カーゴニュース 2025年12月16日 第5396号
内航コンテナ船業界を専門とした業界団体として「日本内航コンテナ船協会」が8月1日に設立され、10月20日に第1回総会が開催された。国際コンテナ戦略港湾政策やモーダルシフトへの対応、内航船員不足など内航コンテナ船社が直面する諸課題について、会員が連携して解決を目指していく。初代会長に就任した井本隆之氏(井本商運)に協会活動への意気込みを聞いた。
(インタビュアー/石井麻里)
内航コンテナ船という輸送モードをアピール
――内航コンテナ船社が担っている「内航フィーダー輸送」の役割をご紹介いただくとともに、協会発足に至った経緯をお聞かせください。
井本 内航フィーダー輸送とは、基幹航路の外航船が寄港しない地方港とハブ港を接続するサービスです。国際コンテナ戦略港湾政策では、国際基幹航路の維持・拡大に向けた3本柱の施策のひとつとして、内航フィーダー網の拡充による「集荷」を掲げています。釜山港トランシップに流れている日本の地方港発着の貨物について、国際コンテナ戦略港湾である阪神港・京浜港への集荷を促進するというもので、内航コンテナ船各社は輸送網の拡充に取り組んできました。しかし、2005年以降、内航フィーダーの輸送量は横ばいで推移しているのに対し、釜山港フィーダーの輸送量は倍増しているのが実態です。国際コンテナ戦略港湾への集荷を強化するためには、内航コンテナ船各社が競争すべきところは競争しつつ、協業できる部分は協業し、“オールジャパン”体制で、釜山港をはじめアジア近海フィーダーに立ち向かっていく必要があると認識しています。
また、当社(井本商運)は内航コンテナ船社が抱える諸問題に関し、国土交通省に要望活動を行ってきましたが、1社単独では限界も感じていました。私は内航総連(日本内航海運組合総連合会)でコンテナフィーダーワーキングの座長を務めていますが、内航総連はあくまでも組織連合ですので、内航コンテナ船社固有の問題や要望を行政に具申するには壁がありました。
内航コンテナ船を専門とする業界団体を新たに立ち上げ、内航コンテナ船社が抱える諸課題の解決を目指したい――という思いを同業者の皆さんと共有し、「日本内航コンテナ船協会」を8月に設立しました。代表理事・会長には井本商運の社長を務める私が、理事・副会長には鈴与海運の鈴木英二郎社長、理事には丸三海運の荒川和音会長が就任しました。
現在、会員は9社(井本商運、近海郵船、山九、鈴与海運、ナラサキスタックス、マツダロジスティクス、丸三海運、ユニエツクスNCT、横浜コンテナライン)です。今後、協会を通じて内航コンテナ船社の課題を発信し、9社が一丸となって、国際コンテナ戦略港湾政策における内航フィーダー網の強化に引き続き取り組むとともに、国内のモーダルシフトの受け皿としての機能を強化してきたいと思います。
輸送網は全国66港をカバー、災害時にも活躍
――内航コンテナ船というと輸出入コンテナを運んでいるイメージが強く、免税コンテナの国内運送への使用に係る条件緩和により、国内貨物も運べるということはあまり知られていませんね。
井本 海上へのモーダルシフトの手段として、大概の方がまず思いつくのはフェリーとRORO船です。内航コンテナ船もモーダルシフトの受け皿であることを、私は機会あるごとに発信してきましたが、まだ宣伝不足だと感じています。内航コンテナ船という輸送モードについて、その位置づけや役割について、対外的にもっとアピールしていかなければなりません。とくに荷主企業に対して認知度を高めていく必要があります。
国際コンテナ戦略港湾政策における「集荷」では、外航船社と連携し、内航コンテナ船の航路拡大や船舶の大型化に取り組んできました。従来は外航船社を飛び越えて荷主に直接コンタクトする機会はあまりありませんでしたが、釜山港トランシップの混雑などを背景に、荷主が内航フィーダー機能の重要性に気付き始めました。会員9社の運航隻数は合計51隻で、全国に72港あるコンテナ港湾のうち、会員の寄港地は66港にのぼります。「2024年問題」や環境問題への対応としてモーダルシフト需要が高まっている中で、「内航フィーダー網を活用して国内貨物も運べますよ」と説明すると、荷主も非常に興味を持って聞いてくれます。
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