カーゴニュース 2025年10月30日 第5383号
物流代行事業のカネコを傘下に持つユニコーンズホールディングス(本社・東京都葛飾区、金子高一郎社長)。2025年9月1日付で旧カインズグループがホールディングス体制に移行し、新たなスタートを切った。同社で広報を担当するのが、ウクライナ出身のモルスカ・リリアさん。学生時代に学んだ流暢な日本語を駆使し、SNSを活用した広報活動を積極的に展開。まもなく創業100年を迎える老舗企業に新しい風を吹き込んでいる。
三島由紀夫や夏目漱石など日本文学に興味のあったリリアさんは、タラス・シェフチェンコ記念キーウ大学で日本語を専攻。4年生の時にウクライナとロシアの戦争が起き、家族の勧めもあって、避難民学生として武蔵野大学に留学した。日本語の知識を深め、大学院修士課程に進学し、ビジネス日本語を学んで今年9月に卒業した。
「来日した当初、戦争はすぐに終わると思っていた」ものの、長引いたことにより、日本で就職することを決めた。卒業前の8月には一時ウクライナに帰国。「懐かしかったが、街の様子が変わってしまっていた。軍隊に入った人、爆撃を逃れて街を離れた人もいる。それに人々の顔がとても疲れているように見えた」という。
一見、以前と変わらないような街でもサイレンの音が鳴り響くと、避難しなければならない。「ウクライナ人がこのような大変な状況で頑張っている姿を見て心を打たれた」。ウクライナに帰りたい気持ちもあったが、「ウクライナはまだ危険レベルが高く、困難があっても日本で挑戦した方がいい」と両親も日本での就職に背中を押してくれた。
手に取るものすべてに物流のプロセスがある
ユニコーンズHDで4月からアルバイトを始めた時、ちょうど同社がDXに舵を切り始めたタイミングだった。SNSの立ち上げなどリリアさんの活動が評価され、9月に入社。「週2回のアルバイトでは深く仕事に関わることができなかった。これからは広報として会社に貢献していきたい」と意欲を見せる。
ユニコーンズHDの前身は1927年創業の金子商店。木箱のリサイクル製造販売に端を発した物流業務を祖業とし、現在は、搬送機器事業、物流代行事業、化粧品事業、樹脂成型事業、鉄道グッズ事業、カーAV取付キット事業、ワイヤーハーネス事業、プリント基板事業といった多様な業態を持つ総合企業グループに成長を遂げた。
グループ会社で倉庫業、流通加工、EC物流を手がけるカネコは、物流適地で東京ロジスティクスセンター(埼玉県八潮市)、千葉ロジスティクスセンター(千葉県印西市)を運営。化粧品を扱うのに適した定温倉庫を有し、高度管理医療機器販売業を取得。前期からは受注代行サービスも開始し、納品書や請求書の発行も含めた一貫体制を構築している。
リリアさんは広報の仕事について、「楽しい反面、挑戦でもある」と話す。「SNSの活用やYouTubeの開設など広報としてやりたいことはたくさんある。毎日笑顔を忘れず、会社に貢献できるよう頑張りたい。ウクライナ人としては毎日平和を祈っている。世界各地で紛争が続いており、戦争・紛争が1日も早く終わることが、いちばんの夢」。
「幼少時代に第二次世界大戦を経験した祖母から『戦争は最悪』と聞いたことがあったが、自分が体験をするまでは、想像できなかった。戦争が起き、『人生は宝物』だということが100%理解できた。一時帰国したときに、頑張っているウクライナ人を見て、私は日本でもっと頑張らなくてはいけないと思った」と語る。
カネコの事業を通して物流への理解も深まりつつある。「物流は当たり前と思われがちだが、大事な仕事。私たちが手に取るすべての物に物流のプロセスが含まれている。大事な仕事であることを多くの人に感じてもらいたい。物流業界でいろいろな人と出会い、学び、発信していきたい」と話す。
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