多層構造の是正に法律のメス

カーゴニュース 2025年7月31日 第5360号

「トラック適正化二法」特集

レポート
トラック改正法、適正化法のポイントを読み解く

ダンピング禁止、下請は「2次」までに

2025/07/30 17:00
全文公開記事 行政 トラック輸送

 トラック運送業界の健全な発展の妨げとなっている「過当競争」と「多層構造」という構造課題を解決するため、法的規制措置が導入される。第一弾として、4月に改正貨物自動車運送事業法が施行され、実運送を担う元請事業者に対し、下請事業者の名称等を記載した「実運送体制管理簿」の作成を義務化。第二弾として6月に成立したトラック適正化二法では、国が定める「適正原価」を下回らない運賃を義務化し、再委託の回数を「2回以内」とする努力義務を課す。2つの法律はいずれも「実運送の担い手を守る」というコンセプトが貫かれている一方、業界の自主規制と内部改革を促すもので、法律の実効性を確保できるかどうかで業界の真価が問われてきそうだ。

 

改正トラック法

実運送に絞った規制措置、下請次数制限は努力義務

 

 改正物流法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律)のうち、4月からスタートしたのが改正貨物自動車運送事業法(改正トラック法)に基づく「トラック事業者の取引」に対する規制的措置。具体的には、①運送契約の締結にかかわる書面交付②「実運送体制管理簿」の作成③健全化措置――の3つが柱となり、これらの義務は罰則付きで、違反すると行政処分が科せられる。

 

 なかでも注目されるのが、「実運送体制管理簿」の作成。これは自社で実運送を担いつつ、同業他社に輸送を委託する「元請けトラック事業者」に義務付けられたもので、荷主から引き受けた「1・5t以上」の貨物の輸送依頼に関し、同業他社の下請けに出す場合、1案件ごとに作成しなければならない。なお、管理簿に記載する内容は、下請業者の商号または名称、輸送する貨物の内容と区間、下請次数だ。

 

 「健全化措置」については、コストに基づいた受委託契約を結ぶことや、下請けを2次までに抑えることなどが規定されているが、これらはあくまでも努力義務であり罰則規定はない。下請次数の制限についても、「2次が3次に委託しないよう」制限をかけているものの、繁忙期などで、3次以下の事業者が十分な運賃・料金を収受できていれば、3次以降への委託も許容されている。

 

 一方、実運送の担い手の中でも大手事業者が行う利用運送に対しては、「運送利用管理規定の作成」と「運送利用管理者の選任」が義務付けられ、義務違反は行政処分の対象。届け出なしや虚偽申告には100万円以下の罰金を科す。前年度に利用運送で輸送した貨物が100万t以上になる大手事業者が対象で、実運送を行っていない純粋な利用運送事業者は対象外となっている。

 

 こうしてみていくと、実運送会社のコストに基づいた適正な運賃・料金の収受、下請次数の制限は「努力義務」であるために実効性が薄まってしまう。また、実運送を行う大手トラック事業者は「元請け」と見なされ、「実運送体制管理簿」や「利用運送管理規定の策定」および「利用運送管理者の選任」が義務付けられた一方、物流子会社や純粋な利用運送事業者にはこうした義務が発生しない。

トラック適正化二法

「適正原価」の実効性を「5年ごとの事業更新制」で担保

 

 これらを補完・解決するのが、6月に成立したトラック適正化二法だ。「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」と新法である「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」の2つで構成され、併せてトラック適正化二法と呼ばれる。この法律では、実運送を担うトラック事業者に対する規制的措置が中心となるが、一部で荷主や物流子会社、利用運送事業者の義務も規定していることに注意が必要だ。

 

 トラック適正化二法は、ドライバーの適切な賃金確保、業者間のダンピング、悪質業者の排除を目的とし、①5年ごとの事業許可更新制の導入②「適正原価」の告示とそれを下回らない受託③下請次数を2次までに制限④違法な有償トラック運送を禁止⑤トラック事業の無許可営業について荷主等に是正指導を実施⑥ドライバーへの適正な賃金支払い、適切な処遇の確保――が骨子で3年以内に施行される。

 

 このうち「適正原価」については国土交通大臣が定め、原価を下回る受託を禁止する。これまで実運送事業者が健全に事業運営を行うための運賃として「標準的運賃」が告示されていたが、あくまでも「目安」とされ、強制力が弱かった。新法では「適正原価」を継続的に下回る受委託は法令違反となり、実運送事業者だけでなく、発注側の荷主にも是正指導が入るため強制力が強まる。

 

 「適正原価」とは、燃料費、人件費、車両費をはじめトラックの運行に必要なコストに、委託手数料、事業を継続して遂行するために必要不可欠な投資の原資など一定程度を上乗せしたもので、純粋な「原価」というよりもむしろ「最低運賃」の概念に近い。関係者からは、現行の「標準的運賃」の95%程度の水準を目指すとの考え方が出ている。国交省が昨年発表した調査によると、「標準的運賃」の8割以上収受できた事業者は23年度に約50%であり、「適正原価」が「標準的運賃」の95%レベルとなればさらなる引き上げが期待される。

 

 5年ごとの事業許可更新制の導入については、導入までに3年の猶予期間が設けられた。これまで一度許可を取得すれば半永久的に事業運営ができたが、許可更新により、コンプライアンスを守らない事業者や、著しく安い運賃で受注する悪質な事業者を排除する狙いがある。事業更新にあたっては、「適正原価」を下回る受注を繰り返していないかについても調べることとし、コンプライアンス違反の事業者の許可更新は認めないなどにより「適正原価」の実効性を担保する。

 

 このトラック適正化二法では多層構造の是正を図るため、下請次数の2次までの制限について実運送を行っていない物流子会社や利用運送事業者にも努力義務を課す。物流子会社や利用運送事業者を「元請け」と位置づけ、また、一定以上の規模の企業には「実運送体制管理簿」や「利用運送管理規定の策定」および「利用運送管理者の選任」が義務付けられる。

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