カーゴニュース 2025年3月13日 第5323号

注目のスタートアップ! トップが語る物流DX

インタビュー
「システム」「実務」の両輪で貿易サポート
STANDAGE 代表取締役社長CEO
足立彰紀 氏

中小の海外進出支援し〝平等な世界〟へ

2025/03/13 07:00
全文公開記事 インタビュー グローバル物流 DX・システム・新技術

大手荷主向けのSaaSシステム開発が進行中

 

 ――今後の事業展開についてお尋ねします。貿易決済システムについては、さらなる機能開発や事業拡大の計画はあるのでしょうか。

 

 足立 SCによる貿易決済のマーケットはまだ発展途上にあります。ですが、23年6月に改正資金決済法が施行され、SCの国内発行が可能になったことは、将来に向けたデジタル決済拡大の追い風になると考えています。当社では現在、既存の貿易決済システムと海外のスタートアップが提供するeBL(電子船荷証券)発行プラットフォームを連携し、「代金」と「商品」の同時交換を実現する世界初の貿易決済サービスの開発を進めています。国産SCの発行により、サービスの需要拡大を期待したいところですが、改正法に基づく電子決済に対応した国産SCはまだ発行されていないのが現状です。

 

 しかし、誰も開発していないサービスを先んじて開発することに大きな意義があります。今後、サービスをリリースした際に、「デジトラッド」を利用しているユーザー向けに通知などでアプローチすれば、ユーザーにとっては未知の貿易決済システムではなく、「デジトラッド」の新しいサービスとして認識してもらえるので、一気に導入のハードルが下がります。「デジトラッド」のユーザーすべてが新サービスをすぐに利用できる環境が整うため、現状は需要が見えづらくても、サービス開発を続けていくことが、結局のところ、遠回りのようで近道になると考えています。

eBLの発行PFと連携した新決済システムを開発中

 ――ほかに開発中のシステムや新たなサービスの構想はありますか。

 

 足立 大手商社グループの荷主企業向けに、概算見積もりなどの機能を備えたSaaSシステムの開発を進めています。概算見積もりサービスはすでに「デジトラッドフォワーディング」に実装されていますが、企業によって概算に必要な条件が異なるため、一部の企業向けには見積もりのさらなる精度向上が必要だということが見えてきました。そこでこの1年、ある大手企業と連携して、要望をヒアリングしながらシステムの開発に取り組み、細かい条件で精度の高い概算見積もりを算出できる仕様に作り変えました。現在はデモ運用を進めており、今春から実運用を開始し、他の顧客にも展開していく予定です。

 

 物流業界は現場のオペレーションが細かく、企業によって業務も異なるため、どの現場でも幅広く使ってもらえるSaaSシステムは生まれにくいと感じています。そこで一度、特定顧客向けに、その顧客の業務や要望に確実にフィットしたシステムを作り込もうと考えました。そうすれば、その顧客だけでなく、一緒に仕事をしているパートナーにとっても使いやすいシステムとなり、さらに機能を順次追加していくことで、ユーザーが拡大していくと考えています。

 

 ――最後に、貴社の目指すべき企業像として、どのようなビジョンを描いていますか。

 

 足立 通常の商社では500~1000人の人員がいないとできないオペレーションを、圧倒的なデータのアセットとそのアセットを自動で利用できるシステムを活用することで、20分の1の人数で行う――そのための貿易業務やシステムを自社で開発できるのが私たちの大きな特徴です。こうした強みを活かし、貿易業務とシステム開発が両立できる新しい商社の形を作り上げたいと考えています。

 

 通常の商社であれば、売れるとわかる商品を手がけることが効率的ですが、私たちはあえて中小企業の商品を海外に売るという、高いハードルにチャレンジしています。新しいテクノロジーを駆使して顧客に付加価値を提供することで「世界中の全ての地域を豊かにする」というミッションが達成できます。そのためには、既存のやり方ではなく革新的な事業を進めていく必要があります。

 

 日本の企業が自ら貿易を開拓していなかければならない状況の中で、中小企業が置き去りにされているのが現状ですが、私たちが作る貿易やシステムによって、貿易の効率化を後押しできる、そんな商社としてのあり方を実現していきます。

 

 

足立彰紀(あだち・あきのり)

 1984年生まれ。大分県出身。九州大学大学院修了後、2009年5月伊藤忠商事入社。医薬品の輸出入や海外での工場建設のプロジェクトマネジメントに従事。17年3月STANDAGEを設立し、代表取締役社長CEOに就任

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