カーゴニュース 2025年3月13日 第5323号

インタビュー
グローバル営業を加速させる基盤づくりを進めていく
NIPPON EXPRESSホールディングス
専務執行役員 グローバル事業本部長
古江忠博 氏

2025/03/12 17:00
FOCUS インタビュー グローバル物流

CP社とのシナジーは順調に進捗

 

 ――CP社のグループ化から1年が経ちましたが、シナジー創出に向けた取り組みの現状はいかがでしょうか。

 

 古江 先ほども少し触れましたが、CP社はFWD事業で相当な物量を持っており、NXの物量と合算することで、航空会社や船社とのディールで有利なレートを引き出す取り組みがかなり進んできました。また、一部レーンではコ・ロード(共同混載)も始まっています。CP社が強い路線については当社が貨物を差し込み、逆に当社が強い路線ではCP社が貨物を差し込むという形での協業が順調に進んでいます。

 

 また、国やエリアごとの協業にも着手しています。NXが強いエリアでは当社側の拠点にCP社を寄せる、またはその逆となる取り組みを世界各国で進めていきます。エリアごとの整理がだいぶ進んできたので、それを実行していくフェーズに入っていきます。NX、CP社ともに貨物量が少ない拠点もあるので、それらを統合することでコスト抑制を図り、利益増に貢献できる仕組みをつくっていきます。もちろん、両社ともに確固たる営業基盤があり、顧客層も重複していないエリアでは併存させていくこともあります。

CP社とのシナジー創出は順調に進む

 ――復興需要が期待されるウクライナでの協業も期待されます。

 古江 CP社は以前、ウクライナの物流会社であるFormag(フォルマグ)社と代理店契約を結んでいましたが、紛争が始まって以降は関係が途絶えていました。しかし今後、復興需要の高まりが予想される中で、NX欧州として現地代理店の選定をもう一度行い、あらためてNX欧州とフォルマグ社の間で協業の覚書を締結しました。これにより、ウクライナ国内まで一気通貫で輸送できる体制が整備され、CP社を含めた3社で需要に対応できる体制が整いました。ウクライナを巡る情勢は流動的ではあるものの、今後は日本からの復興支援の動きが拡大することが予想されます。そうした動きに対して、物流会社としてお手伝いができればと考えています。

 

全体最適の観点から海外の成長を支援

海外でのロジ事業に注力(写真はインド南部に開設した新倉庫)

――GBHQが22年7月に発足して3年近くが経過しようとしていますが、組織としての現状はいかがでしょうか。

 

 古江 おおむね順調だと思います。ただ、私が1年前に着任して感じたのは、メンバーが200人以上とそれなりの大所帯ということもあり部門間の横の連携が少し弱い点が見られました。例えば、商品・サービスを開発するプロダクト部門と営業部門との間でもっと活発なコミュニケーションがあってもいいと思います。他方、外国籍の優秀な人財をより多く採用するため、必ずしも日本への赴任・駐在を条件としない〝適材適所適地主義〟を採用していますが、これはうまく機能しています。

 

 GBHQの存在意義や目的は、いかに海外での成長に貢献していけるかにあります。各リージョンや国における課題は、第一義的には現地の役員が担当していくわけですが、GBHQとして全体最適の観点からコミットを強め、グループ全体の戦略や方針を落とし込んでいくことが必要です。今期については、ロジスティクス事業に注力していくという全体方針のもと、単にプロダクトをつくるだけに終わらず、人的支援を含め現地と伴走していける体制を強化していきます。

 

 ――海外でロジスティクス事業を拡大していくためにどのような取り組みを進めていきますか。

 

 古江 日本にはロジ事業に関する高いノウハウや知見があります。営業面では日本通運内に産業別の営業組織があり、産業分野ごとに専門的なナレッジが集積しています。また、日本通運のロジスティクス事業推進部では「Logistics boot camp(ロジスティクス・ブートキャンプ)」や「Logistics Academy(ロジスティクス・アカデミー)」などロジスティクス人財の育成を幅広く行っており、そうしたノウハウを海外に横展開していくことで、海外でもロジ人財を育成していきます。

 

 さらに、安全やサービス品質の高さといったNXグループの強みを海外にも広げていくため、「5S3定」(整理・整頓・清掃・清潔・躾の5Sおよび定位・定品・定量の3定)や、倉庫内に表示するサイネージや安全標識をグローバルで統一することで、どの国でも同じ品質のサービスを提供できる体制を整備していきます。

 

 非日系企業では、NXグループのFWD事業に対する認知度はかなり高まってきたものの、ロジ事業についての認知はまだまだ低い傾向があります。しかし、非日系グローバルアカウントでも、まずは日本国内での業務を通じて高い品質を評価してもらい、それがきっかけとなって海外での仕事につながっていく〝勝ちパターン〟が徐々に増えています。この流れをさらに加速させていきます。

 

 ――将来、GBHQの本部機能を海外に移すというアイデアはあるのでしょうか。

 

 古江 現時点でそうした考えはありません。〝適材適所適地主義〟が機能しており、今のところは東京に本部があることに不自由を感じていません。しかし、引き続き検討すべきテーマであるとの認識は持っており、海外事業をさらに成長させていくために「本当に日本でいいのか」という点は考え続けていく必要があると思います。その場合、例えば、グローバル事業を統括する中間持株会社を設立するといったアイデアも検討案のひとつになる可能性があるかもしれません。

1 2 3 4
続きを読む

購読残数: / 本

この記事は登録会員限定です
この記事は有料購読者限定記事です。
別途お申し込みをお勧めします。