カーゴニュース 2026年10月15日 第5475号
日本通関業連合会(岡藤正策会長)は8日、「通関業の日」の記念講演会と懇談会を開催し、会員、財務省関税局・税関、関係法人・団体から約300人が出席した。記念講演会では元外務事務次官、大阪大学特任教授でグローバル寺子屋「薮中塾」を主宰する薮中三十二氏が「激動の国際社会と日本の選択」をテーマに講演した。
「通関業界にとって大きな前進のある年」
薮中氏は講演で、「『国際協調』や『多角的自由貿易体制』など、これまで“常識”とされていた考え方が通用しない世界になっている」と指摘。日中関係やウクライナ戦争の動向について解説し、「日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している」との見解に立ち、国家と日本人がいまなすべきことについて持論を述べた。
懇談会で岡藤会長(阪急阪神エクスプレス)は薮中氏の講演について、「米国の関税措置をはじめ世界の分断や保護主義の動きが続くなか、日々国際物流や通商の現場に身を置く私たちは国際情勢を大局的にとらえることが重要になる」と意義を強調した。
また、「この1年は通関業界にとって大きな前進のある年だった」としたうえで、「3月に策定された総合物流施策大綱には通関業の重要性や労務費などの通関業務料金への価格転嫁をはじめとする環境整備の必要性が明記された。さらに、年度末の参議院金融財政委員会においては、関税等の立替払いの改善の必要性についての答弁も行われた。これらは私たちにとって勇気づけられる出来事となった」と振り返り、来賓の片山さつき財務大臣や寺岡光博関税局長に感謝を述べた。
通関業務料金の価格改定や、関税・消費税等の立替払い問題について、「多くの会員企業で料金改定が進捗し、業界の商慣習が大きく変わろうとしている」と説明。6月に財務省関税局が公表した「税関中期構想2030」にも言及し、「通関業者との連携強化が明確に位置づけられ、我々の社会的な役割が認められた。この具体化に向け、連合会としても積極的に協力していく」と強調した。
通関連が昨年創設したEPA関税認定アドバイザー制度については、「8月に第2期として225人の通関士を認定し、認定者は全国で300人を超えている」と報告。「同制度は認定そのものが目的ではなく、通関士が活躍の範囲を広げ、新たなビジネスモデルを構築することが本旨。連合会としても引き続き最大限のフォローアップに取り組んでいく」と表明した。
結びに、「越境ECの急増や経済安全保障への対応など通関業を取り巻く環境は急速に変化している」と指摘し、「これらの変化を好機ととらえ、国際物流を支える重要な社会インフラとしての責務を果たしつつ、通関業者が誇りと将来に夢を持てる業界となるよう努力していく」と語った。
「通関業者の事業環境整備はわが国の物流基盤強化」
次に、片山財務大臣が、「日頃から通関業者の皆様には関税政策や税関行政に大変なご理解とご協力を賜っている」と謝辞を述べた。また、EPA(経済連携協定)や越境ECの拡大など貿易環境の変化に触れ、「貿易の円滑化や社会悪物品の流入を防ぐためには、通関業者の皆様の協力が必要」と語り、「サプライチェーンの強靭化と経済安全保障の確保のためにも、国際物流のパートナーとしてご活躍いただきたい」と激励した。
さらに、「事実上、通関業者の皆様には国家の重要な責務を分掌頂いており、通関業界の事業環境を整備することは、わが国の物流基盤を強化することにもなるため、今後もできる限りの努力を続けていく」と表明。「現在、関税局では国際物流と税関行政に関する懇談会の開催を計画している。これにより、通関業界の実情や現場課題を吸い上げ、成果につなげていく」と述べた。
その後、元関税局長で日本関税協会東京支部長の藤岡博氏が乾杯の音頭を取り、「通関業務料金の改定が続いており、非常に心強い」と挨拶し、懇談に移行。
中締めを通関連顧問の辻卓史氏(辻事業サポート事務所)が行い、国際物流や海外進出における通関業、通関士が果たす役割を強調したうえで、「EPA関税認定アドバイザー制度には大きな期待を寄せている。今後とも通関士の皆様には誇りを持って業務に励んでいただきたい」とエールを送った。
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