カーゴニュース 2024年10月3日 第5280号
蝸牛の頭もたげしにも似たり 子規
やっと熱帯から脱しようとする気配。今は電気代だけが気がかり。秋の涼風は楽しみですが、すぐに寒さ対策です。秋など一瞬の間。
自民党の総裁選びだけは暑苦しさが続く。どうしてこんな多くの人が手を挙げるのか。先の都知事選挙でも看板に溢れるくらいの人が立候補。どうも、この時代、選挙に立候補すること自体が当落に関係なくいろいろな“利益”を生むということが発見されたのでしょう。選挙では建前は当選するという同じ床(場所)に居ながら、狙い(夢)はさまざまなようです。これを同床異夢と言う。
この異なる夢を見分ける必要がある。9月に東京海洋大学で日本物流学会が開催されました。懇親会が加わるのはコロナ後、初めて。楽しかったけれど、未だに会場参加以外にリモート参加があるのでデカイ教室に空席が目立つ。例会はともかく全国大会くらいは会場参加に限定した方がよいのでは。普段会えない人の交流が主目的なのですから。懇親会にリモートで参加してどうなる。
この大会の初日のシンポジウムを聞いていて考えました。今年のパネリストはJILS系の人が中心でしたから、2024年問題とか物流危機をテーマにしながらトラック業界で言う物流問題とまるで異なる展開でした。その中でこういう話がでました。「物流改善とか近代化で数十億という費用が節約できる。この物流の重要性をトップに知ってもらわねばならない」と言うのです。「ちょっと待ってくれ。その話どこかで聞いたことがある」。そうです。50年前に大きな話題となった「物流コスト第三の利潤源論」です。物流コストを10億円節約できればその10億円はそのまま利益となる、と言うがそんなことはあるわけがない。もし、物流がそれほど重要ならトップがそれを認識していないわけがない。所詮、物流コストは荷主企業にとっては消費財メーカーであれ大手チェーン流通業であれ、たかだか売上額対比で5%以下でしかない。消費財メーカーにとってはマスメディアによる広告費は売上額の10%にもなるのです。だからトップも広告については意見を言う。しかし、物流改善はトップもコストとして理解していてもその改善は物流部門の人に任せている。それにコスト的な不満があれば部課長を変えればよいだけの話。荷主にとって物流をコストで見る(大部分は固定費だが)のでなく、マーケティングの戦略的意義を付加して初めてトップがそれを理解してくれる。でも、何となく荷主の物流に対しての姿勢がわかる話です。
国交省や経産省の委員会があり、そこでは24年問題とか物流改編への対応が話し合われ、荷主も運輸業もお互い理解しているように見えるが、本音とその対応がそれぞれ異なる。これも同床異夢でしょう。名古屋商工会議所で24年問題の施策について荷主企業と物流企業に対して調査をしたところ、荷主の中小企業では「標準運賃の見直し」と「残業時間の上限」についてはある程度の認知はされているが「改善告示の見直し」、「政策パッケージ」、「自主行動計画」、「トラックGメン」はほとんど認知されていなかったという記事をどこかで読んだ。まあ、そんなもんでしょう。荷主にとっては費用問題、運輸業にとっては収入問題。同じ場で物流近代化を話してもお互いの思惑は異なる。みんなわかっていながらその先は知らん顔をする。ならば「異床同夢」である方がよい。両方が納得する方策を探し、それに集約して努力を傾注する方がよくないか。学会でも運輸系の研究者と荷主のロジスティクス系の研究者がいる。同じ学会にいながら、お互い何となく釈然としない顔をしているのです。
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