カーゴニュース 2026年3月26日 第5422号
神奈川県を基盤に運輸業や流通業などを展開している相鉄グループの相鉄ホールディングス(相鉄HD、本社・横浜市西区、加藤尊正社長)は、既存事業の付加価値向上や新規事業・新サービスの創出のため、「相鉄アクセラレータープログラム」を通じてスタートアップ企業との連携を強めている。2022年度には植物工場の研究開発を行うエコデシック(本社・千葉県柏市、後藤秀樹代表取締役)と連携を開始し、25年4月から業務提携を締結して相鉄線沿線で「都市型地産地消植物工場の実証事業」に着手。同年9月からは、植物工場で栽培・収穫した野菜を相鉄線で貨客混載により輸送し、相鉄ブランド野菜「そうてつとれたて便」として販売している。
駅至近の未活用施設を植物工場に改修
同実証事業は、22年度の「相鉄アクセラレータープログラム」を通じ、エコデシックと検討を進めてきたもので、25年4月23日から本格的にスタートした。当初は相鉄グループが運営するスーパーマーケット「そうてつローゼン」との共同実証の計画であったが、工場用地や輸送・販売・雇用創出の観点から徐々に規模を拡大し、相鉄グループ全体で実施することとなった。相鉄HD経営戦略室課長事業創造担当鈴木洋光氏は、「横浜市は都市農業が盛んだが、農家戸数・農地面積は年々減少傾向にあり、耕作放棄地の増加や農業従事者の不足が課題となっている。一方で、植物工場による野菜の栽培は天候等の条件に左右されず、年間を通じて品質や価格、栽培数量において安定的な栽培が可能であり、沿線での食糧自給率向上や安全・安心な野菜の栽培と供給、地産地消を通じた沿線の魅力向上などの効果を見込んでいる」と説明する。
実証にあたり、相鉄いずみ野線「緑園都市駅」前にある相鉄グループ保有の未活用施設を第1号工場「SOTETSU GREEN LAB」として改修。植物栽培に必要な設備機器や温度調整機器を導入したほか、壁や窓を密閉し、均一な栽培環境を整えた。鈴木氏は「用途地域や植物工場の建築・設計要件などの制限から最適な施設を獲得することに時間を要したが、横浜市への相談やグループ内での連携・調整などによって工場の開設が実現した」と振り返る。
同工場の運営はエコデシックが担当。エコデシックの後藤代表取締役は「一般的な植物工場は、LED照明の光度を強めて栽培速度の向上を図っているが、当社はLED照明を改良し、光合成に必要な光だけを強めることで栽培速度の向上と電気代の削減を両立した」と説明。現在はフリルレタスのみを栽培し、1日に120株を出荷している。農地での栽培に比べ、約3分の1の日数でフリルレタスを育てることができ、低コストでの効率的な栽培を実現している。
収穫したフリルレタスは、相鉄グループが運営するスーパーマーケット「そうてつローゼン」のうち相鉄線沿線にある6店舗で販売。午前中に収穫した野菜を当日の午後には店舗へ納品し、相鉄ブランド野菜「そうてつとれたて便」として販売している。
貨客混載で公共交通の役割を高める
輸送は相鉄線を活用した貨客混載により1日1回実施。フリルレタスと保冷剤を搭載した配送バッグ・荷車とともに配達員が相鉄線の車両に乗車し、1日に対象6店舗中の4店舗、合計120株を納品する。鈴木氏は「輸送は混雑の少ない時間帯に列車内スペースを活用して行い、輸送量も電車に持ち込める荷物の範囲内としている」と説明。貨客混載輸送により、輸送費とCO2排出量の削減を実現するほか、相鉄線沿線内で生産・流通を完結させることで、野菜の鮮度保持と地産地消の推進、必要な分だけ生産することによるフードロスの削減にも寄与する。
両社は実証事業により、都市型地産地消植物工場の運営ノウハウを蓄積し、その有効性を検証。店舗ごとの販売量の調整に活用するほか、フリルレタス以外の野菜の販売や、取扱店舗の拡大も検討していく。
鈴木氏は「そうてつとれたて便」の反響について、「消費者の皆様からは、相鉄グループとしての新たなチャレンジへのお褒めのお言葉や、野菜の新鮮さ、洗わずに食べられる簡便性を高く評価していただいており、売り上げは販売開始以降、順調に伸長している」と語る。また、後藤氏は「やはり相鉄グループのブランド力が売り上げに寄与しているように思う。沿線住民に求められるサービスとして成長していきたい」と意欲を見せる。
事業拡大の方向性について鈴木氏は「そうてつローゼンを起点に、当社グループが運営するホテルなど幅広い生活者との接点を最大限活かした提供も構想している」と説明。事業拡大時の輸送については「現在は相鉄線沿線の店舗で取り扱っているが、今後はバスやトラックなど、既存物流網の活用可能性も探索していきたい」とし、「空いたリソースを活用することで、CO2排出量の削減や、持続可能な物流モデルの構築を目指し、公共交通の役割を高めていきたい」と意気込む。
さらに後藤氏は、「工場を拡大すれば生産効率も上がり、多様な植物を栽培できるようになる」と展望。「いずれは植物工場をフランチャイズ化し、スーパーなどに商品を輸送している物流企業が植物工場を保有・運用するようなスキームも構想している」と実証実験の結果を活かした展開を構想する。
両社は、同実証事業を障がい者雇用や高齢者雇用の創出にもつなげていく方針。現在、実証事業における野菜の輸送は、高年齢者雇用安定法に基づき、相鉄HD定年退職者の継続雇用を行う相鉄ネクストステージが担当。後藤氏は「将来的に工場が拡大すれば、作業をより細分化できるようになる。その際は、植物工場内の軽作業などでも障がい者や高齢者の人材活用を進めていきたい」と語った。
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