリスクの高い貨物の審査・検査を重点的に行うためには、通関業者に適正な業務運営を促すことが重要。具体的には、人材の確保や教育などに十分な投資ができる環境を整える必要がある。
関税局では通関業の果たす役割や通関業者を取り巻く状況について周知するとともに、その健全な業務運営に対する荷主の配慮を求めていく。また、国交省等が検討し、年内の策定を目指している次期総合物流施策大綱にも、国際物流における通関業の役割や適正な業務運営につながる施策を盛り込むことを働きかけていく。
関税局の藤中康生業務課長は、荷主と通関業者の民間の取引である個々の通関業務料金の決定に国が介入したり、関税・消費税の立替払いを一律に規制することは考えていないとしたうえで、「通関業を取り巻く近年の環境変化が大きいことを踏まえ、通関業が適正な業務運営を行うことができるよう、関税局としてできることをやっていく」と話している。
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