カーゴニュース 2025年3月13日 第5323号
高度な専門スタッフ育成で高単価商材獲得図る
――25年度は中期経営戦略の最終年度となります。ANAHDで貨物郵便事業の収入で2550億円の目標を掲げていますが、進捗はいかがでしょうか。
脇谷 24年度の最終的な売上は2000億円以上に届くと見込んでおり、足元の需要が旺盛なこともあり、中計目標の達成に向けて順調に推移しています。
他方、23年度の国内線の売上高は224億円となり、24年度は「2024年問題」に伴う航空シフトが生じることで売上の拡大を想定していましたが、現在のところ予測した数値には届いていません。
――計画達成に向けた営業戦略として、最終年度はどのような施策を進めていきますか。
脇谷 商品単価が高い、イコール取り扱いの難しい商材の輸送需要を積極的に取り込んでいく方針です。そのためには、貨物をより安全に取り扱える人材や設備を整えることが不可欠です。当社は成田空港に、あらゆる貨物の取り扱いに長けた社員で構成された「プロフェッショナルユニット」を配置しており、必要であれば海外まで赴いて輸送をサポートするなど、高品質のサービス提供を実現しています。
しかし、どんなにオペレーションが優れていても貨物を取り込まなくては意味がありませんので、高単価商材の確保を専門とした営業スタッフの育成に取り組んでいます。たとえば医薬品については、対象となる医薬品に対する深い知識を備え、医薬品メーカーやフォワーダーと共通言語でコミュニケーションすることで、信頼を勝ち取っていく――そのような専門性の高い営業スタッフの育成に注力しています。
専門スタッフが高い信頼性をもとに獲得した貨物を、プロフェッショナルユニットがしっかりケアしていくという連携体制を構築することで、医薬品や半導体製造装置のような高単価商材の取り込みを強化していきます。このほか、当社では「PRIO LIVE ANIMALS(プリオライブアニマルズ)」という国際輸送サービスで、輸送の際に繊細なケアが必要な動物を取り扱っており、これまでに馬やパンダなどの輸送実績があります。取り扱いは年間数頭程度ですが、こちらも高単価の商材となっています。
加えて、貨物専用機を需要に応じて収益性の高い路線への運航便に配備していくなど、柔軟な輸送計画を進めていきます。
成田で上屋集約、トランジット貨物の接続効率化
――昨年10月に成田空港の北部貨物地区で、自社最大規模の貨物エリア「ANA Cargo Base+」を開設しました。新たに供用開始された「第8貨物ビル」と、隣接する「第7貨物ビル」を利用したものですが、開設に至った背景を教えてください。
脇谷 当社は成田空港での国際貨物事業に後発で参入したこともあり、1ヵ所の上屋だけで十分な面積を確保できなかったことから、施設が貨物地区内に点在していました。「第7貨物ビル」が建設されたときは輸出用に1棟借りしたので、輸出業務は効率化されましたが、輸入貨物の取り扱いや第三国貨物(トランジット貨物)の接続作業を効率化するためにも、上屋集約はかねてからの課題でした。成田国際空港会社(NAA)から「第8貨物ビル」の建設計画と入居を提案されたことで、同施設への拠点集約を決めました。
「第7貨物ビル」と隣接しているため、トランジット貨物の接続作業が効率化できることが最大の特長です。成田空港はアジアと欧米をつなぐ結節点として優れた立地にあることから、貨物事業の将来性を考えると、トランジット貨物の取り扱いで優位性を持つことは非常に重要な戦略です。今回の拠点集約により、輸出入がまとまったエリアで対応でき、接続時間を最大4割削減できるようになりました。さらに、取扱能力も2割強拡大するなど、トランジット貨物の取り扱いに優れていることが、「ANA Cargo Base+」の最大の強みとなっています。
――拠点集約にあたって乗り越えなければならない課題はあったのでしょうか。
脇谷 NAAでも施設分散に対し問題意識を持ってくださっており、その解決に向け、両社で検討を行っていたため、拠点集約においては特段大きな課題はありませんでした。しかし、上屋に向かうまでにトラックの渋滞が発生する可能性があること、さらに、新たな上屋が駅から遠くなり、従業員の通勤面に支障が出る可能性があったことについては、解決に向けてNAAとともに時間をかけて検討を行いました。
トラックの渋滞については、NAAが北部貨物地区の付近に「北部貨物ゲート」を新たに設けたことで、空港外部から「ANA Cargo Base+」がある貨物ターミナル地区へのダイレクトなアクセスが可能となり、渋滞や待機の緩和につながっています。また、通勤面では、駅から上屋までの直行バスを運行することになり、これまでは駅からの徒歩だったことを考えると、従業員の大幅な負荷軽減につながっています。
このほか、労働環境の整備では、NAAがコンビニや暑さ対策の大型のシーリングファンを設置してくださり、当社としても従業員が快適に過ごせる休憩室を設置しました。とはいえ、空調管理としてはまだ不十分であり、本格的な夏を迎える前にスポットクーラーなどの冷房設備を導入するなど、労働環境整備をさらに進めていきます。
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