カーゴニュース 2025年11月4日 第5384号
国土交通省と公正取引委員会は10月28日、長時間の荷待ちや契約にない附帯業務、運賃料金の不当な据え置きなどトラック事業者の違反原因となる荷主の行為を未然に防ぐため、全国規模で合同パトロールを開始した。地方運輸局のトラック・物流Gメンと公正取引委員会地方事務所が全国規模で連携し、荷主や元請事業者の営業所や物流拠点を合同で訪問し、法令遵守の促進や、周知・啓発活動を展開する。国交省と公取委が連携し荷主規制を強化することで、違反原因行為の一掃を図りたい考えだ。
集中監視月間に国交省と公取委が連携
今年4月に改正物流効率化法の一部が施行され、来年4月から全面施行となる。また、来年1月から中小受託取引適正化法(取適法=改正下請法)が施行され、荷主などへの取り締まり体制が一層強化される。これを踏まえ、国交省は10~11月を集中監視月間と位置づけ、荷主への監視体制を強化している。一方、公取委は、取適法により新たに荷主と物流事業者の取り引きが規制対象となったことから、国交省と連携し周知・啓発を促進したい意向があった。そこで全国の地方運輸局・運輸支局のトラック・物流Gメンと公正取引委員会地方事務所の担当者がチームを組み、荷主の事業所や元請事業者、倉庫業者を訪問する「合同荷主パトロール」を実施することとなった。
全国での合同パトロールの開始にあたり、10月28日に国交省と公取委はパトロール出発式を国交省内で開催した。出発式で挨拶に立った国交省の岡野まさ子総括審議官兼物流統括調整官は「国交省と公取委が全国規模で合同パトロールを実施する。荷主などに対する周知・啓発にとどまらず、国が法令遵守を促す姿勢を明確に示すことが重要だ」と強調した。続いて公取委の向井康二官房審議官は「様々なコストや労務費が上昇するなかで、取引の適正化は最重要課題だ。取適法を活用し、中小のトラック事業者が賃上げの原資を確保できるよう全力で取り組んでいく」と語った。
荷主への「アポなし訪問」で生の声を聴取
出発式を終えた後、東京では28、29日の2日間、都内を10のエリアに分け、パトロールを実施した。公取委から3人、トラック・物流Gメンが国交省本省から3人、地方運輸局などから30人、トラック協会職員でGメンとともに情報収集を行うGメン調査員が3人、Gメンの活動を支援するGメンアシスタントが5人の総勢44人が11のチームに分かれて荷主などの本社や事業所を訪問した。
対象エリアは「日本橋・八重洲」「渋谷・恵比寿・目黒」「水道橋・お茶の水」「青海」「大崎・浜松町」「京浜」「江東」「赤坂・虎ノ門」「新宿」「港区・芝浦」で、建設・土木、鉄鋼、小売、食品・飲料、機械・化成品などの荷主、元請トラック事業者、倉庫業者などを訪問した。
各チームは主に事前のアポイントなしで6~9社を訪問。2030年度に輸送能力が約34%不足することが懸念され、トラックの待機時間と荷役作業時間の削減、適正運賃の収受推進、適切な価格転嫁の促進などを通じ、関係者が協力して持続可能な物流を構築する重要性を訴えた。また、法令に基づき荷主・元請事業者に対する是正指導が実施されることや、罰則を含めた規制措置が実施されることについて、面談やリーフレットの配布により説明した。加えて、訪問先企業がそれぞれに抱える物流課題に関する生の声を聴き取り、行政の立場から物流改善につながる助言を行った。
購読残数: / 本
恐れ入りますが、ログインをした後に再度印刷をしてください。