カーゴニュース 2025年7月1日 第5351号
国土交通省は6月25日、点呼業務における不適切事案が発覚した日本郵便(本社・東京都千代田区、千田哲也社長=当時)に対し、一般貨物運送事業の許可取り消しなどの処分を行った。関東運輸局の藤田礼子局長が千田社長に対し、処分通知書を手渡した。これにより同社は、今後5年間は一般貨物運送事業の許可を再取得できなくなり、トラック、バン型車両など約2500台の貨物車による事業が行えなくなる。また、事業許可取り消しに加え、第二種貨物利用運送事業の6ヵ月間の事業停止、軽貨物事業に対する安全確保命令なども発出した。
処分通知書の手交は横浜市内にある関東運輸局で行われ、藤田局長は「多くの営業所で不適切な点呼実態が判明したことは極めて遺憾だ。全社を挙げて安全対策を進め、徹底的な再発防止に取り組んでほしい」と要請。これに対し、千田社長は「今回の行政処分を厳粛に受け止め、経営陣が先頭に立って再発防止策に取り組む。お客様に迷惑をかけることがないよう、オペレーションにはしっかりとした対策を講じる」と謝罪した。
国交省では4月23日の日本郵便からの報告を受け、一般貨物事業を行う営業所(郵便局)334ヵ所中、不適切事案があった119ヵ所を対象に特別監査を実施。その結果、関東運輸局管内の26営業所で、点呼記録簿への不実記載などが判明し、違反点数が許可取り消しの要件である81点以上を大きく上回る197点に達した。また、日本郵便が自らトラックによる集配業務を行う第二種利用運送についても、6ヵ月間の事業停止を命じた。さらに不適切点呼に関わった運行管理者211人(全国73の郵便局に所属)に対し、国家資格である運行管理者の資格を取り消し、資格者証の返納を命じた。
今回の許可取り消しを受けて、日本郵便では2500台分の輸送力を外部の運送事業者への業務委託と、自社の軽トラックで補う方針。ただ、輸送力の42%をカバーする軽トラックについては国交省による監査が継続しており、安全確保に疑いがある状態。そのため、国交省では日本郵便の軽貨物事業に対し安全確保命令を発出した。まずは7月31日までに報告を行い、以降は4半期ごとに実施状況の報告を義務付けた。さらに、日本郵便の100%子会社である日本郵便輸送に対しても、安全体制の確保を図る観点から報告を求める。
日通、福通にも新たに輸送協力を要請
日本郵便は同日にオンラインで会見し、事業許可取り消しで積載重量1t以上のトラックなど2500台分の輸送力確保について、子会社の日本郵便輸送に加え、外部の運送事業者に委託していく方針をあらためて説明した。五味儀裕執行役員は、すでに委託を表明している佐川急便や西濃運輸、トナミ運輸に加え、日本通運や福山通運にも協力を要請していると説明。このうち佐川と西濃、トナミについては委託契約を締結済みで、順次業務を委託していく予定。併せて、これまでにも宅配荷物の輸送などで協力関係にある地場の運送事業者にも広く声を掛けていると述べた。さらに、小型荷物の配達委託を巡って意見が対立し、損害賠償を求めて提訴しているヤマト運輸にも輸送協力を依頼している。
会見の中で五味氏は「自社トラックを使わないオペレーションに関しては、ほぼ移行に向けた調整を完了している」と強調。現時点では大きな混乱は起きないとの見通しを示した。
このほか、2500台の保有車両に関し、他のトラック運送事業者への譲渡などを視野に調整していることをあらためて明らかにした。
▼総務省が監督上の命令を発出
郵便事業などを管轄する総務省は6月25日、日本郵便に対し、日本郵便法第15条第2項に基づく監督上の命令を行った。
命令では、郵便のユニバーサルサービスの確実な提供を維持するとともに、郵便・物流サービスにおける利用者の利便確保のための措置を実施することを求めた。また、再発防止策を着実に実施することを要請した。7月以降の当面の間、毎月末に実施状況を報告することを求めている。
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