カーゴニュース 2025年7月17日 第5356号
流通経済研究所(加藤弘貴理事長)は10日、2025年2月に行った業界横断型の共同配送についての実証実験の結果を報告した。農産物の出荷情報と加工食品・日用雑貨の物流情報を連携させながら、フェリーを活用したモーダルシフトと戻り便を活用することで、労働負担削減や環境、災害への対応に取り組み、各実証項目で一定の成果を確認した。
日本国内の農産物・食品流通では、約98%をトラック輸送に依存しており、ドライバー不足や「2024年問題」などにより、物流の持続可能性が懸念されていた。また、片荷輸送による「戻り便」の空車や、荷主間での物流情報の共有が進んでいないことも課題となっていた。
そこで流通経済研究所は、食品の生産や流通、商品、資源循環までのデータを共有する情報連携プラットフォームの「ukabis2」(ウカビス2)に登録された農産物の出荷情報と「リテール物流・商流基盤」に登録された加工食品・日用雑貨の出荷情報を接続。業界の垣根を越えた共同物流の仕組みを構築し、その効果を検証した。
また、加工食品や日用雑貨の東京方面から九州各地への物流はほとんどが福岡県を経由しており、災害時にそのルートが遮断されると輸送が困難になるというリスクを抱えていた。これに対し、宮崎県えびの市の物流拠点を活用した代替ルートを新たに整備。その有効性についても検証した。
実証実験は2月に実施し、往路では宮崎港から神戸港を経由し、東京へ農産物を輸送。復路では東京から大阪、神戸港を経由し宮崎港からえびの市、あるいはえびの市から福岡・鹿児島へ日用雑貨を輸送した。
荷役時間やCO2排出量を大幅に削減
この実証実験では、従来宮崎までの帰り荷確保が不安定だった戻り便に対し、安定した量の日用雑貨品を往路の納品先と近い場所で積載することで、実車率と積載率が向上し、ドライバーの運行スケジュールが安定することを確認。また、宮崎港~神戸港間の往復でフェリー輸送を活用することで、総運行のCO2排出量を約31%削減し、ドライバーの拘束日数も約22%から33%の範囲で短縮できる可能性も示された。
加えて、バラ積みで輸送している青果物に対し、日用雑貨品はすべてがパレット輸送であるため、復路の荷役時間とドライバーの労働負担が大きく軽減され、往路に比べて荷役時間が93%削減されることを確認。えびの市の物流拠点を活用した代替ルートに関しては、異業種との共同輸送や災害時の対応力強化につながる可能性があるとした。
今後は、今回の実証実験で得られた成果や課題を踏まえ、共同配送の仕組みの社会実装を推進。季節や地域による荷量の流動性が高い農産物と、荷量が安定した工業加工消費財(加工食品や日用雑貨)の連携も進め、他業種・他拠点を含めた共同物流のスキームを拡大していく。また、複数の荷主企業間での物流情報の連携を一層強化することで、往復輸送や共同物流の機会を増やし、物流の最適化を進めていく方針。
さらに、平常時から九州地域における物流ネットワークの多元化と安定性向上を図ることで、災害時にも対応可能なBCP機能の強化を目指し、鉄道やフェリー等を活用したモーダルシフトの推進、CO2排出量の削減を通じた脱炭素社会の実現にも取り組んでいく。
購読残数: / 本
恐れ入りますが、ログインをした後に再度印刷をしてください。