カーゴニュース 2026年7月14日 第5451号
物流戦略のキーマン “CLOに訊く”シリーズ
花王(本社・東京都中央区、長谷部佳宏社長)は、2026年1月1日付で「ロジスティクス部門」を新設し、社内外で物流効率化提案を加速している。メーカー物流と卸の販売物流の両方をカバーし、物流に関する豊富な知見とデータを強みとし、業界の枠を超えた連携においても主導的な役割を果たしていく。森信介執行役員ロジスティクス部門統括CLO(物流統括管理者)に取り組みを聞いた。(インタビュアー/石井麻里)
ロジスティクス部門の活動は経営の数字に貢献
――物流会社での経験を経て、キャリアチェンジされたということですね。これまでのキャリアについてご紹介いただけますか。
森 1997年にヤマト運輸にセールスドライバーとして入社し、管理職になってからは主に法人営業に従事しました。2008年から18年にかけてヤマトホールディングスで、「羽田クロノゲート」をはじめ東名大の大型ターミナルの立ち上げを行いました。18年に取締役常務執行役員としてヤマトロジスティクスに出向し、21年にヤマト運輸に戻り執行役員アセットマネジメント部長として拠点の再編などを担当しました。
――拠点の構築・再編に関する実績が豊富なのですね。
森 24年10月に花王の執行役員(ロジスティクス改革担当)に着任しました。花王では、経営課題の解決に向けた構造改革を進めており、ロジスティクス領域での拠点や設備など固定資産の見直しも課題となっていました。
着任当初の組織体制では、SCM部門の傘下に「生産」と「ロジスティクス」の2つの部門が“同居”していました。この組織体制では、どうしても「ロジスティクス」が「生産」の方に寄ってしまい、「販売」からは遠くなってしまいます。「ロジスティクス」は「生産」「販売」と対等でフラットなポジションにあるべきではないか――と提言し、26年1月の組織改正で「ロジスティクス部門」が新設され、CLOに選任されました。
――物流会社とメーカーでは物流に対するとらえ方が異なると思いますが、花王に来て感じたことはありますか。
森 ヤマトグループにいた時は、物流は事業であり、稼ぐための“本業”でしたが、花王のようなメーカーにとって物流は、商品供給を支える機能としての位置づけです。グループの中での物流部門、ロジスティクス部門のプレゼンスを上げ、物流に携わるメンバーのモチベーションを高めていきたいと思いました。経営視点で見ると、物流はメーカーの単なるコストセンターではありません。ロジスティクス部門が様々な活動を行うことで、経営の数字に貢献することが可能です。そういった意味で、「物流は経営資源だ」と社内で説いているところです。
大都市圏で物流拠点を再編、自動化設備を導入
――現在、直面している物流課題についてお聞かせください。
森 花王の納品先である小売業は、ドラッグストアをはじめ再編と寡占化が進んでいます。小売業のバイイングパワーが強くなることによって、メーカーに対する物流要請は多様化してきています。具体的には、「当日受注・当日出荷」をはじめ、メーカー側の物流センターの負荷が大きくなっており、改善が必要との認識を持っています。
30~40年前と比べ、花王のアイテム数(SKU)は大きく増えています。30年、40年前に設置した物流拠点はその当時の SKUに見合った設備・規模であるため、SKUが増えることによって近隣に倉庫を借りるなどしてキャパシティーを増やしてきた歴史があり、トラックの横持ちなど非効率が発生しています。現在、国内の主要物流拠点は家庭品で24ヵ所、化粧品 7ヵ所の計31ヵ所ありますが、拠点の再編が必要です。2030年頃までに、大都市圏を対象に物流拠点を集約し、自動化設備を導入しながら新たな拠点網をつくっていきたいと考えています。
自動化設備については技術の進歩のスピードが速く、現在は“最新”でも 1、2年後にはもっと最新のものが出てきますので、慎重に考えなければなりません。ひとつの拠点で必要なくなっても他の拠点にも移せるような、ライトで汎用性の高い自動化設備をうまく活用していきたいと思います。
――豊橋工場の新倉庫では物流工程の完全自動化を実現しています。このようなモデルを水平展開していくということですか。
森 豊橋工場の新倉庫は製品の入庫から、各届け先に仕分けして出庫するまでを完全に自動化しています。完全自動化となると投資額もそれなりに大きくなります。豊橋工場と同じモデルを展開していくというよりは、人と自動化のハイブリッドな拠点のあり方を目指しています。日用品は物流の波動があり、それを吸収するには人を投入するのが最も効果的な曜日、時間帯があります。完全自動化よりも、人と自動化設備のハイブリッドの方がBCP対策としても有効であると考えます。
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