全国に拠点を展開

カーゴニュース 2026年5月28日 第5438号

ズームアップ
日本オイルターミナル
「危険物の総合物流企業」目指す

潤滑油専用Sを製造拠点にも

2026/05/27 16:00
全文公開記事 貨物鉄道・通運 危険物・化学品

 貨物鉄道輸送を利用した共同油槽所の運営を目的として、1966年10月に創立された日本オイルターミナル(本社・東京都千代田区、和氣総一朗社長)は、JR貨物グループの「危険物の総合物流企業」の進化に向け着実な成長を続けている。鉄道輸送と共同保管・共同配送に強みを持ち、内陸部の中継基地を活用した物流の効率化とエネルギーの安定供給に貢献。ターミナル事業と化学品事業、潤滑油事業を3本柱に、メガソーラー発電による売電事業など多角的に事業を展開している。

 

内陸基地で石油の供給インフラを構築

 

 共同油槽所を中心としたターミナル事業では、盛岡営業所、郡山営業所、宇都宮営業所、高崎営業所、八王子営業所、松本営業所、高知営業所と計7ヵ所の拠点を運営。石油元売各社の製油所から高知営業所を除いた内陸の6営業所向けにタンク車による鉄道輸送を行い、貯蔵した石油製品は需要に応じてタンクローリーで出荷されている。

 

 とくに北関東エリアでは、宇都宮・高崎営業所からの石油供給を通じて地域の生活や経済にとって不可欠なインフラとして機能している。取締役新規開発部長の塩澤正樹氏は「時によって群馬県と栃木県の石油消費量を上回る数量を出荷することもあり、近隣県を含めたエネルギー供給を支えている」と強調する。

 

 また、97年に開設した高知営業所は、同社初の臨海共同油槽所。主に高知県内を配送圏とし、内航タンカーからの受け入れや貯蔵、タンクローリーによる出荷に加え、海上出荷も行っている。

 

 塩澤氏はターミナル事業の現況について、「直近では中東情勢リスクに伴う石油価格の高騰によって、一時的期な仮需が発生したが、現在は落ち着きを取り戻している」と説明。長期的には「脱炭素化の流れから石油消費量は漸減傾向にあるが、『2024年問題』に起因する物流効率化の機運が追い風となり、当社の内陸基地を活用してタンクローリーの輸送距離を短縮化する動きも高まっている」との見方を示す。

液体重量物の取り扱いに強み

保管と配送の一体化による共同物流事業を展開

 

 潤滑油事業は、1993年にJR貨物と共同でオー・エル・エス(OLS)を設立。業務を開始し、2018年に同社を統合。ターミナル事業で培った共同保管と危険物物流のノウハウにより、石油元売会社や潤滑油専業メーカーから出荷された潤滑油製品を対象とした3PL型共同物流を展開している。

 

 潤滑油は用途や仕様条件に応じて使用する製品が異なり、メーカー1社で1000種類を超える製品ラインアップを持つこともある。そのため、ドラム缶やペール缶、カートン品などによる少量多品種の配送が中心で、各種工場をはじめ、自動車関連事業者、農機具・重機関連事業者、小売業者、発電所など、幅広い需要家への多頻度配送も発生するため、ラストワンマイルの負荷が大きいことが課題となっている。

 

 そのため同社では、北海道苫小牧市、岩手県盛岡市、福島県郡山市、福岡県朝倉市に設置している拠点に、潤滑油製品をはじめとする危険物製品に対応した倉庫を整備。製品の共同保管と共同配送を一体的に担うことで、物流効率化に貢献している。取締役潤滑油営業部長兼情報システム部長の倉科光芳氏は「潤滑油製品は1本180㎏にもなるドラム缶をはじめとする液体重量物であり、非常に取り扱いが難しく専門性が高い」としたうえで、「現場作業員や配送乗務員への教育と潤滑油物流専用システムにより、安全で確実な保管・配送体制を構築している」と強調する。

 

 30年を超える共同物流の高い実績を評価され、今年1月には、ENEOS潤滑油の東日本における製造・出荷拠点である横浜鶴見ルブパークで、潤滑油物流専用システム「FOLS」と小口出荷・多品種管理のノウハウを組み合わせたサービスの提供を開始。同工場内に設置した鶴見事業所では、まず横浜鶴見ルブパークで生産された潤滑油製品の在庫・出庫管理と出荷トラックの積載管理を担い、今後はENEOSの他拠点から搬入される製品の管理にも段階的に対応していく。

 

 和氣社長はこの取り組みを「既存事業の延長ではなく、これまで培ってきた自社システムと業務ノウハウを活かした新たな事業展開」と位置づけ、「今後は荷主の製造・出荷拠点に事業範囲を拡大し、新たなニーズを発掘してきたい」と展望する。

メーカーの製造拠点にシステムを提供

エネルギーの多様化にも対応、新たなステージへ

 

 化学品事業は12年に化学品工場が集積する群馬県高崎市の高崎営業所で開始。従来、石油製品向けに使用していた貯蔵タンクをメタノールなどの保管に転用し、ISOタンクコンテナによる鉄道輸送を行っている。同営業所の専用ピットには、タンク車とタンクコンテナを車上で同時に荷降ろしできる設備も設置している。

 

 現在は、新たにシリコーンの製品タンクも建造し、合計3品目を取り扱っている。塩澤氏は「地政学リスクへの対応として、化学品等について調達先の変更や在庫量の増加などを検討する企業も多く、問い合わせが増えている」と同事業の現況について語る。

シリコーン製品の取り扱いを開始

 同社の26年3月期業績は売上高140億2334万円、営業利益4億2424万円、経常利益4億3601万円、当期純利益3億1842万円。賃金改定や職場環境改善により営業費用が増加したものの、物価高騰に対応するための料金改定・運賃改定を実施したことや、潤滑油事業の好調、中東情勢の緊迫化に伴う仮需などにより、増収増益を確保した。

 

 和氣社長は「今後は石油製品の安定供給を維持するため、自動化設備など省力化に向けた投資を検討していく」と述べるとともに、「多様化するエネルギーの供給体制の構築にも積極的に関与し、新エネルギーなどにも対応したマルチターミナルとして地域のライフラインを担っていく」と強調。「引き続き供給責任を果たし、JR貨物グループの危険物総合物流企業として新たなステージに挑戦していく」とビジョンを語る。

倉科氏、和氣氏、塩澤氏(左から)
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