冷凍倉庫と放射線照射滅菌サービス施設を併設

カーゴニュース 2025年12月2日 第5392号

川西倉庫
ベトナム冷凍倉庫事業が本格始動

放射線照射滅菌サービスも提供

2025/12/01 16:00
全文公開記事 倉庫・物流施設 コールドチェーン グローバル物流

 川西倉庫(本社・神戸市兵庫区、川西二郎社長)は、中期経営計画の重点戦略のひとつとしてASEAN投資を加速させている。9月にはベトナムの冷凍倉庫会社の取得を完了。インドネシアに次ぐ、海外倉庫事業の第2弾として本格始動した。豊富な実績を持つ、果物などの輸出貨物の取り扱いに加え、輸入貨物の取り込みを図るとともに、フォワーディング機能も組み合わせながら、日系企業へのアプローチを強化していく考えだ。

 

「ASEAN投資」が重点戦略「第二の矢」に

 

 川西倉庫の海外拠点は、シンガポール、タイ、インドネシア、中国、ベトナム、フィリピン、米国の7ヵ所にあり、従来はフォワーディング業務が主体。インドネシアではフォワーディング業務に加え、倉庫業にも進出し、首都ジャカルタ近郊の西ジャワ州ブカシ県のMM2100工業団地で冷凍冷蔵倉庫を運営している。

 

 2017年にまず第1期(5600㎡)が稼働し、満床になったことから、22年には自動倉庫を取り入れた第2期(7900㎡)を増設。2棟合わせて、冷凍(マイナス20℃、マイナス25℃)、冷蔵(5℃)、定温(15℃)の3温度帯に対応し、ハラール認証のほか、医薬品を扱うためGDP(医薬品の適正流通基準)認証も取得している。

 

 今期からスタートした中期経営計画「Vision2027事業領域の拡大」(25〜27年度)は、長期ビジョン「KAWANISHI2030」のPhaseⅡにあたり、「三大重点戦略(三本の矢)」を策定。「第二の矢」に位置付けられたのが「ASEAN投資」だ。笠原謙取締役国際部門・港運部門管掌は「国内市場が縮小していく中で、海外事業を拡大していく必要がある」と話す。

輸出貨物に加え、輸入貨物の集荷にも注力

日系企業の顧客を開拓、輸入貨物の取り込みも

 

 インドネシアでは既存の冷凍冷蔵倉庫の近隣に第3期の用地を確保しているが、ASEANで倉庫業としての新たな進出先としてターゲットに据えたのがベトナムだ。同国はASEANの中でも急速な経済成長を遂げている国のひとつであり、今後も人口の増加や経済成長が中長期的に見込まれている。

 

 インドネシアでは自前で一から倉庫業を立ち上げたが、ベトナムでは現地企業のM&Aの機会に恵まれた。ベトナム南西部のタイニン省(旧ロンアン省)で冷凍倉庫を営むTOAN PHAT LOGISTICS JOINT STOCK COMPANY(TPL社)の株式51%を取得。9月に子会社化の手続きが完了した。

 

 TPL社は20年の設立。冷凍倉庫の延床面積は約5460㎡でマイナス20℃帯に対応し、急速冷凍室(マイナス35℃)も設置。隣接地には、食品を海外に輸出する際に必要な放射線照射滅菌サービスを行う施設を、TPL社の旧オーナーが別会社(Toan Phat Irradiation=TPI社)で運営している。

 

 この放射線照射滅菌サービスは輸入相手国側の審査機関から認可を受ける必要があり、ベトナム国内に認可を受けている企業はTPI社を含めて3社しかない。TPL社は参入障壁の高い放射線照射滅菌サービスと、輸出前の保管をセットで提供できる強みがあり、現在、果物や水産品などの輸出貨物の取り扱いが3割を占めている。

 

 顧客は現地企業が大半だが、川西倉庫のグループに入ったことを機に、日系企業の顧客を開拓する。ベトナムで買い付けし、現地で加工した食品を米国などに輸出している日系企業からの引き合いもあるという。また、事業環境の変化に柔軟に対応するため、今後は輸入貨物の集荷にも力を入れていく。

 

 ベトナムでの冷凍倉庫事業の展開について、スペースの増床やチルド帯への対応などを今後の検討課題として挙げるとともに、まずは現状の冷凍倉庫の安定稼働を優先する。笠原取締役は、「冷凍倉庫の運営は電気代など固定費が高く、価格競争に巻き込まれないために、付加価値の高いサービスを目指す」と話す。

 

 フォワーディング業務では、海上運賃の下落による厳しい事業環境のなか、アジア~北米間など長距離路線を強化する。また、近年、注力している日本食の輸出では、フォワーディング業務だけでなく流通加工を含めた一貫取り扱いを強化するなど差別化を図り、競争力を高めていく。                

笠原取締役
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