カーゴニュース 2025年6月24日 第5349号

鴻池運輸
新中計で海外営業利益を1・8倍に

インド、北中米で成長投資を加速

2025/06/23 17:00
全文公開記事 総合物流・3PL 経営計画・戦略

 鴻池運輸(本社・大阪市中央区、鴻池忠彦会長兼社長)は中期経営計画(2026年3月期~28年3月期)の事業戦略として「海外事業拡大」、「国内事業の成長加速」、「事業構造の改革」を推進する。海外事業ではインド、北中米を注力地域と位置づけ、最終年度の海外営業利益を25年3月期比約1・8倍の33億円に引き上げる計画。国内事業ではメディカル、空港を対象とした請負のサービス分野を強化し、同分野で売上高1・4倍を目指す。

 

カリフォルニア冷凍冷蔵倉庫を段階的に増床

 

 2025年3月期決算および新中期経営計画に関するメディア向け説明会を16日に開催し、津加宏専務執行役員コーポレート部門担当兼サステナビリティ担当、大渕和夫常務執行役員経営企画本部本部長が重点取り組みについて説明した。

 

 前中期経営計画(23年3月期~25年3月期)では、収益力の向上に向けて継続的な業務効率化、適正単価の収受を進めた結果、最終年度の25年3月期は売上高3449億円、営業利益213億円、ROE(自己資本利益率)10・0%といずれも当初計画を上回り、過去最高益を3年連続で更新した。

 

 今期からの新中期経営計画で掲げた事業戦略のうち、海外事業拡大では注力地域(インド、北中米)の成長を加速させる。25年3月期の海外売上高は517億円、海外営業利益は18億円だったが、これを28年3月期にはそれぞれ780億円、33億円に、31年3月期にはそれぞれ1000億円、60億円に拡大する目標を掲げた。

 

 インドでは、複合ソリューション事業において鉄鋼スラグ処理事業会社(FSNL社)を基盤に現地での鉄鋼関連事業を拡大する。インド政府の公開入札で民営化事業を落札し、今年1月に取得が完了したもので、今後、国営事業のみならず、民間のスラグ処理事業でも受注の取り込みを見込んでいる。

 

 物流事業では、鉄道によるコンテナ輸送事業(CTO)、自動車輸送事業(AFTO)の収益安定化を図る。CTOでは、24年11月から新たに鉄道コンテナ輸送用車両9編成を順次投入し、従前の車両4編成から全部で13編成となることで、車両数は180両(45両/編成)から585両へと約3倍に拡大している。

インドの鉄道事業の収益を安定化

 北中米では、カリフォルニアロングビーチ港で展開し、同エリアトップシェアを持つ冷凍冷蔵倉庫事業の収益力を拡大する。現地の顧客向けに食肉、果汁、乳製品、海産物などを扱っており、旺盛な需要を受け、27年3月期と28年3月期に増床を計画。キャパシティアップにより31年3月期には売上高100億円の達成を目指す。

 

 また、24年7月にカナダとメキシコに拠点を置くデザインパッケージング会社(Pine Valley Packaging Group Inc.)を連結子会社化。自動車および自動車部品メーカーへの梱包サービスとともに、メーカーの製造ラインの設計、運搬、据え付けなどエンジニアリング事業を組み合わせた複合ソリューションモデルを確立させる。

北米冷凍冷蔵倉庫を増床

国内定温物流、優位性持つ地域で機能を強化

 

 国内ではサービス分野を強化する。メディカルでは病院内外の滅菌事業、医療機器メーカー向けの洗浄・メンテナンス事業を拡大。空港関連では既存の国内7空港で取り扱い航空会社の増加やサービス領域を広げるとともに、国内主要空港への新規進出を図る。28年3月期のサービス分野の売上高は580億円(25年3月期は418億円)を目標とする。

 

 また、複合ソリューションに含む物流および国内物流を「定温物流」「一般物流」「戦略アカウント物流(特定顧客向けの物流)」に分け、経営資源の最適化と連携強化を通じ、顧客の物流課題の解決を目指す。その一環として組織再編を行い、食品本部と生活関連本部を「生活産業本部」に統合。地域連携と意思決定の迅速化を図る。

 

 このうち定温物流については、北海道から九州まで11ヵ所で冷凍冷蔵倉庫を運営し、食品の冷蔵輸送を行っている8ヵ所を加えると、グループとして計19拠点のネットワークを持つ。「ワンストップサービス」の強みを活かし、優位性を持つ地域で積極的に投資を行い、機能を強化していく方針。

 

 事業構造の改革では、特定の低収益拠点について事業継続性を評価する仕組みを導入。一定の客観基準(ROIC、EBITDAマージン、利益規模)でグループすべての約200拠点を対象として、一定の基準に達していない低収益な拠点については、3ヵ年の収益改善計画を策定、年度終了ごとに計画の達成状況を確認し、事業の継続・再建・撤退の判断を行う。

 

成長投資に480億円、M&A枠は200億円

 

 中期経営計画期間中に成長投資として480億円を計画。このうち設備投資は280億円(国内、海外の比率は5対5)で注力地域、事業への投資のほか、技術・ICT投資、人的投資にも取り組む。M&Aには200億円を充て、対象事業としては空港、メディカル、エンジニアリング、地域ではインドをターゲットに据える。

 

 28年3月期の財務目標として、売上高4100億円、営業利益260億円、営業利益率6・3%、ROE10%以上、海外営業利益33億円を目指す。また、2030年ビジョンの財務目標を見直し、31年3月期の売上高目標を4600億円(当初目標は4500億円)、営業利益目標を300億円(250億円)に引き上げた。

 

 なお、米国の関税政策の事業への影響については、香港のフォワーディング子会社の香港から米国向けの輸送で影響が見られるほか、北中米のデザインパッケージング事業でカナダとメキシコで梱包し米国に輸出する事業モデルにも一定の影響を想定。米国で自動車の生産量が減った場合、日本からの鉄鋼輸出にマイナスの影響があると見ている。

津加専務(左)と大渕常務
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