カーゴニュース 2026年2月26日 第5414号
トラック適正化二法の一部が4月から施行される。同法の5つの柱である「事業許可更新制」「適正原価」「多重下請の是正」「白トラ規制の強化」のうち、「多重構造是正」と「白トラ規制」の2つが先行してスタート。一方、荷主や物流会社が最も注視しているのが、「公布後3年内の施行」とされる「適正原価」だ。「適正原価」を下回る運賃・料金による運送取引は強制力のある法令で制限されることになるため、価格水準の大幅な上昇が予想される。国土交通省は「適正原価」の策定作業に先立ち、全国のトラック運送事業者を対象とした実態調査を実施。その結果を踏まえて策定を進めるが、原案の発表時期や策定プロセスは「未決定」として現時点で全貌が見えず、荷主からは不安の声も聞かれる。
受発注の価格決定に法的拘束力、是正指導も
2025年6月、「トラック適正化二法」が成立・公布された。この法律は、運送事業の5年ごとの許可更新制をはじめ、国が告示する適正原価、多重下請けの是正(委託制限)、白トラ規制の強化などを図ることで物流の持続可能性の実現と安全性向上を目的としたもので、このうち「多重下請の是正」と「白トラ規制の強化」は今年4月1日から施行。「5年ごとの事業許可更新制」と「適正原価」は法律の公布後3年以内(28年5月まで)に施行することが定められた。
物流コストに大きな影響を及ぼすことが予想されるのが、「適正原価」の導入だ。「適正原価」はトラック運送業の安全確保、適正な賃金、コンプライアンス遵守などに必要となる燃料費、人件費、車両などの減価償却費、公租公課、事業継続に必要なコストを国交省が積み上げて算定した運賃・料金の〝基準〟で、受注者となるトラック運送事業者、発注者となる荷主・利用運送事業者・トラック運送事業者の双方に、「この水準を下回ってはならない」ことを義務化する。これは「適正原価」を下回る運賃・料金による取引は事業継続を困難にし、輸送の安全確保に支障をもたらすとの考えがベースにある。また、20年4月に国交大臣が告示した「標準的運賃」はあくまでも〝目安〟であり、適正な事業運営のために必要なコストが十分に明確化されていないとの意見もあった。一方で「適正原価」は法的な拘束力を持ち、「適正原価」を下回る運賃・料金で取引を継続する荷主やトラック運送事業者は行政から是正指導を受けることになる。
「標準的運賃」の8~9割水準? 予想も先行
「適正原価」は法的拘束力を持つため、発注する荷主側もその中身に注目する。「標準的運賃」は「貸切トラック」が対象で、時間制・距離制を基準としていたのに対し、「適正原価」は「運送形態の対象をどこまで広げるか」、「荷種の特性(ドライ/生鮮、重量勝ち/容積勝ち、高付加価値/低付加価値など)や物量の大小を考慮して定めるか」、「燃油費など物価上昇に対して変動するのか」「『標準的運賃』と同様に地域ごとに定めるのか、地域の物流事情はどの程度まで考慮するのか」――などを物流担当者は早期に把握したいようだ。
荷主からは「継続的に適正原価を下回る取引」は行政による是正指導の対象となるが、「『適正原価』を下回る運賃の受注・発注があった場合、どの程度の期間や水準まで許容されるのか。数ヵ月に1回ならば許容されるのか。継続的に下回ることが認められないならば、断続的・インターバルを置けば認められるのか」――といった疑問が寄せられる。トラック運送業界の一部では「『標準的運賃』の8~9割相当」との予想も先行しており、荷主からは「そのレベルで設定されるのか。そうなると影響は相当大きい」という意見も聞こえてくる。
一定の周知期間が必要、原案提示は9月頃か?
国交省は、今月20日まで全国のトラック事業者を対象に実施した運送実態調査の結果を精査・分析したうえで、実勢運賃の〝相場〟も勘案しながら慎重に策定作業を進める。同省の関係者は「『適正原価』は国交省だけで決めるものではなく、トラック運送事業者や輸送に関わる関係者の意見をうかがいながら策定していくことになる」とする。ただ、具体的な策定プロセスや公布までのスケジュールは「現時点では未決定」とした。荷主やトラック運送事業者からは早期の適正原価の公表を求める声も多いが「適正原価は国が単独で決めるものではない。施行時期は(法律が公布された)25年6月から3年以内とされているが、運送取引に大きな影響が及ぼすものであり、慎重な議論と周知期間が必要だ」と話す。
一方、運送業界の一部には、国が「適正原価」の原案を作成するのは9月頃だとする見方がある。仮に年度始まりの28年4月に「適正原価」を施行する場合、1年間の周知期間を設けるならば27年4月の公布となる。公布の前段階として、公共性の高い運賃・料金を審議する運輸審議会での審議と国交大臣への諮問、政省令の策定、閣議決定などのプロセスに3ヵ月を要することも想定されるため、年内に「適正原価」案を取りまとめておく必要がある。それ以前に議論のための期間を3ヵ月とするならば、9月頃に原案が提示されることが関係者間の〝納得〟が得られやすいとの指摘もある。
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