カーゴニュース 2025年3月13日 第5323号
注目のスタートアップ! トップが語る物流DX
デジタル貿易サービス「デジトラッド」などの提供を通じて企業の複雑な貿易業務をサポートし、急成長を遂げているのがSTANDAGE(スタンデージ、本社・東京都港区、足立彰紀代表取締役社長CEO)だ。「システム開発」と「実務の提供」の両輪を強みに、中小企業の海外進出や新興国との貿易を後押しすることで、貿易における〝平等な世界〟の実現を目指す。足立代表取締役社長CEOに足元の事業動向や今後の成長戦略について聞いた。(インタビュアー/松浦優樹)
仮想通貨による貿易決済が事業のスタートに
――まずは貴社の事業概要やビジョンについてお聞かせください。
足立 当社は「すべての国が、すべてのものに、平等にアクセスできる世界」の実現をビジョンに掲げています。主なサービスとして、ブロックチェーンと仮想通貨を利用した日本初の貿易決済システムを含む、デジタル貿易プラットフォーム(PF)「デジトラッド」を提供しています。PFは、物流費用の見積もりサービス「デジトラッドフォワーディング」や、受発注業務をクラウド上で一元管理できる「デジトラッド貿易クラウド」など、貿易業務を効率化する複数の機能で構成されています。
加えて、これから海外進出を開始する中小企業向けに、海外での販路拡大から実務までを一気通貫で支援する「おまかせ貿易」を展開しており、こちらも好評を得てユーザー数が拡大しています。
――これまでのキャリアについてお尋ねします。現在の事業を立ち上げるきっかけは何でしたか。
足立 私は2017年まで伊藤忠商事で貿易に関わる業務を担当していたのですが、その中でブロックチェーン技術を利用したステーブルコイン(SC)による貿易決済の存在を知りました。SCのような仮想通貨は当時、「怪しいもの」というイメージがあったのですが、既存の金融インフラを介さずに、世界中の人々に価値を提供できることに魅力と可能性を感じました。実際、海外で大規模災害が起きた際、被災者が募金用のバーコードをSNSに公開し、仮想通貨で募金が集まったという事例がありました。仮想通貨は金融インフラが充分に整備されていない新興国との貿易決済にも利用できると思ったことが事業の始まりです。
――貴社の貿易決済サービスは、SCをブロックチェーン上のデジタル金庫に入金後、BL(船荷証券)と引き換えることで、迅速かつ透明性のある決済を可能としています。これを日本初の事業として立ち上げるのは勇気のいる決断だったと思います。
足立 通常のスタートアップ企業は、最初に事業計画を決めて資金調達するというのが一般的だと思うのですが、私の場合は、現在の副社長である大森健太と二人で、何も準備せずに会社を飛び出しました。ブロックチェーン技術を活用して貿易をサポートするというアイデアこそありましたが、技術もアセットも持たずに、マンションの一室から事業をスタートしました。
17年に最初の決済システムを開発し、大手企業へ営業に行ったり、ヒアリングを行ったりしていました。しかし、18年に仮想通貨市場がクラッシュしてしまい、加えて大手交換業者へのハッキングによる流出事件も重なったため、大手企業は仮想通貨の取り扱いを敬遠するようになりました。国内での需要が見込みづらくなったこともあり、今度は海外でのニーズを探り始めました。
――やはりターゲットは新興国を想定していたのですか。
足立 最初に目を付けたのがアフリカです。これまで日本が積極的に貿易を行っておらず、今後のブロックチェーン技術の活躍が見込める地域を選びました。アフリカでもブロックチェーン技術の活用が注目されており、とくに、アフリカで最もGDP(国内総生産)が高いナイジェリアでは利用が進んでいます。また、ケニアには独自の送金システムがあるなど、既存の金融インフラが整備されていないために、新しいテクノロジーがインフラとして定着しやすく、その意味でアフリカとブロックチェーン技術には高い親和性がありました。そこで、海外での決済システム営業における最初のターゲットをナイジェリアに絞りました。
他方、国内では、中小企業にも決済システムの営業に行ったのですが、そもそも中小には自前で貿易をすることができない企業が多く、決済システムに対するニーズはあまりありませんでした。ただ、中小企業は貿易をやりたくないわけではなく、商社に依頼しようにも、中小企業の物量では取り扱ってもらえません。また、自前で行うにもノウハウの面でハードルが高く、海外進出を行うためのサポートが求められていました。つまり、「すべての国が、すべてのものに、平等にアクセスできる世界」を実現するためには、まずは足元の国内から課題を解決していく必要があったわけです。
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