カーゴニュース 2025年9月18日 第5372号
オンライン特別編集「10月8日」は通関業の日
米国トランプ政権の関税措置の導入により、関税が世界的にクローズアップされる中、関税や通関手続きの知識を持つ専門家として「通関士」の役割があらためて注目されている。日本通関業連合会(通関連、岡藤正策会長)は今年度から「EPA関税認定アドバイザー制度」を創設。荷主へのコンサルティング能力を備えた通関士の育成に乗り出した。今期で4期目を迎えた岡藤会長(阪急阪神エクスプレス)に、10月8日の「通関業の日」を前に、通関業・通関士の今後のあるべき姿について聞いた。
(インタビュアー/石井麻里)
デミニミス見直し、越境ECにインパクト
――トランプ関税の影響により、輸出入の流れ・物量に変化が見られます。また、米国をはじめ各国が少額輸入貨物にかかわる免税制度の見直しを進め、“関税”が国際物流の流れを変えるキーファクターになってきています。足元の荷動きについてお聞かせください。
岡藤 米国トランプ大統領は再選前から公約に掲げていた、貿易相手国に対する輸入関税率の引き上げを矢継ぎ早に実施し、2025年は先行きの見えにくいスタートとなりました。日米交渉の結果、7月23日には相互関税率、分野別の自動車・同部品への関税率を15%とすることで合意しました。想定していたよりも日本に対する関税率は低く抑えられ、揺らいでいたものが安定してきたという印象です。
荷動きについては、関税の一律引き上げの前の駆け込みで、航空、海運とも1~3月は輸出がかなり増えました。その後、関税の水準がどの程度で着地するか“様子見”となりましたが、大きな「落ち込み」ではなく、「落ち着いている」状況が続いています。
9月5日には、先の日米合意に基づき、自動車などへの25%の追加関税を従来の税率と合わせ15%に引き下げることなどを盛り込んだ大統領令にトランプ大統領が署名し、日米関税合意文書に署名がなされました。決して予断は許さないものの、今後もある程度は想定内の範囲で推移していくのではないかと見ています。
財務省の貿易統計によると、25年上半期(1~6月)の輸出は金額ベースで前年度比3・6%増、数量ベースで0・9%増となっています。このデータを見ても、懸念されていた、自動車等への25%の追加関税による影響は大きくなかったのではないかと思います。
一方、米国が8月29日から小口輸入品に対する関税免除措置「デミニミスルール」を廃止することとなり、これは越境ECに対してかなりのインパクトがあります。コロナ禍を経て越境ECが急拡大し、中国から米国向けの越境ECの航空貨物が増加したことで、一般貨物を扱うフォワーダーはスペースの確保に支障をきたし、運賃も上昇していました。今回のデミニミスルールの見直しにより、米国向けの越境EC貨物は大きく減少し、運賃も以前より落ち着きがみられます。
――関税率が15%に下がっても従来よりも高い税率では対米輸出にも影響が出そうです。
岡藤 当面、危惧していたほどの関税の引き上げは回避できたのではないかと思います。ただ、日本の輸出の柱となっているのが自動車と半導体産業であり、日本経済への影響が大きいこの分野の関税を、さらに引き下げるための交渉を日本政府にはお願いしたいと思います。
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