カーゴニュース 2025年3月13日 第5323号
新規M&Aによりヘルスケアでシナジー創出へ
――重点産業に位置づけている分野へのアプローチを教えてください。
古江 経営計画の中でテクノロジー、モビリティ、ライフスタイル、ヘルスケア、半導体の5分野を重点産業に位置づけています。需要拡大が続く半導体については今期も引き続き力を入れていきますし、モビリティではBYDをはじめとする中資系自動車メーカーをいかに開拓できるかをテーマにしています。
ヘルスケア産業では、これまではGDP(医薬品の適正流通基準)が日本で法制化されることを見越して、日系メガファーマを主なターゲットにしてきましたが、現在は欧米系メガファーマに営業の軸足を置いています。欧米では米国のFDA(Food and Drug Administration)認証などの医薬品に関する厳格な基準があるため、当社のGDPに準拠したオペレーションが高い評価を受けています。米国では、20年に子会社化した医薬品物流専業のMDロジスティクスとのシナジーが順調に出ています。
――医療機器まで含めたヘルスケア分野では、2月にドイツのSimon Hegele(シーモン・ヘーゲレ)社の買収が完了しました。
古江 シーモン・ヘーゲレ社は医療機器に特化した物流会社で、大型医療機器の病院内での据え付けなどに高いノウハウを有しています。その一方で、FWD事業のプラットフォームを持っていなかったこともあり、NXグループのFWD機能と連携することで、輸送から搬入・据え付けまで一気通貫でのサービスが提供できるようになります。今後、ヘルスケア領域において相当なシナジーを発揮できると期待しています。
非日系拡大、ロジ事業注力で収益確保へ
――今後のリージョンごとの課題や事業戦略について教えてください。
古江 例えばNXアメリカ、アジアで言えば香港やマレーシア、タイといった現地法人はこれまで、主に日系企業にFWDサービスを提供することで成長してきました。これらの現法は優等生としてグローバル成長を長くけん引してきましたが、事業環境の変化に伴ってビジネスモデルの変革が求められるようになる中で、その対応が少し遅れているという印象を持っています。
一方で、現在大きく成長しているのは欧州です。13年に買収したイタリアのフランコ・ヴァーゴ社やCP社、そして今回のシーモン・ヘーゲレ社など多くの外資系物流会社をグループに迎え入れたことで、非日系顧客が増えるとともに、マネジメント手法も大きく変わりました。欧州ではほとんどの現法トップを外国籍の社員が務め、従来型の海外法人のあり方から大きく進化しています。
今期はそこにもう少しテコ入れをしていきたいと考えています。顧客属性で言い換えると、非日系顧客をもっと増やしていくとともに、ボラティリティが高いFWD事業だけに依存するのではなく、倉庫・配送を中心としたロジスティクス事業に注力していくことで、安定的な収益を確保できるようにしていきます。
また、グローバルアカウントだけでなく、SMEに対するマーケティングや営業を強化していく必要もあります。インオーガニックについては買収した会社に対するPMIをしっかりやっていく一方、オーガニックでは、ビジネスモデルの見直しやマネジメントの現地化を進めていきます。
――欧州でのM&Aが続いたこともあり、リージョン別の売上では欧州が抜きん出ています。
古江 その通りですが、逆に米州が少し物足りないという言い方もできます。米国はマーケット規模が大きいわけですから、そこで当社ができること、成長の余地はまだあるはずです。また中国についても、同国に対する企業投資意欲にかつてほどの勢いが見られない中で、どのような成長戦略を描くことができるかを考えていく必要があります。中国ではこれまで、物流園区や保税区内に多くの現地物流会社を設立してきましたが、そうした会社のあり方も含め、最適な事業体制をもう一度検証していきます。現在、日本事業で事業ポートフォリオの見直しを進めていますが、海外についても考え方は同じだと思います。
M&Aについては、結果的に欧州に集中してしまったことは確かで、その意味で今後は欧州以外のエリアでの優先度が上がる面はあると思います。当然、米州におけるインオーガニックな成長についても検討していきますが、まずはオーガニックで確かな成長戦略を描くことが重要です。
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