カーゴニュース 2026年3月12日 第5418号

特別インタビュー
通関業者の適正な業務運営確保へ環境整備を
財務省関税局長 寺岡光博 氏

高騰する労務費の適正な転嫁が極めて重要

2026/03/11 17:00
全文公開記事 FOCUS 行政 インタビュー グローバル物流

 米国トランプ政権の関税政策や拡大する経済連携協定(EPA)、経済安全保障への対応など、国際物流において関税や複雑な貿易ルールに関する高度な専門知識へのニーズが高まっている。一方、近年の越境ECの急拡大は、膨大な件数のBtoC貨物の迅速な処理とコンプライアンスの両立という新たな課題をもたらし、対策が急務となっている。国際物流のソフトの中核である「通関」を取り巻く環境が「量」、「質」とも大きく変化している中、財務省の寺岡光博関税局長に関税・通関行政の重点取り組みとともに、通関業者・通関士に求められる役割や期待について聞いた。

(インタビュアー/石井麻里)

 

迅速な通関と厳格な水際管理の両立が必要 

 

 ――昨年1月のトランプ大統領の就任後、その通商政策により「関税」という言葉に注目が集まりました。「関税」と「物流」は密接にかかわり、関税のあり方がモノの流れも変えようとしています。国際貿易の変化をどのようにとらえていらっしゃいますか。 

 

 寺岡 この1年は、国際通商環境が大きく揺れ動いた年であり、「関税」という言葉が脚光を浴びました。各国の関税政策がサプライチェーンの再編や物流にも大きなインパクトを与え、今も事業者の方々にとってご苦労が多い状況にあると認識しています。 

 

 そもそも、関税の役割には国の財政収入の確保や国内産業の保護、さらには制裁機能も有しており、自由な物流とは相反する機能があります。少し歴史を振り返りますと、戦前、1930年代の各国の保護主義的な貿易政策が第二次世界大戦の一因となったという反省から、戦後は1948年に発足したGATT(関税および貿易に関する一般協定)体制のもとで、国際貿易の自由化と関税の引き下げが進められました。 

 

 90年代に入ってからは、WTO(世界貿易機関)が設立され、中国や旧ソ連構成国も自由貿易に参入し、飛躍的な貿易の拡大とともに世界経済は発展してきました。しかし、グローバル化が進み、国際競争が激しくなると、国内産業の衰退や安全保障リスクといった問題が生じるようになりました。各国の保護主義的な通商政策にはこうした背景があり、それが国際貿易の変化を引き起こしています。 

 

 日本は資源や食料の多くを輸入に頼っており、円滑な物流に支えられた自由な国際貿易体制を維持していくことは不可欠です。厳しさを増す国際秩序の中で、日本がどのような役割を果たしていくかは極めて重要なテーマだと考えています。 

 

 ――近年の日本を取り巻く貿易の変化、関税行政、通関行政が直面している課題についてご紹介いただけますか。 

 

 寺岡 インターネットの普及と物流網の発達を背景に、国境を越えて商品やサービスを販売する、いわゆる越境ECが急拡大しています。昨年の輸入許可件数は2億件を超え、課税価格の合計額が1万円以下の少額輸入貨物が9割以上を占め、これらはおもに中国や韓国の越境ECサイトを利用したBtoCの輸入貨物です。こうした輸入貨物の急増は、税関にとってはいわば脅威であり、税関が使命とする迅速な通関と、厳格な水際管理を両立させていくことがますます重要になってきていると同時に、商物流や経済・社会を大きく変える可能性もあると感じています。 

 

 財務省では昨年6月に「急増する少額輸入貨物への対応に関するワーキンググループ」を立ち上げ、民間の事業者の皆様とも議論を重ね、11月に中間とりまとめを行いました。 

 

 このワーキンググループの主要なテーマのひとつは「水際取締り上の課題」です。水際取締りの観点から、保税業者や通関業者の皆様が、コンプライアンスを守りつつ膨大な件数の輸入貨物を迅速に処理するには、適正な業務運営を行うための環境整備ときめ細かなフォローの必要性が提起されました。

少額輸入貨物の水際取締り上の課題

 もうひとつの主要テーマが「輸入貨物への課税制度上の課題」です。少額免税制度や個人が使用する貨物であることによる課税価格決定の特例等によって、国内外の事業者間で競争上の不均衡が発生している現状があります。これを是正していく必要があるとのご議論をいただき、今通常国会で所要の法改正を行いたいと考えています。 

 

 ワーキンググループではこのほか、越境ECの発展と、消費者の安全性や事業者間の公平性をどう確保すべきか、コンプライアンスを守っている事業者へのインセンティブ、関税局・税関と国内外プラットフォーム事業者とどう連携していくか――など相当幅広い観点からの議論を行いました。ただ、少額免税制度の見直しや、越境ECを利用した国際郵便に対する適正課税のあり方など残された論点もあり、これらについても今後しっかり対応していく必要があります。

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