カーゴニュース 2025年11月27日 第5391号

インタビュー
ダイナミックに動く物流に適切に対処していく
日本倉庫協会 理事長
米田 浩 氏

さらにきめ細かく〝声〟を聞く協会運営へ

2025/11/27 06:00
全文公開記事 倉庫・物流施設 インタビュー 団体

「トラック・物流Gメン」への改組から1年

 

 ――「トラックGメン」が「トラック・物流Gメン」に改組されて1年が経過しました。

 

 米田 当初は、トラック事業者に対して違反原因行為を行っている荷主の情報を倉庫事業者から吸い上げるという趣旨だったこともあり、一部からは「我々に密告しろということか」という不満の声があったことは事実です。しかし今回、10~11月の期間で実施されている集中監視月間に際して、倉庫事業者に対する寄託者の振る舞いに関する調査が行われているほか、倉庫事業者に対するプッシュ型の情報収集を実施することが発表されるなど、活動自体が倉庫事業者の実情に配慮した内容に変わってきたことはありがたいと思っています。また、これまで国交省本省と日倉協にのみ置かれていた倉庫事業者向けの通報窓口が、地方運輸局にも設置されることになったことについても歓迎しています。今回の改正物効法で倉庫事業者にも荷待ち時間削減に関する努力義務が課されましたが、我々は以前から「荷主の理解や協力がないと、倉庫事業者単独では対応できない」と言い続けてきました。そうした主張がようやく受け入れられたものと考えています。

 

 ――「標準倉庫寄託約款」が改正され、来年4月1日から施行されることになりました。

 

 米田 倉庫約款は1959年に制定されて以来、60年以上が経過しています。時代にそぐわない規定も目立ってきているため、アップデートすることが改正の趣旨だと理解しています。例えば、営業時間や休業日を現在の勤務実態に合わせたほか、FAXやメールなどによる意思表示、システム障害などが発生した際の寄託引き受けや出庫の一時制限など、近年の業務実態に即した改正を行うほか、保管貨物の減失・損傷以外の損害に対する賠償額の上限も設定されます。

 

 また、民法改正に対応し、諾成契約ではなく要物契約であるとの原則を明確にしたほか、改正物効法への対応として、附帯業務について料金を別途請求できることも明文化されています。

 

 そうした改正内容についてはおおむね了解しているところですが、若干危惧しているのは来年4月の施行までの時間が少ないことです。現時点で改正案は最終決定されておらず、正式な告示にいたっていません。しかし、新約款を採用する場合、来年4月までに個別の寄託者と新約款の適用について合意する必要があります。寄託者が多数に及ぶ場合、個別にコンタクトをとって了解を得るだけでかなりの時間と手間を要します。

 

外国人労働者の活用、地方から期待の声

 

 ――27年から特定技能制度の対象に「物流倉庫」が追加され、外国人労働者が倉庫内作業を行える方向で検討が進んでいます。

 

 米田 12月に新たな分野追加に関する閣議決定が予定されていると聞いており、現在、「物流倉庫」の追加を実現すべく取り組んでいます。今後、追加が正式に決まれば、特定技能評価試験の試験内容や実施団体などを決めていくこととなり、来年度の事業活動として取り組むことになると思います。幸い、トラック業界が1年先行して取り組んでおり、その内容を参考にさせていただこうと考えています。

 

 ――倉庫業界における外国人活用ニーズはどの程度あるのでしょうか。

 

 米田 地方では人材確保に困っている倉庫事業者は多く、地方の会員事業者からは外国人労働者への期待をよく聞いています。今回の特定技能制度への業種追加についても「是非とも進めてほしい」との声を以前から受けていました。

 

 ――トラック業界では荷主への価格転嫁が徐々に進んでいる一方、倉庫業界は若干立ち遅れているとの指摘もあります。

 

 米田 先般行われた次期総合物流施策大綱の策定に向けた検討会で、倉庫業についても「貨物運送業に手当された制度」と同様の効果を持つ措置の検討をお願いしました。トラック業界では、標準的な運賃制度や適正原価制度の導入などが議員立法などによって進んでいますが、同じくサプライチェーンの一翼を担っている倉庫業界には、荷主への価格転嫁を促す制度がないことは確かです。具体的な手法については今後勉強していかなければなりませんが、例えば、政府が持っている物価や人件費の上昇率などのデータを反映した料金改定の仕組みなどの可能性は考えられるのではないでしょうか。

 

 また、荷待ち・荷役時間の短縮など荷主に課されている努力義務を、2030年までの集中改革期間において「新たな商慣習」として定着化させてほしいとの要望も行いました。

 

「倉庫税制の一本足打法」から脱却へ

 

 ――「物流拠点の今後のあり方に関する検討会」において、新たに目指すべき物流拠点として「基幹物流拠点」という考え方が打ち出されました。また、その方向性に基づき倉庫税制の見直しも同時に進んでいます。

 

 米田 「物流拠点の今後のあり方に関する検討会」は、トラックドライバーの働き方改革が進むなかで、物流拠点のあり方をどう考えていくかという課題整理を目的としたものです。他方、倉庫税制を従来のままのかたちで延長要求することは難しいとの判断があり、新たな税制として新規要求を検討してきたという経緯があります。

 

 その結果、中継輸送機能や結節点機能、保管・荷捌き機能などを有した物流拠点・倉庫を「基幹物流拠点」として、税制上の優遇措置を講じる方向で検討が進んでいます。日倉協としては、倉庫の建て替えを後押しする制度は今後とも必要であり、倉庫事業者が使える制度にしてほしいという観点から要望を続けているところです。

 

 ――年末に政府が閣議決定する税制改正大綱で決定するわけですが、仮にその方向で決定した場合、従来の倉庫税制がなくなり、新たな「物流拠点税制」とも言える制度がスタートすることになるのでしょうか。 

 

 米田 そのように理解しています。既存の倉庫税制をスクラップして、新たな新規要求の税制に事実上〝衣替え〟するということになります。そのために必要な法制度についても検討していると聞いています。

 

 私は5年前に理事長として着任して以来、協会運営のあり方として「倉庫税制の一本足打法は難しくなる」と言い続けてきました。そのため、国交省や経産省、環境省などの補助金制度を有効活用していく観点から、会員事業者への情報提供や発信に力を入れていったほか、大型庇の面積を容積率の算定面積から除外する規制緩和の実現などに力を入れてきました。今後もそうした方向で、会員のお役に立てる協会活動を続けていく考えです。        

 

 

 

米田 浩(よねだ・ひろし) 1983年東大法卒、同年運輸省(現・国土交通省入省)。運輸安全委員会事務局審議官、JR四国鉄道事業本部特任部長、鉄道・運輸機構理事、海外運輸協力協会理事長などを経て、2020年6月現職。1959年生まれ。徳島県出身

 

 

 

 

 

 

基幹物流拠点のイメージ
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