カーゴニュース 2025年11月20日 第5389号
東京都港湾局は14日、荷主と運送会社が参画して実施中の「東京港オフピーク搬出入モデル事業」をメディアに公開した。このモデル事業は東京港のコンテナターミナル(CT)のゲート前での待機時間の短縮や輸送効率の向上などを目指し、11月4日~12月中旬の期間に都が実施するもの。昨年11月18~29日に初めて実施し、一定の効果が確認できたことから、今年度は参画企業を拡大し、実施期間を延長して行っている。実証結果をCTの混雑解消やドライバーへの負担軽減、ドレージの効率化などにつなげることで、安定的なコンテナ輸送力の確保を図る。
ゲート前混雑解消と生産性向上を実現へ
モデル事業は東京港のデポから北関東地域に設けた荷主のデポ間で夜間に輸出入コンテナを共同で輸送し、東京港デポからCTへの搬入などを比較的空いている午前中に行うスキーム。主催する都の港湾局港湾経営部港湾物流営業専門課長の傳法聡子氏は昨年度の実証結果を振り返り「午前中の搬出入を可能とすることでゲート待機時間が43分から7分へ短縮され、1日あたりの輸送本数が2本から3本へ増加した。ドライバーの運転時間は1運行3・2時間が1・5時間に短縮され、ドライバーの働き方改革に貢献できる効果を確認した」と報告。今年度のモデル事業について「実証の効果を周知し、荷主や運送会社にこのスキームを利用していただくことで、ターミナルのゲート前混雑の解消や運行効率化による生産性向上に寄与していきたい」と展望した。
今年度は、荷主からはクボタ、本田技研工業、コマツ、三桜工業、白石工業、鶴見製作所、パナソニックオペレーションセクセレンス(PEX)、サントリーロジスティクス、パラマウントベッド、キヤノンの10社が参画。運送会社は吉田運送、みなと運送、鈴与、日新、青伸産業運輸の5社が参画した。昨年と比べ荷主は4社、運送会社は1社増えた。参画企業代表は昨年と同様クボタが務めている。メディア公開時の記者会見には荷主からクボタとPEX、運送会社から吉田運送とみなと運送が出席した。
クボタ物流統括部担当部長の武山アレックス義知氏は「モデル事業の意義に賛同していただき、昨年よりも5社多い企業に参画していただいた。ドライバーに負担を掛けず、CO2排出量を削減しながら輸出入貨物を安全確実に輸送することを目的としている」と述べ、東京港CT至近に都が設置したコンテナデポである「東京港デポ」と、荷主が内陸部に設置した「荷主デポ(インランド・コンテナデポ)」を複合的に活用するスキームの概要(図)を説明。武山氏は「東京港デポを活用することでCTの搬出入を比較的空いている午前中にコンテナの搬出入を行うもので、CTゲートでの待機時間を短縮できている。また、東京港デポ~荷主デポ間では道路渋滞がほとんどない夜間にコンテナ貨物を輸送することで運転時間が短くなり、夜間はスムーズに走れるため運転時間を削減できた。また今年度はPEX様に参画していただいたことで、当社筑波工場で製造する輸出用エンジンなどと、PEX様の輸入貨物によるコンテナラウンドユースが実現し、一層の輸送効率化が実現した」とモデル事業で得られた効果を報告した。
PEX物流本部貿易ソリューション室ロジスティクスソリューション課の宮永貴浩氏は「クボタ様に声をかけていただいてモデル事業に参画した。東京港から当社の福島県いわき市の拠点向けの原材料などの輸入コンテナを、クボタ様の輸出コンテナに用いる方式でラウンドユースを実施している」と説明。同社物流本部貿易・海外物流企画部国際物流契約課の藤原清氏は「コンテナラウンドユースが可能となったことで、運送会社はこれまでより実運送距離が延び、若干ながら当社の物流コスト軽減にも反映できた」と利点を語った。
車両回転率が向上、ドライバーの負担軽減も
吉田運送代表取締役の吉田孝美氏は「東京港デポでコンテナシャーシとトラクタを切り離すことで夜間に2往復運行が可能となり、車両の回転率が向上したことで収益性が向上した」とメリットを報告。併せて、同社輸送部兼アンドコンテナ事業部部長の佐々木悠氏は「ゲート前での待機時間が短縮できることが非常にありがたい」と述べた。みなと運送つくば営業所所長の佐藤孝之氏は「従来は昼間に1回転の運行のみだったが、当社のインランド・デポと東京港デポを組み合わせ、コンテナラウンドユースを可能とするよう配車スケジュールを組み、夜間に3回転の運行を可能とした」と取り組みを説明した。
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