実証輸送ルート(カーゴニュース作成)

カーゴニュース 2026年3月12日 第5418号

ズームアップ
住友倉庫
日~サウジ海陸一貫輸送ルート構築へ

オマーン経由で中東リスク回避

2026/03/11 16:00
全文公開記事 倉庫・物流施設 海運 グローバル物流

 住友倉庫(本社・大阪市北区、永田昭仁社長)は、日本発サウジアラビア向けの国際輸送で、紅海・ペルシャ湾岸を経由しない新たなルートを構築する。オマーンのサラーラ港まで海上輸送し、サウジアラビアへ陸上輸送する「オマーン・サウジアラビアランドブリッジ」が、国土交通省の令和7年度「国際物流の多元化・強靭化に係る実証輸送」に選定され、2025年12月から26年2月にかけて、商用貨物を対象に輸送の検証を行った。中東情勢の不安定さが続いている中で、BCP(事業継続計画)ルートを確保することで、荷主のグローバルサプライチェーンのレジリエンス向上に寄与したい考えだ。

 

中東向けの国際輸送で豊富な実績

 

 住友倉庫は07年にサウジアラビアに合弁会社「ラービグ・ペトロケミカル・ロジスティクス」を設立。石油化学工場の構内物流および附随する倉庫運営、フォワーディング業務などを展開。サウジアラビアに早期に進出した日系物流企業の1社として、同国をはじめとした中東向けの国際輸送で豊富な実績を持つ。

 

 中東は紛争や政治的緊張など地政学リスクがあり、国際輸送もその影響を受けやすい。サウジアラビアは紅海沿岸のジェッダ、キングアブドラ、ペルシャ湾岸のダンマームに主要コンテナ港があるが、中東情勢の緊迫化により紅海、ペルシャ湾岸の航行に制限が生じた場合、海上輸送でのアクセスが困難となることが予想される。

 

 実際に23年にイエメンのフーシ派が紅海で商船を攻撃した「紅海危機」の際には、ペルシャ湾岸のダンマームに貨物が集中し、船舶のスペースやコンテナを確保できない事態が発生。イラン情勢の緊張が高まり、ホルムズ海峡が封鎖されれば、ペルシャ湾の航行が制限され、ダンマームも含めサウジアラビア国内の3つの主要港が使えなくなる。

 

オマーン→サウジへ砂漠超え陸送

 

 そこで住友倉庫では、国交省の「国際物流の多元化・強靭化に係る実証輸送」の選定を受け、日本発サウジアラビア向けの国際輸送において紅海・ペルシャ湾岸を経由しないルートの検証に着手。具体的には、サウジアラビアの隣国の中でも相対的に政情リスクの低いオマーンを経由するルートを探った。

 

 オマーンには、サラーラ、ソハールという2つの主要港がある。ソハールはサウジアラビアのダンマームにより近いが、ホルムズ海峡の東側(オマーン湾)に位置し、イランの対岸にあるため、ホルムズ海峡が封鎖された場合、通航への影響が懸念される。このためインド洋に面したサラーラ経由を選択した。

 

 サラーラからダンマームへの陸送ルートのうち、アラブ首長国連邦(UAE)を経由するルートは道路インフラが整備されているが、2回の国境手続きが必要となる。もうひとつのルブアルハリ砂漠を通過するルートは、食料・水・燃料・保守部品等の十分な補給が必要だが、コストとリードタイムを抑えられることから、同ルートを採用した。

オマーン~サウジ間の実際の輸送ルート(カーゴニュース作成)

両国国境税関の手続きはスムーズ

 

 こうして日本~サラーラ(オマーン)~ルブアルハリ砂漠(国境)~ダンマーム(サウジアラビア)のルートを決定。ダンマーム近郊の工場に納品する水処理膜用の原料を対象に実証輸送がスタートした。昨年12月26日に住友倉庫の神戸港国際流通センターでバンニング。衝撃や温湿度の変化を計測する実証用のデータロガーも取り付けた。

神戸港国際流通センターでのバンニングの様子

 同年12月30日に神戸港を出発し、上海(中国)、タンジュンペレパス(マレーシア)を経由してサラーラに今年2月3日に到着。サラーラからソハールへコンテナを輸送したうえで、ソハールのフリーゾーン倉庫でデバンニングし、トラックに積み替え、ダンマームには同10日に到着し、納品が完了した。

サラーラからソハールのフリーゾーンへ輸送

 サラーラからダンマームまでの距離は約2000㎞。オマーン、サウジアラビア両国でライセンスを持つトラックで輸送を行った。ルブアルハリ砂漠の国境エリアでは、①サウジアラビアの輸入予備申告②オマーン側国境税関での税関検査と本申告、③サウジアラビア側国境税関での税関検査と本申告――が行われ、いずれもスムーズだったという。

ソハールフリーゾーンでトラックに積み替え

リスクに備え代替ルートの確保が重要

 

 今回の実証では、サラーラを経由し陸送でダンマームに輸送した場合と、ダンマームまで直接海上輸送した場合とでは、どちらもリードタイムは約1ヵ月と変わらなかった。ただ、「陸送が加わる分、どうしてもコストは上がってしまい、平時のルートとしては採用しにくい」と西日本グローバル・ロジスティクス営業部の柴飛志営業第二課長は話す。

 

 一方、「中東の地政学リスクが顕在化した時に、代替ルートを確保しておくことが重要。今回はスポット輸送の扱いだったが、いざという時に優先的にスペースを確保するためにも、一定のコストを前提としたルート維持について、関係者間で認識を共有しておく必要がある」とし、平時からの利用の実現を模索する。

 

 「物流を止めない」サービスの提供を重要な使命と位置づけていることから、官民コンソーシアム等を通じた研究・実証を継続し、世界各地で顕在化する地政学的リスクに対し、複線化・多元化された物流ネットワークの構築により安定した物流機能の確保を目指す。

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