カーゴニュース 2026年3月12日 第5418号
2030年度までの国の物流政策の基本方針を示す「総合物流施策大綱(2026年度~30年度)」は、①徹底的な物流効率化②商慣行の見直しや荷主・消費者の行動変容③物流人材の地位・能力の向上と労働環境改善④物流標準化と物流DX・GXの推進⑤サプライチェーンの高度化・強じん化――の5つを基本方針に据え、今後5年間の物流政策を実施し「将来にわたって物流の持続可能性を確保」するための施策を実施していく。
第8次となる新「物流大綱」はこれまでのものと比べ、国際物流関係の政策に重点を置いたと言える。その背景には、近年わが国の空港・港湾の国際的な存在感が相対的に低下し、貿易立国の危機が叫ばれていることや、コロナ禍をはじめ、ロシアのウクライナ侵略、紅海周辺での船舶攻撃、中東情勢の緊迫化に伴う国際サプライチェーン全体の脆弱性や供給リスクが顕在化したこと、米国の関税政策の影響によるサプライチェーンの見直しなど様々な不確実性が増大してきたことがある。「物流大綱」の策定を検討する会議の座長を務めた根本敏則・敬愛大学特任教授は、初会合の際に「これまでの『物流大綱』は国際物流に関する政策を重点的に提示していなかった。この点は今後の議論において若干の課題だ」という趣旨で発言し、現下の国際情勢に目配りをした議論の展開を導いた。
8ページを割いて国際物流施策を記述
2月26日に開催された第9回検討会で新「物流大綱」(第8次)で取りまとめられた提言書をみると、国際物流関連はまとめて8ページ記述されていた。それと比べ、ひとつ前の第7次大綱は国際物流政策だけをまとめた記述はなく、それぞれ別テーマに関連して国際物流関連の施策が散りばめられていた。その点から見ても新「物流大綱」は国際物流に関して〝意気込み〟が違うと言える。
施策の方向性を具体的にみると、国際競争力の強化の観点から6項目、経済安全保障とサイバーセキュリティの確保という観点からは3項目の施策が提示された〈次ページ表〉。
成田空港関連では「北東アジアのハブ空港」の地位を確立する取り組みを推進。新貨物地区の整備や自動化・機械化を推進し国際競争力の強化を図る。国際戦略コンテナ港湾政策は、従来の施策を継続した「集貨」「創貨」「競争力強化」の3本柱や貿易DXの機能強化に取り組む。海運の国際競争力強化では造船能力の向上をはじめ、海事産業全体で国際競争力強化を推進。海外市場の開拓では日系物流事業者の海外展開をサポート。とくにASEAN地域でのコールドチェーン物流の需要獲得に向け国際規格の普及を支援する。農林水産物・食品の輸出拡大に向けた取り組みは、政府の輸出拡大実行戦略に基づき、物流ネットワークの整備を促進し、産地から消費地まで一貫したサプライチェーンを構築する。越境EC関連では、貨物の急増に対応した通関業の料金適正化や人材の維持・確保や育成を支援する。
経済安全保障とサイバーセキュリティの確保に向けた施策では、サイバーセキュリティ対策の強化とともにサプライチェーンの混乱に対応できる安定的な輸送手段・ルートの確保に取り組む。国際物流ネットワークの多元化・強じん化では、国内の荷主・物流事業者と連携し、従来の輸送手段・ルートの代替や補完が行える新たな国際輸送ルートの開発に注力する。シーレーンの安全確保では、海賊発生地域でのテロや海賊への対策を継続するほか、同盟国などとの連携により航行の自由や安全確保に取り組む。
これらの一連の施策を通じ、わが国の国際物流競争力の強化を促進し、不確実性が拡がるなか、自由貿易・投資体制を維持し、国際物流の競争力強化を通じてわが国の産業発展に寄与していく方向だ。
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