カーゴニュース 2025年9月25日 第5373号

国交省/経産省/農水省
通関業の振興につながる施策を要望

次期「物流大綱」第6回検討会

2025/09/19 17:00
全文公開記事 FOCUS 行政 グローバル物流

 国土交通省、経済産業省、農林水産省は19日、「2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会」(座長=根本敏則・敬愛大学特任教授)の第6回会合を開催した。今回は国内外の物流をつなぐ通関業が果たす意義や現在の課題について、日本通関業連合会(通関連)の岡藤正策会長(阪急阪神エクスプレス)が説明を行った。過去の「物流大綱」策定の議論では、通関業を取り上げることはなかったが、今回の議論では国際物流における重要性を鑑み、ようやく光が当たった格好だ。通関連からの提言の後、検討会は次期「物流大綱」の骨子案に関する議論を行った。

 

通関業務料金の価格転嫁の遅れを指摘

 

 岡藤氏は、次期「総合物流施策大綱」の策定に向けた検討にあたり、サプライチェーンの基盤強化や国際物流のシームレス化、国際物流ネットワークの構築が重要であり、その観点から、通関業の果たす役割は今後ますます重要だと明言。次期「物流大綱」が提示する物流政策のなかで、通関業の振興につながる施策が必要だと要望した。

 

 近年の通関業を取り巻く環境について、越境EC貨物の急増が顕著となっており、輸入許可件数は16年度の約3000万件から24年度は約1億9万件と6倍超にまで増大しているものの、通関業収入は横ばいで推移していると報告。「17年に通関業法の一部改正がなされ、それに併せて通関業務料金の上限額が撤廃され、自由化がなされた。一方で、通関業務収入は過去20年間ほとんど変化していない」指摘し、「近年人件費が上昇しているにもかかわらず、通関業務料金における労務費の転嫁が進んでいないことから、とくに中小の経営環境は厳しく、円滑なサプライチェーンの確保やコンプライアンスの維持が危機的状況にある」と強調した。

 

関税・消費税の立替払い問題の解消を訴え

 

 岡藤氏はこうした状況に対応し、今後の施策の方向性として「通関業の社会的重要性を考慮し、今後とも適正な業務運営を確保するためには、通関業務にかかるコストを業務料金に適切に転嫁することが不可欠であり、加えて業務に見合った料金の収受が必要」と提言した。また、料金の引き上げにとどまらず、業界の商慣習として、通関業者が輸入者に代わって関税や消費税を立替払いすることで経営を圧迫している問題を挙げ、「立替払いの解消が必要だ」と訴えた。

 

 輸入許可件数が急増する一方、通関業収入が横ばいとなっている理由について「越境EC貨物の輸入件数が急増しているものの、大多数は小口貨物であり、1件あたりの料金は低廉なため、業界全体の収入増と結びついていない」と説明。また、通関業務料金が過去20年間ほとんど変化していない理由として、「17年以降の料金自由化により値上げを行える環境になったといえるが、(顧客である)輸出入者と通関業者の位置関係(力関係)により実現できていない」と説明した。

 

認定アドバイザー制度でサービスの高度化

 

 こうした状況を踏まえ「全体の料金引き上げを図るには、通関業務に付加価値をつけることが重要だ」とし、通関連では競争力と付加価値の向上に向けた新規事業として、関税ルールの専門家である通関士を対象とした「EPA関税認定アドバイザー制度」の創設したことを報告。今年6月に財務省の後援を得て「EPA関税認定アドバイザー」の養成講座を開講し、93人の通関士を認定アドバイザーに認定し、今後は「『EPA関税認定アドバイザー』を活用した通関サービスの高度化による人材育成を通じ、我が国の輸出競争力の向上に取り組んでいく」と意欲を語った。

 

 検討会の根本座長は発表を受け「通関業者も物流において重要な役割を担う事業者だが、過去の物流大綱において、あまり注目されてこなかった。その理由として、通関業は財務省の所管事業ということがあったかもしれない。ただ、今日の物流環境を考えると当然重要なファクターだ」と発言。通関業の重要性を踏まえた議論を行っていく認識を示した。 

 

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