カーゴニュース 2026年5月28日 第5438号

ズームアップ
賃貸用危険物倉庫の開発が加速

ドライ倉庫との「併設型」も増加

2026/05/27 16:00
全文公開記事 倉庫・物流施設 危険物・化学品

 リチウムイオン電池や半導体関連の保管ニーズの高まりに加え、危険物該当品の保管におけるコンプライアンス遵守の要請を背景に、各デベロッパーが賃貸用危険物倉庫の開発を加速している。建築費が高騰するなかでも原則平屋建てであることから開発コストを抑制できるほか、付加価値の高さにより賃料への転嫁が容易で手堅いコスト回収を見込めることも開発を後押ししている。さらに、過剰供給から空室率が上昇しつつあるドライ倉庫との併設による「セット貸し」が期待できるメリットもあり、各地で開発計画が進捗している。

 

プロロジスは茨城・古河で全29棟を開発

 

 とくに危険物倉庫の開発が活況なのが、日本有数の工業県であり、関東~東北間における物流の要衝となる茨城県だ。代表的な例としてプロロジスは、埼玉県との県境に位置する古河市で大規模な物流施設開発計画「プロロジス古河プロジェクト」を展開。同プロジェクトでは「フェーズ1」(総敷地面積10万6000㎡)と「フェーズ2」(総敷地面積約17万7000㎡)において、「HAZMAT倉庫」と銘打った危険物倉庫を2期合計で全29棟を開発するなど、危険物倉庫が重要なポジションを占めている。

 

 「フェーズ2」として危険物倉庫1棟(約999㎡)を併設したマルチテナント型物流施設「プロロジスパーク古河4」を23年5月に竣工。続いて、危険物倉庫のみ8棟(約7800㎡)で構成された「プロロジスパーク古河6」を同年12月に竣工した。また、26年2月には危険物倉庫10棟(約1万1800㎡)の「プロロジスパーク古河7」を竣工。「プロロジスパーク古河4」の入居企業向けに危険物倉庫を提供し、普通品と危険物の管理の一体運用を支援する。危険物倉庫と普通品倉庫が隣接していることで、管理面で負担を軽減するほか、輸配送距離も短縮し、合理的で効率的な運用を実現する。

10棟構成の「プロロジスパーク古河7」(右手前)

九州地方で旺盛な半導体関連需要に照準

 

 九州地方では半導体関連の旺盛な需要を背景に、危険物倉庫の開発ニーズが高まっている。シーアールイー(CRE)は24年2月に福岡県小郡市で福岡ロジテム向けのBTS型物流施設「ロジスクエア福岡小郡」を竣工。地上4階建ての倉庫棟と平屋建ての危険物倉庫棟4棟(約726㎡)で構成し、倉庫棟を含めた合計延床面積は約2万3913㎡に及ぶ。

 

 また、同年7月には福岡地所との共同開発により同市でロジスティード九州のBTS型施設「ロジシティ小郡」を開発した。延床面積は約2万8364㎡で、普通倉庫と危険物倉庫1棟ずつで構成されている。

 

 さらに、ecoプロパティーズは熊本県大津町で、クグレブ・アドバイザーズなどと共同で、HAZMAT倉庫の開発を計画している。4棟構成で建物面積は約4000㎡となり、大手物流会社と賃貸借予約契約を事前に締結する予定。27年5月着工、28年7月竣工を予定している。

 

自動化や増設・併設など、付加価値創出の取り組み進む

 

 開発ラッシュが進むなか、他のデベロッパーとの差別化を図るため、自動化設備の導入などによりさらなる付加価値の創出に取り組む開発案件も出てきた。霞ヶ関キャピタルは神奈川県綾瀬市に同社初の危険物倉庫となる「LOGI FLAG CHEMICAL TECH 綾瀬Ⅰ」を27年8月に竣工する予定。延床面積は6811㎡で、メインの危険物立体自動倉庫2棟に加え、少量危険物倉庫2棟を併設する。

「LOGI FLAG CHEMICAL TECH 綾瀬Ⅰ」のイメージ

 同社はこれまで開発してきた冷凍・冷蔵立体自動倉庫で保管サービスを提供してきたが、今回の危険物倉庫については全棟外部賃貸を予定している。なお、賃貸型の危険物立体自動倉庫の開発は国内でも珍しい。4月には開発用地を清水総合開発に売却済みで、霞ヶ関キャピタルはプロジェクトマネジメント業務を清水総合開発から受託する形で、引き続き開発に関わる予定だ。

 

 ドライ倉庫に危険物倉庫を併設・増設することで、ドライ倉庫に付加価値をつけるトレンドは定着しつつある。首都圏の代表的な例を見ると、三菱地所は昨年夏、24年11月に神奈川県厚木市で竣工した「ロジクロス厚木Ⅲ」(約5万2900㎡)に危険物倉庫を増設。敷地内に床面積が約218㎡の危険物倉庫を4区画整備し、多様なニーズに対応する。

 

 また、東急不動産は、ラサール不動産投資顧問と特定目的会社を通じ、横浜市中区でマルチテナント型物流施設「(仮称)本牧物流センター(西)」共同開発する。28年2月の竣工を予定し、延床面積25万8518㎡の物流施設と危険物倉庫(957㎡)で構成する。

 

「セット貸し」拡大、今後は需要ブレーキの懸念も

 

 こうした「併設型」の危険物倉庫の開発が進む背景として、近年の供給過剰によりテナント確保が難しくなっているドライ倉庫を、需要が見込まれる危険物倉庫と合わせて貸し出す「セット貸し」により、ドライ倉庫のテナント誘致を優位に進めたいデベロッパーの思惑もある。また、テナント企業にとっても、一般品と危険物の保管在庫を分散させずに済むため、物流効率化や集中的な安全管理の観点でもメリットがある。一方、危険物倉庫のみを借りたい物流会社にとっては入居のハードルにつながる可能性がある。「プロロジスパーク古河7」は当初は「セット貸し」を想定していたが、竣工後、危険物倉庫のみの賃貸にも対応するよう方針転換した。

 

 ここへ来て、危険物倉庫の需給バランスには不透明感も漂い始めている。危険物倉庫の旺盛なニーズの拠り所とされたリチウムイオン電池については、保管における規制緩和が行われたことで、一定の条件を満たせば一般倉庫の一区画での保管が可能となった。現状はまだ、規制緩和の基準を満たすための設備投資負担が大きく、〝脱危険物倉庫〟の流れは起きていない。一方で、世界的なEV需要の低迷により、車載用のリチウムイオン電池に関してはニーズが鈍化傾向にあることも、今後の危険物倉庫の高需要にブレーキをかける不安材料となっている。

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