カーゴニュース 2026年7月2日 第5448号
物流戦略のキーマン “CLOに訊く”シリーズ
同業他社と物流協業、異業種とも
――4月1日付の組織改正で構造改革本部長とともに、CLOというポストに就きました。これまでも物流改革に取り組まれてきましたが、CLOに求められる役割についてお考えをお聞かせください。
伊藤 出版の物流、流通自体が構造的な転換をしない限り、持続できないという環境認識のもと、物流だけでなくサプライチェーン全体で川上、川下、同業他社、業界団体含めいろいろな関係者と手を取り合いながら変革を進めていくことが、最大のミッションだと思っています。また、社内的な位置づけでは、所管する構造改革本部では、物流領域を中心にプロジェクト組織として、サプライチェーン全体へと改革を貫いていく役割を担います。
また、先ほど申し上げた物流拠点の再編ですが、これは相当難易度の高いプロジェクトになります。なぜなら、物流拠点自体、それを動かしている大型設備、さらには出版に特化したシステム――この3つを一気に変えなければならないからです。物流を中心としたメンバーとともに、この再編をやり切っていくというのは、本当に重いミッションだと認識しています。
――同業他社との協業についてお聞きします。トーハンとの物流協業の進捗はいかがでしょうか。
伊藤 20年に、当社グループの旧出版共同流通(3月31日付で日販が吸収合併)の蓮田センター(埼玉県蓮田市)で雑誌の返品協業を行いました。これは業界では相当、エポックメイキングなことだったと思います。25年の夏からは、当社の所沢センターが担っていた書籍の返品業務をトーハン様の桶川センター(埼玉県桶川市)に移管しました。移管作業は半年かけて3段階で行い、順調に稼働していただいています。環境変化を踏まえると、もう一段、協業領域を拡大できないかと考えています。
――中間流通大手が参加する異業種共同配送コンソーシアム「CODE」にトーハンとともに参画されました。異業種との物流協業に踏み込んだ背景は。
伊藤 出版業界では早い段階から取次会社同士で共同配送が行われていましたが、出版業界内での共同配送だけでは限界がある――。CODEに参画した一番の理由はそこにあります。配送にとどまらず、物流全体についていろいろな情報交換できればと思います。異業種共同配送において、小売店の納品条件の見直しは、超えなければいけないハードルだと思います。「川中」ならではの悩みを共有しながら、異業種の中間流通業者が連携してどのように新しい形をつくっていけるか期待しています。
――出版物に携わっている運送会社は“出版一筋”という会社も多いかと思います。運送会社からの反応はいかがでしょうか。
伊藤 CODEに参画した狙いは、ひとつは出版流通のインフラを維持することと、もうひとつは運送会社の皆様との共存共栄です。たしかに、出版一筋でやって来られた会社も多くあり、出版物以外の荷物を扱うということへの抵抗感は少なからずあるのではないかと認識しています。ただ、いまの出版配送の現実を直視すると、業量の減少により効率が悪化し、運賃の値上げで対応しても、それだけでは継続は困難な段階に来ています。
CODEをはじめとした異業種との共同配送は、出版を捨てるということではありません。出版配送を継続するために、車両の空き時間や空きスペースを有効活用する――というのがそもそもの考え方です。空き時間に運送会社様が異業種の荷物を運ぶことで、1台あたりの収益、ドライバーの稼働率も上げることが可能で、運送会社様との共存共栄があるべき姿だと思います。
サプライチェーンを持続性のある形に
――改正物流法で求められる「荷待ち時間の短縮」「荷役等の時間の短縮」「積載率の向上」の取り組みはいかがでしょうか。
伊藤 数年前から取引先のご協力により納品時間を変えていただくことで配送コースを再編し、積載率向上に取り組んできました。荷待ち時間の削減については、バース予約システムを導入しています。今後は、もう一段サプライチェーン全体という広い視野に立って施策を進めていきたいと思います。
トラック適正化法により「運賃が倍程度に上がってしまう」と金額がクローズアップされていますが、その時々の環境変化に応じて、配送のみならず物流拠点も含めてどうやって持続可能な物流をつくっていくか――ということに尽きると思います。
――書店で出会った1冊の本が人生を変えることもあります。出版物の運送に携わる運送会社から話を聞くと、厳しい事業環境のなかでも「やっぱり本が好きなんだな」と感じます。
伊藤 それは私も感じています。川上、川中、川下いずれも、本や出版というものが好きでいろいろな関わり方をして、そこに心地よさを感じています。運送会社様も出版配送に長年携わって来られた会社が多くいらっしゃいますので、そうした気持ちを持っていただいているのではないかと思います。本を東京近郊から全国に、しかも同じ発売日に届ける――これはありそうで、なかなかない物流です。その先には、発売日に本が届くのを待っているお客様がいます。こうした配送を、誇りを持って担っていただいている運送会社様には、本当に感謝しかありません。そういった皆様と一緒に、本のサプライチェーンを持続性のある形にしていくこと――これを我々の責任としてしっかり果たしていきたいと思います。
いとう・こうじ 1972年生まれ、千葉県出身。96年早稲田大学第一文学部卒、同年日本出版販売入社。2016年部長・経営企画グループ、17年部長・CVS部、19年執行役員CVS部長、20年取締役CVS部、ネット営業部、商品開発部担当、22年取締役CVS部、ネット営業部担当、24年常務取締役物流本部長、CVS部・ネット営業部担当、26年専務取締役、構造改革本部長、物流部・運輸部統括、CLO(現任)
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