カーゴニュース 2025年4月17日 第5332号
トラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」がスタートして1年が経過した。全日本トラック協会(坂本克己会長)の調査によると、約9割で時間外上限規制が遵守できる見通しである一方、改善基準告示については遵守できていない項目がある事業者が3割にのぼり、荷待ちや荷役時間のさらなる削減が求められている。また、約9割で運賃・料金の収受の引き上げを実現し、運賃交渉の際に「標準的運賃」を活用している割合も7割に達していた。
改善基準告示、3割で「守れていない」項目あり
全ト協が「物流の2024年問題対応状況調査結果」としてこのほど発表した。調査期間は運送事業者向けが2024年11月21日~25年1月15日で回答数は2973社だった。
時間外労働の上限規制(年960時間)の遵守の見通しでは、「全ドライバーが遵守できる見通し」(64・4%)が最も多く、「大多数のドライバーが遵守できる見通し」(25・8%)と合わせて9割超となった。
改善基準告示の遵守状況は、約7割(70・1%)が「守れている」、残りの約3割(29・9%)が「守れていない基準がある」と回答。守れていない項目(複数回答)は、「1日の拘束時間」(59・3%)が最多で、「1日の休息期間」(42・0%)、「1ヵ月の拘束時間」(38・4%)、「運転時間」(36・4%)、「連続運転時間」(29・5%)と続く。守れない理由としては、「運転時間の長い輸送を行っているから」(48・0%)が最も多く、次に「荷待ち時間が長い、荷待ち時間が生じることが多いから」(40・9%)、「荷役作業の時間が長いから」(32・2%)が挙げられていた。
6割でドライバーが不足、受注量抑制も3割
「2024年問題」について「影響がある」が69・3%、「影響はない」が30・7%。良い影響としては、「運賃・料金の引上げができた」(68・5%)、「労働時間・拘束時間を縮減できた」(45・8%)、「処遇を改善するきっかけになった」(36・4%)の順に多い。悪い影響は、「運送コストが増加した」(46・8%)が最多で、次に「ドライバーの採用が困難になった」(41・2%)、「車両の稼働が悪化した」(39・6%)が続く。
ドライバーの確保の状況を聞いたところ、「必要なドライバー数を確保できている」との回答は37・7%にとどまり、全体の6割超(62・3%)が「不足している」との回答だった。具体的な対応では、「求人情報の掲出等積極的な採用活動」が最も多く、63・8%。協力会社への委託量増加や社内でカバーしているとする回答も3割超あった。また、「受注する仕事を減らした」とする回答も3割超あった。
ドライバーの労働時間・拘束時間の変化については、1年前との比較で、「概ね短くなった」が56・8%と過半数を占めた。一方で「変化はない(横ばい)」も41・1%あった。ドライバーの賃上げ状況は「1年以内に賃上げを行った」と回答した事業者が4分の3(75・8%)を占めた。賃上げ率は「1~3%未満」が最も多く35・6%。賃上げの予定では、「時期は未定だが行う予定」が54・3%と最も多く、「今後も予定はない」も25・6%あった。
「標準的運賃」の7割以下の水準が半分以上
運賃・料金の見直しに向けた発注者(荷主等)との交渉は、「全ての発注者と交渉した」(36・3%)、「半数以上の発注者と交渉した」(36・4%)で7割以上を占めている。運賃交渉での「標準的運賃」の活用状況は、「全て」・「半数以上」・「一部」の交渉で活用した合計は72・2%に上る。一方、「活用していない」は27・8%だった。
運賃交渉の結果、「希望額どおり運賃・料金を引上げできた荷主がある」は20・2%、「希望額ではないが運賃・料金を引上げできた荷主がある」は74・1%であり、約94%が運賃・料金の引上げを実現している。引き上げできた理由では、「荷主等の発注者と良好な信頼関係が構築できているから」が圧倒的に多く81・9%。次に「原価計算データや運賃計算の方法等を分かりやすく説明したから」(33・9%)が続いた。転嫁できた費用は「燃料価格の上昇分」(65・8%)が最多で、次に「ドライバー等人件費の上昇分」(61・0%)となっている。
転嫁できない理由は、「荷主等の発注者も企業経営が大変だから」(44・9%)、「元請事業者が荷主に対して運賃・料金の引上げができていないから」(40・4%)が多い。なお、標準的運賃と比較した水準では「標準的運賃の7割程度」(21・8%)が最も多く、標準的運賃の7割以下の水準が全体の半分以上(54・8%)を占めている。発注者(荷主・元請事業者)と交渉しても収受が難しい料金について、「積込み・荷卸し料金」(47・3%)、「待機時間料金」(45・4%)の順に多かった。
契約の書面化の状況は、「全ての契約を書面化している」が33・6%、「一部の契約を書面化している」が58・7%。最終的に実運送を行う事業者の把握状況について、「全て把握している」が最も多く、61・1%。下請次数の把握の実態についても「全て把握している」が最も多く58・1%だった。
トラック・物流Gメンへの情報提供については、実際に「情報提供したことがある」は13・1%。「情報提供したことはないが、今後しようと考えている」が42・5%、「情報提供したことはなく、今後しようとも思わない」が38・5%だった。提供しない理由は「取引上特に困っていることはなく、提供するような情報がないから」が58・6%と最も多かった。
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