カーゴニュース 2026年7月9日 第5450号
キリングループロジスティクス(KGL、本社・東京都中野区、小林信弥社長)は2026年~35年をスパンとしたロードマップに基づき、物流DXを全社的に推進している。その一環として今年6月、全国の支店に現場DXプラットフォーム「カミナシ」を導入した。支店での安全点検業務の記録をデジタル化・見える化するとともに、現場と管理者をリアルタイムで結ぶことで、より適切な対応を可能とした。従来は支店ごとに留まる傾向もみられた安全対策だが、物流DXにより全社で安全関連情報を共有できる体制を整えたことで、今後はより一層品質の高い安全対策を推進していく。
安全点検業務のデジタル化・省力化を実現
KGLは物流の「2024年問題」を見据え、24年から物流DXの取り組みを本格化。適切なシステムの導入と活用により業務の高度化・省力化を推進してきた。24年に設立した「物流DX推進室」を25年3月に「物流DX推進部」に格上げ。全社的に物流DXを推進する体制を構築し、デジタル技術を活用した業務全般の効率化・物流品質向上・ペーパーレス化などを加速している。
安全に関するDXも重点テーマのひとつに定め、デジタルデータの蓄積・活用により事故の未然防止を行う仕組みづくりを開始した。その一環として、従来は紙ベースで行っていた日常点検業務の記録・報告を簡単にスマートフォンやタブレット用のアプリによって行うことができる現場帳票システム「カミナシ」に着目した。
物流管理部安全・品質・環境室室長の遠藤敦史氏は「当社はビール・飲料物流において『キリン品質』を掲げ、高い物流品質を強みとしている。安全についても高品質の実現に取り組むこととし、物流DX推進部と連携しながら検討を進めてきた」と経緯を説明。物流DX推進部物流DX推進担当の近藤綾美氏は「複数のソリューションを検討したが、現場での使いやすさを最も重視した。多くの機能を備えていても、現場での使い勝手が悪ければ活用されない」と述べ「操作性・簡易性の高さから『カミナシ』を選択した」と明かす。機能検証のため、25年8~11月、川崎、札幌、神戸、朝倉支店で実証試験を開始した。
作業者はスマホを携行して現場で点検業務を行うが、その際にスマホに表示されたシンプルで分かりやすい入力画面に必要項目を記入する方式。表示されるマニュアルの画像・チェック箇所の画像を参照しながら、誰もが同じ基準で点検を行えることが可能で、見つかった異常箇所をその場で撮影し、画像による報告が簡単に行える。紙の点検記録では、異常箇所を記述する手間がかかったのが簡略化できる。些細な事例であっても、写真撮影により簡単に記録できるため、事例を多く報告でき、施設・設備や車両の改修につなげやすくなった。
実証実験を経て、翌年1月より全国展開を進めており、その1支店である羽生支店で導入のリーダーを務めた東日本支社物流管理部羽生支店主任の牧八起氏は「点検業務の記録を行う際に、紙の点検表では○×の印を付けるだけで終わることがほとんどだった。『カミナシ』の場合、点検最中に異常箇所が見つかった場合、該当箇所をすぐにスマホカメラで記録して、該当部分を丸で囲んで画像のままで報告できる。点検作業中にチェックを入れていくと、それが即時にデータとして記録されるので、作業者は後から報告書にまとめる手間が省ける。スピードアップと負担軽減につながった」と利点を挙げる。
管理者は即時かつ遠隔から状況把握が可能
点検記録の管理も容易になった。現場担当者が入力した点検記録について、管理者はダッシュボード画面で一覧確認できる。異常が見受けられる項目は詳細表示を行い、現場の画像を即時確認できる(写真)。
インターネットとパソコンがある環境ならば、事故発生の現場に行く前に一定程度までは状況把握が可能となった。また、全拠点の点検状況も確認でき、全社の取り組み状況を簡単に把握できる。点検記録については、支店名・日時・異常箇所の内容・現場の画像などを一括して出力でき、時間軸や異常の詳細などで比較検証も行える。
KGLは全国展開としてキリングループの24拠点(外販除く)に「カミナシ」を導入した。他の支店でも成果が確認でき、6月末に対象拠点への導入が完了した。
標準化で属人化を解消、品質向上も
遠藤氏は導入メリットについて、点検業務の属人化解消も挙げる。「『カミナシ』はナビゲーション機能を備えており、新任の作業者でも正確な作業手順で点検業務を行える。また、アプリの画面上で点検マニュアルを参照して作業を行えるので、点検もれがなくなり、業務品質を標準化できる」ことを強調。また、点検結果がデータとして蓄積されるため「事故事例や異常箇所の記録を容易に検索できるようになり、効果的な対策を立てやすくなる」と期待を寄せる。
KGLは今年度から「カミナシ」の本格導入を開始したが、今後運用を重ね、点検結果のデータが蓄積していけば、複合的にデータを活用することが可能となることを見込む。将来的には、発生した事故や異常箇所に関する情報に加え、危険予知など安全関連の様々な情報もデジタル化することで、事故・異常の未然防止につなげることを視野に入れる。
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