カーゴニュース 2025年11月13日 第5387号
国内初となる「RFID全面導入スーパーマーケット」が4日に熊本県熊本市で始動した。地元スーパーのロッキー(本社・熊本県益城町、竹下慎一社長)とRFIDソリューション企業のLIFE(本社・大分県大分市、前田剛之代表取締役)の協業により実現したもので、小売業界が直面する人手不足・業務効率化・食品ロス削減の課題を同時に解決する新しい経営モデルとなる。RFID導入により店舗の省人化だけでなく、物流センターでのピッキング効率化や誤納品の防止にもつながる。
農林水産省の推計によると、日本の食品ロスは年間523万tにのぼり、その約半分が事業系由来となっている。小売現場では人手不足が深刻化しており、特に地方スーパーでは採算の維持が困難。レジ待ちによる顧客体験の低下や、棚卸・検品業務の人件費負担も大きな課題となっている。こうした構造的課題に対し、ロッキーではRFID技術を全面導入することで効率性・収益性に加え、社会性を兼ね備えた新しい店舗モデルを実現した。
RFIDレジで袋詰めと同時に、自動会計が完了し、レジ待ち時間を最大80%短縮。棚卸・検品を自動化することで30〜40%の省人化が可能になる。RFIDタグの商品追跡とリアルタイム検知が可能な防犯ゲートを構築し、万引き対策を徹底。RFIDタグで賞味・消費期限をリアルタイム管理し、自動値引きシステムと連動し、廃棄量を20〜30%削減する。なお、使用済RFIDタグは回収・再利用する。
RFIDの全面導入は、物流効率化にも寄与する。物流センターは3ヵ所、店舗は28ヵ所あり、物流センターで各商品にRFIDタグを貼付。商品をオリコンに格納し、オリコンにもタグを貼付する。オリコンをカゴ車に積み、そのカゴ車にもタグを貼付。それぞれのタグを読み取ることで、どのカゴ車にどのオリコンが、オリコンにどの商品が入っているかが一目瞭然となる。
物流センターの出荷場所にRFIDゲート(あるいはハンディリーダー)が設置され、カゴ車の通過時にどの商品が出荷したかを確認できる。従来の目視による確認作業がなくなり、紙ベースでの商品確認表が不要となり誤出荷を防止。配送されたカゴ車は店舗側のRFIDゲートを通過することにより、到着貨物を自動確認できる。トラックドライイバーは両ゲートを通過するだけで、貨物の配送が終了するため、拘束時間の短縮にもつながる。
ロッキーでは2026年に熊本県内全店舗へRFIDを順次導入し、27年に九州全域に展開。30年には全国500店舗のスマート店舗ネットワークを構築したい考え。今後は、メーカーや流通企業との協働により、製造〜販売までをつなぐ「スマート・リテール・プラットフォーム」の確立を目指す。LIFEの前田代表取締役は、「RFID全面導入は地方スーパーから始まる小売業の未来変革。このモデルは全国どこでも再現できる」とコメントしている。
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