カーゴニュース 2026年8月4日 第5457号

貨眺富営320
「昔は暑かった?」
中田 信哉
(神奈川大学名誉教授)

2026/08/03 16:00
全文公開記事 コラム・寄稿

 昔の夏は暑かった。夏休みは終日、堀や湖や畑で魚釣り、トンボやイナゴ採りに行って、心気症気質の僕だったから日射病や日本脳炎の恐怖と闘いながら、それでも炎天下で遊んだ。暑かった。夜は扇風機さえない部屋で汗びっしょり、暑くて寝られず、悶々としていた。長じて、会社勤めになってもエアコンさえない部屋で汗を拭きつつ、事務仕事、大きなカバンをもって得意先回り、ゴルフに行けば草いきれの中で腰を抜かした。そういう暑い想い出しかない。しかし、今はどうだ。冷房の効いた書斎でこの原稿を書いている。会社や協会の会議でも暑いのは自宅とバス停まで、ターミナル駅と会場の間の10分足らず、後は涼しい。年齢的に見ると昔の方が暑かった。昔は昔、今は今。縄文時代や江戸時代と比較してもこれまた仕様がない。

 

 今朝の新聞を読んでいたら暑苦しい事件が載っていた。一つは「白トラにヒラメ輸送委託」というものである。警視庁が水産会社とその社長を書類送検したという。下関港から豊洲までヒラメ400匹を白トラに運ばせていたらしい。2年間で3500万円を白トラ業者に払っていたとか。そうか、まだこんなことをやっていたのかというよりもこれは70年以上前からよく行われていた。昔、三陸から東京へ水産物を運ぶのにいったん、白トラに所有権を移転し、届け先で運賃を含めた金額で買わせるならそれは白トラ行為ではない。映画「トラック野郎」がヒットしたころの話。多分、こういうのは日常のことだったのだろう。摘発は運が悪かったのか。

 

 もう一つは「セブン店員ら不正買い占めや転売」というものである。セブン―イレブン・ジャパンが全加盟店に対してアニメやキャラクターグッズの不適切な販売防止を訴える文書を出したのだそうな。一部の店主や店員が転売する目的で商品を先に買ってしまうということである。この気持ちはわかる。アルバイトの学生ならこういう商品を店頭に出す前に自分で買うだろう。自分でやらなくても友人に話して買わせるという手がある。僕は昔、「コンビニの将来」という雑誌の特集で「コンビニの将来は良くも悪くも学生アルバイトが握っている」と書いた覚えがある。

 

 もう一つは「ジャングリア 集客に課題」である。鳴り物入りで昨年、登場した沖縄本島のヤンバルの今帰仁にできた大規模なテーマパークである。この1年で65万人の来場者があったというが、これは投資金額700億円のテーマパークとして多いか少ないか。内容については問題が出てきているがこれはかつてUSJを成功させた森岡さんという人が担当しているから大丈夫だろうが、問題は集客である。場所が悪かった。那覇から高速道路で100㎞、渋滞するので2時間以上はかかる。これなど初めから那覇港から高速船でパークに港を作ってピストン輸送をさせればよかったのだ。USJの経験は集客の交通や物流が入っていなかったのだろう。こんなのは初めから鉄道やトラック会社が存在していた。文化度の高い施設の企画者ほど、こういう問題がお留守になっている。

 

 字数が余ったのでこういう話を一つ。知人が「あなたを先生と呼ぶか、さんで呼ぶか」と言うから「お好きにどうぞ」という以外にないが、先生という呼称については2種ある、と思う。一つは職業の別称である。医者と教師だが医師免許取りたての研修医でも大学を出たばかりの小学校のホヤホヤ教諭でもみんな先生である。もう一つは政治家、文化人、芸術家・芸能人、専門職の人で実績があり、有名になった人徳のある人を呼ぶ場合である。これは尊称。ロカビリー歌手でも作曲家になって偉くなると「平尾先生」と言われる。政治家ならだれでも角栄さんを「田中先生」と呼ぶ。昔、銀座の客引きは風采の良い人を「社長」と、貧相な人には「先生」と声をかけたそうだ。僕は先生と言われるより「旦那」と呼ばれる方がよい。高校時代からの友人に「旦那衆」と呼ばれているのが何人もいる。かっこいい。

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