カーゴニュース 2025年12月2日 第5392号
中継輸送ネットワークの実現を図るため特積みトラック事業者などが参画する「物流コンソーシアムbaton(バトン)」は11月20日、東京都内で合同記者発表会を開き、国内初となる特積みトラック会社間による企業横断型中継輸送の実証運行を来年2月から開始すると発表した。実証運行はドライバー交替方式で関東~関西間で行う。また、実証を通じて中継輸送の対象路線の拡大や、企業間で効率的に中継輸送を行うためのデータベース構築、ドライバーの労働環境改善のためのシステムの構築などに取り組んでいく。
「西濃・福通」と「名鉄NX・トナミ」で実証開始
「物流コンソーシアムbaton」は、特積みトラック事業者など物流企業と東京海上グループが連携し、全国規模の中継輸送ネットワークの構築や、ドライバーの労働環境改善、オープン利用できる物流施設の整備などを図るため昨年11月に発足。発足時のメンバーは、セイノーホールディングス(本社・岐阜県大垣市、田口義隆社長)、第一貨物(本社・山形県山形市、米田総一郎社長)、トナミ運輸(本社・富山県高岡市、髙田和夫社長)、トランコム(本社・名古屋市東区、神野裕弘社長)、新潟運輸(本社・新潟市中央区、坂井操社長)、ハコベル(本社・東京都中央区、狭間健志社長CEO)、福山通運(本社・広島県福山市、熊野弘幸社長)、名鉄NX運輸(本社・名古屋市東区、吉川拓雄社長)、東京海上ホールディングス(本社・東京都千代田区、小池昌洋社長)、東京海上スマートモビリティ(本社・東京都千代田区、原田秀美社長)、東京海上日動火災保険(本社・東京都千代田区、城田宏明社長)の11社。各社はコンソーシアムの幹事会員を務めている。
来年2月から行う実証運行は、西濃運輸と福山通運が神奈川県藤沢市・厚木市~大阪府堺市の間で、名鉄NX運輸とトナミ運輸は東京都江戸川区葛西~大阪府東大阪市の間で、それぞれドライバー交替方式による中継輸送を2ヵ月間実施する。中継輸送を行うことで拘束時間などの法令を遵守するとともに、ドライバーの日帰り運行を可能とする。
実証運行の際は「baton」が策定したリスク負担のためのガイドラインとオペレーションルールに基づき、車両の合流、荷役、運行など一連のプロセスを検証することで知見を蓄積し、社会実装に向けたルール整備や体制構築につなげる。実証終了後は、中継輸送用の共通データベースの構築や、複数の運行便を組み合わせるアルゴリズムや各事業者が利用できるアプリケーションの開発にも取り組みたい考えだ。
輸送力不足の解決には企業間連携が不可欠
合同発表会では、東京海上HDの小池社長が主催者を代表して挨拶。「物流コンソーシアムbaton」の意義について「労働力不足に伴う〝物流の危機〟という社会課題の解決を図るため物流の企業間の垣根を超えた取り組みを加速していくことを目的としている。最初の取り組みとして特積みトラック会社が連携したドライバー交替方式の中継輸送の実証運行を行い、社会実装につなげる」と方向性を説明。それを受け、西濃運輸(本社・岐阜県大垣市)の髙橋智社長が「2030年度には3割の輸送力不足が生じると推計されている。解決を図るには個社の努力だけでは限界があり、企業連携が不可欠だ」と指摘。セイノーグループでは、物流拠点や運行便のプラットフォームをオープンに提供し「社会インフラとしての環境・産業・生活への貢献、効率化、質の向上につながる『オープン・パブリック・プラットフォーム』による輸送の効率化・安定化に取り組んでいる」と報告した。
「baton」の事務局を務める東京海上スマートモビリティの原田社長は「参加各社の輸送量上位20路線を中心に、約1万3000便/週のデータを提供していただいた。中継輸送の効果が大きく、マッチングが有望な14路線に絞り込み、そのうち2路線で実証運行を行うことを決めた」と説明した。
続いて開かれたトークセッションには、東京海上HDの生田目雅史専務執行役員、福山通運の熊野社長、西濃運輸の髙橋社長、トナミ運輸の髙田社長、名鉄NX運輸の吉川社長らが登壇。長距離輸送の担い手不足をはじめ、様々な物流課題の解決に向けた意気込みや各社の取り組み、今後の「baton」への期待などを語った。
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