カーゴニュース 2025年3月27日 第5326号
「新免」と称される全国の通運事業者で構成される全通系ネットワーク。その統括会社である全国通運は来期、過去最大規模の31ftコンテナを投入するなど、鉄道モーダルシフト需要を取り込む戦略を強化する。社長就任から5年目を迎える永田浩一氏にコンテナ増送に向けた戦略やさらなる成長に向けた経営課題について聞いた。
(インタビュアー/西村旦)
今期のコンテナ発送実績はプラスで推移
――2024年度の輸送実績はいかがでしょうか。
永田 全通系鉄道コンテナの発送実績は、2月末現在で712万7000tとなり、対前年比106%で推移しています。一見、好調な数字のようですが、今年度から再開した大規模輸送案件であるリニア新幹線工事に関わる発生土砂の輸送量を補正した輸送量は688万5000t、対前年比で102%となっており、必ずしも十分な状況とは言えません。
今年度の流れを振り返ってみますと、年度当初は「いよいよ『2024年問題』が本番を迎える。貨物鉄道に対する期待がかつてないほど高まっている中で、期待にしっかり応えていくことが我々の使命であり、もし期待に応えられずに鉄道・通運事業のビジネスを大きく伸ばすことができなければ、鉄道という輸送モードの復権はしばらくはあり得ない」――このような強い危機感と覚悟をもってスタートしました。
その結果、7月ごろまでは輸送量も前年を上回り、比較的順調な滑り出しと思われましたが、その後に発生した台風10号や大雨による羽越線の2週間にわたる寸断、山陽線、函館線、鹿児島線における度重なる脱線事故などにより、なかなか波に乗れない状態が続きました。とりわけ9月に発覚したJR貨物における輪軸組立作業の不正行為とそれに伴う輸送混乱は、自然災害とは異なる人為的な問題であり、JR貨物には猛省をしてもらわなければなりません。当社も元請け事業者の立場としてお客様から厳しいお叱りを受けるなど、貨物鉄道輸送に対する信頼が大きく揺らいだ事案でした。
しかし、以前であれば、このような事態が起きると、トラックや船舶輸送に切り替えられてしまい、しばらくの間は鉄道に荷物が戻ってこない状態が続くのが常でした。それが今回、「鉄道離れ」があまり起こらず、影響がこのレベルにとどまっているのは、荷主が他モードに切り替えても、先々の輸送力確保が困難になると考えていることが背景にあり、これも「24年問題」に対する危機感の表れだと思っています。
来期は31ftコンテナを過去最大の44基増備
――荷主企業が鉄道輸送をこれまで以上に重要視していることは間違いありません。そうした中で、25年度はどのような方針のもとで事業を進めていきますか。
永田 来年度は、混乱が続く国際情勢などリスク要因はあるものの、国内景気は実質賃金の改善による個人消費の回復など内需を中心に緩やかに回復するとの見方が一般的です。また、物流業界では「24年問題」の2年目を迎えることとなり、国土交通省も昨年11月に「新たなモーダルシフトに向けた対応方策」を取りまとめ、ドライバー不足に起因する輸送力不足の解決に向け、陸・海・空のあらゆる輸送モードを総動員するとともに、鉄道や内航海運へのモーダルシフトをさらに強化していく方針を打ち出しています。
その中で、全国通運では、24年度からスタートした中期経営計画の2年目として、計画の骨格は変わらないものの、31ftコンテナの戦略的な増備をはじめとする営業施策を着実に推進していきます。
当社は中期経営計画の中で、23年度末に72基だった31ftコンテナの保有数を3年後の26年度末に2倍となる141基、さらに10年間で5倍の350基まで増やす計画を立てていますが、国やJR貨物からの呼びかけもあり、25年度に発注を予定していた個数も前倒しし、24年度発注予定分と合わせ、過去最大規模となる44基(ウィング20基、冷凍16基、オートフロア8基)の31ftコンテナを発注しました。これら新造コンテナは25年度中に順次納入され、運用開始していきます。購入については、国の「モーダルシフト加速化緊急対策事業」と全国通運連盟の補助金を活用しました。
――中計で掲げた計画を上回るペースで増備が進んでいるということですね。
永田 その通りです。従って25年度は、10tトラックとの親和性が高い31ftコンテナという営業上の武器を最大限活用しながら、鉄道モーダルシフト需要の取り込みを強力に加速させていくことになります。
また、JR貨物もリース制度を活用しながら60基の31ftコンテナを運用開始していきます。つまり、いよいよ鉄道貨物輸送全体で31ftコンテナの大量運用段階に入ることになるわけです。このため、JR貨物はコンテナの置き場確保やトップリフターの増備、駅間ルートの拡大によるネットワークの整備など、31ftコンテナの輸送量拡大に向けた基盤整備にしっかり取り組んでいただく必要があります。
営業面では、「モーダルシフト推進協議会」活動を基軸とした営業活動にも引き続き力を入れていきます。モーダルシフト推進協議会とは、お客様である荷主企業とJR貨物、全通系事業者、そして全国通運が同じテーブルにつき、よりサステナブルで効率的な輸送体制の実現を目指す取り組みです。今年度についてもJILS(日本ロジスティクスシステム協会)や物流連(日本物流団体連合会)、グリーン物流パートナーシップ会議などで多くの賞をいただくなど、当社のビジネスモデルとしてすっかり定着してきました。来年度についても引き続きこの活動に磨きをかけていきます。
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