カーゴニュース 2025年12月4日 第5393号
財務省関税局は、保税業者に対する業務改善命令を創設する。現状、税関から保税業者に対しては「助言・指導」と「行政処分」が行われているが、その中間として「業務改善命令」を行えるようにする。また、輸入許可を受けていない貨物の搬出を防ぐため、適正な貨物管理にかかる規則を法定化し、貨物搬出時の確認義務を新設する。11月26日に開かれた関税・外国為替等審議会関税分科会で方向性が示された。
関税法上、外国貨物は原則として保税地域以外の場所に置くことができない。保税制度は、外国貨物を税関の監督下(保税地域)に置くことにより、不正薬物等の国内への流入防止することを目的としており、税関長から保税地域の許可を受けるためには、過去の法令違反がないこと等や業務遂行能力等が要件となっている。
近年、特に通販貨物を取り扱う保税業者において、「輸入許可を受けていない貨物を保税地域から搬出」「知的財産侵害疑義物品を輸入許可済貨物と誤認して搬出」「保税地域内で従業者による申告外物品の抜き取り」といった不適正な貨物管理が疑われる事案等が散見される。このため、保税業者による自主的な貨物管理を前提とした制度への信頼を揺るがす事態が起こっており、保税業者の適正な業務運営を確保するための対策を講じることが急務となっている。
現状の税関の監督では、保税業者が貨物管理について定める社内管理規定の履行状況の確認等および改善を促すための助言・指導を行い、保税業者が関税法に違反した場合等における貨物の搬入等の停止または保税地域の許可の取り消し(行政処分)が行われている。また、税関は保税業者に対して、自主的な措置として、保税地域から貨物を搬出する際に、輸入許可書等と搬出しようとする貨物を対査し、異常の有無等の確認を実施することを求めている。
しかし、保税業者が社内管理規定に従わずに業務を行う状況等が散見されている。また、現状の監督等は効果として一定の限界がある「助言・指導」と保税業者にとって過酷な「行政処分」と両極端となっている。貨物を搬出する際の確認が法令では義務付けられていないため、保税地域から貨物を搬出する際の確認を適正に行わず、輸入許可を受けていない貨物を搬出したことが疑われる事案が発生している。そこで、保税地域で適正な貨物管理を行うための体制・手順等を規定した規則を定めることを法定化し、保税業者に対する業務改善命令等および貨物搬出時の確認義務等を新設する方向性が示された。
なお、2025年10月1日時点で、指定保税地域は89ヵ所、保税蔵置場は4606ヵ所、保税工場は179ヵ所、保税展示場は11ヵ所、総合保税地域は4ヵ所ある。
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