カーゴニュース 2025年4月22日 第5333号
帝国データバンクはこのほど、「トランプ関税が日本経済に与える影響」と題するレポートを公開した。トランプ米大統領は日本に対する相互関税として24%を課すことを発表したが、90日間はベースライン関税10%の適用に変更された。91 日後に関税率が24%に戻る場合、2025年度の日本の実質GDP成長率は従来予測より0・5pt低下すると予測。日本全体の企業の経常利益は減少に転じ、倒産件数は3・3%(約340件)増加すると見込まれる。また、関税率10%が維持される場合、実質GDP成長率は0・3pt低下、倒産件数は約250件増加する。
自動車関連の高水準な関税が輸出全体を押し下げ
90日間相互関税10%が続き、91日目からすべての対象国で当初の関税率(24%)に戻るケースでは、輸出の伸び率は、従来予測の前年度比2・7%増から1・0%増へと、1・7pt低下すると見込まれる。とくに自動車・同部分品は、24年に日本の対米輸出額21兆2948億円のうち7兆2575億円、構成比34・1%を占めていたが、4月3日から個別品目関税として 25%の追加関税がかけられている。日本の主要輸出品であり、裾野が広い自動車関連への高水準な関税は、輸出全体を押し下げる最大の要因になる見込み。
輸出の伸び率低下に伴い、企業の設備投資も下押しされる。民間企業設備投資の伸び率は、従来予測の前年度比1・8%増から1・4%増へと0・4pt低下する見通し。世界経済の先行き悪化が懸念されるうえ、米国経済における不透明感の高まりを受け、企業は設備投資判断を慎重にせざるを得ない。関税を避けるために米国内での生産拡大を進める企業も現れてくるとみられ、日本国内での設備投資を抑制する要因のひとつとなる。
輸出や設備投資に対する影響は企業の利益に直結することから、民間法人企業所得(会計上の経常利益に相当)は、従来予測の前年度比1・8%増から0・1%減へと1・9pt低下すると予測される。民間法人企業所得はコロナ禍の20年度を底に増加基調にあったが、トランプ関税の発動によって5年ぶりに減少へと転じる可能性がある。
こうした状況は、労働者の所得にとってマイナス材料であり、個人消費を下押しする要因となり、民間最終消費支出は前年度比1・0%増から0・7%増へと0・3pt低下する見込み。GDPの5割超を占める個人消費が伸び悩むことによって、力強さに欠ける日本の経済状況はさらに厳しさを増していくとみられる。
倒産件数は 24年度に1万70 件と11年ぶりに1万件超となったが、このような状況の中で25年度には1万574件(前年度比5・0%増)と従来予測より339件増加すると見込まれる。失業率は2・6%と0・1pt上昇すると予測される。
「予測できない」「不透明感」とのコメントも
なお、企業からのコメントのうち製造業からは、「米中関係の悪化や関税の問題で、自動車生産が減少する可能性が高い」(化学品製造)、「米国トランプ関税が今後のしかかってくるため、輸出などが落ち込む恐れがある」(鉄鋼・非鉄・鉱業)、「米国の第二次トランプ政権下における保護貿易主義経済が懸念される中、業界としては内需のみに頼ることは困難で、外需あっての内需と言わざるを得ない」(機械製造)、「今後、米国の現政権の自動車に対する関税政策の動向により、自動車部品の受注数に影響が予測される」(輸送用機械・器具製造)などの声が寄せられている。
「運輸・倉庫」からは、「アメリカ関税問題で輸出梱包の受注量が減少するかどうか。自動車関係の部品や工作機械の輸出にどう関係してくるか。予測できないのでどちらともいえない」、「主要取引先の中国向け輸出の低迷、加えて米政権の関税政策による先行きの不透明感がある」との声が挙がった。
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