カーゴニュース 2025年11月27日 第5391号

インタビュー
経営計画の目標達成に向け挑戦を続ける
三菱倉庫 代表取締役社長
斉藤秀親 氏

「物流×不動産」「海外×不動産」のシナジー加速

2025/11/27 06:00
全文公開記事 倉庫・物流施設 インタビュー

新規事業として3つの事業化を加速

 

 ――新経営計画では、新規事業として系統用蓄電池事業、宇宙関連事業、陸上養殖事業の3つを挙げ、事業化を進めていくとしています。このうち系統用蓄電池事業は、横浜と埼玉で大型蓄電池場を整備することを発表しました。

 

 斉藤 蓄電池事業は現在、有効活用されていない用地の活用方策を考える中から発想されたものです。他方、再生可能エネルギーの利用が進むなかで、太陽光発電は昼間に発電した電力が効率的に蓄電されていないという課題がありました。当社の蓄電池事業は「電力倉庫」とネーミングしましたが、大規模な蓄電池を設置することで電力の需給調整、いわば物流における倉庫と同様の役割を果たすことができると考えました。

 

 さらに、蓄電池事業への参入を決めた理由にはもうひとつ大きな理由があります。当社はデータセンタービルの運営を幅広く行っており、大規模電力の運用に長けた専門的な技術者を多数擁しています。彼らの能力を活かせば、蓄電池場をインハウスで運用することができます。つまり、土地と人材の両方を有効活用できるわけです。

「電力倉庫」のブランドで展開する蓄電池事業

 ――陸上養殖事業と宇宙関連事業の事業化についてはいかがでしょうか。

 

 斉藤 陸上養殖事業は、現在、有効活用できていない施設内に大規模な水槽を設置して養殖を行うというものです。ただ、魚などの種類も多岐にわたっており、その種類によって必要となる設備やシステム、投資額などが変わってきます。現在、事業性などの観点から詳細に選定を進めており、そこが固まれば事業として動き出すことになります。

 

 宇宙関連については、ロングレンジでの事業だと考えています。現在、福島県南相馬市と連携協定を締結して、インキュベーション施設の提供など宇宙関連ビジネスへの支援を行っていますが、将来的には宇宙に関する物流事業も手がけられるようにしていきたいと考えています。

 

 ――新経営計画ではM&A戦略も重視しており、期間中に1000億円程度の資金枠を設けていますが、どのような分野をターゲットにしていく考えでしょうか。

 

 斉藤 ターゲットになるのは、重点分野としている「医療・ヘルスケア」「食品・飲料」「自動車/機械・電機」「新素材」「コンシューマー」の5分野の事業拡大に必要なものであり、機能とエリアという2軸から最適かつ有益な投資先を考えていきます。ここ数年、キャバリエ社をはじめとしていくつかのM&Aや出資などを行ってきたこともあり、各方面から入ってくる情報量も格段に増えています。また、外部からの情報だけでなく、社内でも最適な出資対象や投資先についても常に検討しています。

 

企業風土を変え、社員のポテンシャルを引き出す

 

 ――経営計画がスタートして半年が過ぎましたが、ここまでの進捗に手応えを感じていますか。

 

 斉藤 計画に盛り込んだ施策のなかには、すでに実行に移したものや、これから着手していくものなど様々ですが、まだ手応えを感じるような余裕は正直ありません。引き続きやり切る、ということに尽きます。繰り返しになりますが、経営計画でやろうとしていることは相当チャレンジングなものであり、日々挑戦を続けるだけです。

 

 ――23年4月に社長に就任されてから2年半あまりが経過しました。就任以来、「変革」を最大のミッションに掲げてきました。

 

 斉藤 いちばん大事な変革は、企業風土そのものを変えることです。長い歴史の中で続いてきた企業文化や風土はそう簡単には変わりませんので、とにかく継続してやり続けることが大事だと考えています。

 

 先ほど、当社グループには「ポテンシャルがある」と言いましたが、それは土地・建物といったハードだけではなく、従業員の潜在能力のことでもあります。しかし、これまでのような前例踏襲主義や縦社会では、従業員のポテンシャルを十分に発揮することができません。だからこそ、そこを変えていくことが一番大事なのです。しかし、それは私一人でできることではなく、一緒に取り組んでくれる仲間が絶対に必要です。

 

 ただ、少しずつ変わってきたという実感はあります。社長就任以来、全国各地でタウンホールミーティングを重ね、グループの若手社員を中心に対話を重ねてきましたが、最近「会社が変わりつつある」という声を聞くことが増えてきました。従業員一人ひとりが自律的にいきいきと働き、それが会社の成長や社会的な貢献につながることができれば、それ以上に素晴らしいことはないと思っています。

(インタビュアー/西村旦)

タウンホールミーティングで社員と対話

斉藤 秀親(さいとう・ひでちか)

 

 1987年三菱倉庫入社。2018年大阪支店長、20年国際輸送事業部長、21年6月執行役員、22年4月常務執行役員、同年6月代表取締役常務執行役員、23年4月に現職。1964年生まれ、大阪府出身。京大法卒

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