カーゴニュース 2025年3月13日 第5323号
注目のスタートアップ! トップが語る物流DX
実務とITの両立を〝強み〟に
――国内における貿易の不平等な状況を発見したことが「おまかせ貿易」のような中小企業向けサービスの開発につながっていくわけですね。中小企業が貿易を行ううえで最も大きな課題とは何でしょうか。
足立 貿易業務に対応できる人材の不足です。海外進出を始めようにも何から着手していいか分からないという会社も多いのが現状です。展示会などへの出展であれば日本貿易振興機構(JETRO)などのサポートがあるのですが、海外の販路開拓には貿易に関する複雑な知識に加え、言語の壁もあります。また、貿易のために新しい人材を採用するにはコストや時間もかかるため、業務を効率化できるシステムや貿易のプロによる支援が必要だと感じました。
――実際にサービスを利用している企業からはどういった点が評価されていますか。
足立 四国のとあるユーザー企業は、ナイジェリア向けに道路補修材を輸出しているのですが、当社の社員も現地に赴き、補修材の実証と販売をサポートしています。このように事業に直接伴走するサービスであることが高く評価されています。単にシステムだけを提供するのではなく、実務面も手厚く支援することで顧客の貿易業務を支えています。
ですが、単に顧客が販売する商品の貿易を担うだけであれば、ただの商社に過ぎません。自社のためでなく、顧客が望む貿易の仕組みを構築することが私たちのビジネスであり、あくまで企業のサポーターという立ち位置にあります。貿易支援といってもコンサルティングを行うだけでなく、フィジカルで貿易実務を担当しつつ、システム開発を通じて効率化を実現していく――つまり、実務とITを両立していることが、大手商社と対抗できる当社の強みだと思っています。
データ連携により貿易支援を〝面〟で展開
――大手フォワーダーなども、一括見積もり機能を備えたデジタルフォワーディングによって貿易をサポートするシステムを提供しています。そうしたサービスとの違いはなんでしょうか。
足立 たとえば、フォワーダーが提供しているシステムを利用する場合、フォワーダーA社に輸送を依頼するときはA社のシステムを、B社に依頼するときはB社のシステムを利用しなければならないため、メールで見積もりを照会しているときとさほど労力が変わりません。ですが、「デジトラッドフォワーディング」を使えば、輸送を依頼するフォワーダーに縛られることなく、システムを利用することができます。
多様なシステムが世に出回っていることもあり、システムに対するユーザーの目は肥えています。こうしたユーザーの期待に応えるとともに、システムに慣れていないユーザーにも受け入れてもらえるよう、使いやすさとデザイン性によるUX(利用者の体験価値)の向上には徹底したこだわりを持っています。操作しなければならない項目が多岐にわたり、どれから使えばいいのかわからない、という状況を極力なくすため、マニュアルを読まなくても直感的に操作できるデザインを心がけています。
現在は、アカウントをひとつ作れば、今後当社が開発する新たなサービスだけでなく、外部のサービスも利用できるようにするため、円滑なシステム連携をコンセプトに据えた開発を進めています。「デジトラッド」を利用すれば、PFを介して異なるシステム同士で、主要なデータを連携できる状況が理想であり、貿易支援を〝点〟ではなく、〝面〟で展開することが可能になります。こうした外部サービスも含めた連携強化は、他社との大きな差別化につながっていくと考えています。
――中小企業は新しいシステムへの切り替えがコスト面で難しい面もありますが、「デジトラッド」を介することで、システムに縛られずに取引先へのデータの提供が可能になるということですね。
足立 中小企業がフォワーダーに依頼する際に敬遠されがちなのは、貿易の知識が乏しい人が依頼するために、必要書類がそろっていなかったり、依頼の内容もわかりづらく、それにもかかわらず物量が少ないためです。しかし、「デジトラッド」では基本的なフローの説明や必要な書類・書式の準備、実際の依頼などを手厚くサポートします。そのため、「デジトラッド」を介して届く依頼は、データもそろっていてきちんとしたものが多いという信頼感が生まれ、業務拡大につながりやすくなります。
――各サービスの現在の利用状況や最終的なユーザー数の目標、目標達成までの想定期間を教えて下さい。
足立 「デジトラッド」については、主要機能のひとつである「貿易クラウド」は200社近いすべてのユーザーが利用しています。また、「おまかせ貿易」は現在250社以上の利用がありますが、2027年までに1000社の利用を目標にしています。
最終的には、貿易を手がけている事業者の半分が「デジトラッド」を使っている世界線を目指しています。ただ、貿易の多くは大手企業によるものなので、サービスを利用してもらうために高いハードルもあります。なるべく早期に目標に近づけるよう、新たなサービスの開発や営業に注力していきたいと考えています。
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