カーゴニュース 2025年9月4日 第5368号

佐川急便・笹森社長会見
「お客様からの『いいね』の数を増やす」

リアルコマース、越境EC、コールドチェーンに注力

2025/09/03 17:00
全文公開記事 経営計画・戦略 宅配・ラストワンマイル コールドチェーン

 今年4月に就任した佐川急便(本社・京都市南区)の笹森公彰社長(写真)は1日、東京本社内で物流関係メディアの取材に応じ、経営の重点課題などについて語った。

 

 笹森氏は冒頭、「この会社に入って43年目になるが、社会の皆様から佐川急便という会社があってよかったと思ってもらえる会社にしたいというのが変わらぬ思い。お客様のニーズに対して、我々ができることを探していくことが重要であり、消費者のためになることをしていかなければ選んでもらえない。お客様に『いいね』と言ってもらえる数をいかに増やすかだ」と抱負を表明した。

 

 また、今年度からスタートしたSGホールディングスグループの新中期経営計画において、リアルコマース、越境EC、コールドチェーンを成長のための重点領域に挙げていると強調。リアルコマースについては観光地や駅、空港などに手荷物預かりや宅配便発送などのタッチポイントを増やしていく方針を示し、「訪日外国人旅行者が便利を感じ、旅行を楽しんでくれることが大事だ」と述べた。

 

 越境ECについては「国内の人口が減少する中、お客様がどこを見ているかというと海外。販路が海外に広がっていく中で、我々もそこに目を向けてマーケットの視野を広げていかなければならない。越境ECを包括的にサポートできるシステムなど、お客様が海外に販路を広げられるお手伝いをしていきたい」との考えを示した。

 

 コールドチェーンの拡大については「冷凍と冷蔵の両方をラストワンマイルで配送できる会社は日本の中で当社を含めて2社しかない。ラストワンマイルができることで、問屋やメーカーの物流をつなげ、サプライチェーン全体をワンストップでサービス提案できる」と述べ、SGHDが昨年買収した旧C&Fロジホールディングス(ヒューテックノオリン、名糖運輸)とのシナジーによる今後の事業成長に自信を見せた。

 

競争しつつも、

協業できるパーツを増やす

 

 ここ数年、宅配便の取扱個数が伸び悩んでいることについては、「適正運賃の収受を経営課題の中心に据えており、個数が伸び悩むのはある程度、想定の範囲内だった」とした上で、宅配マーケットの動きについては「世の中で動いている宅配のサイズ感が少し変わったのではないか。フリマサイトなどが増え、小さい荷物が動くようになったことで、ポスト投函サービスを持っている事業者が数量を増やしてきた」と分析。その上で今後は、「越境ECやリアルコマースなど、成長としてアップデートできる部分については、今中計でも宅配便をしっかり成長させていきたい」と語った。

 

 また、「置き配」については「輸送効率が良くなることは歓迎だが、我々が運ぶモノの中には、世に2つとないモノやお客様の思いがこもった品もあり、なくなっていいという前提で運びたくはない。お客様にとって安心かつ安全で、よりストレスなく受け取れる方法にしていくために、『置き配』という手段を関係者全員で考えていくべき」と述べた。

 

 点呼不正問題を巡って、日本郵便が輸送業務を佐川急便などの同業に委託していることについて、「この件に限らず、運送業界は競争しながらも協業できるパーツをいかにつくっていけるかが大事であり、手を組めるところはしっかり組んでいきたい。物流のインフラが壊れることは絶対にあってはならないと思っており、日本郵便からいただいた集荷代行のオーダーに対応させていただいている」と説明。「今の物流の状況で、仮にヤマト運輸や佐川急便、日本郵便の1社でもなくなれば、荷物は必ず滞ってしまう。そういうことが起きないように、競争しつつも、協業し合いながら経済を支えていきたい」と協調の必要性に言及した。

 

 笹森公彰(ささもり・きみあき) 1983年北海道佐川急便(現・佐川急便)入社。執行役員北海道支社長、同東北支社長、同営業部長、SGムービング社長などを経て、16年佐川急便取締役、24年4月常務取締役管理担当、25年4月現職。1964年11月13日生まれ、60歳。北海道小樽市出身

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