カーゴニュース 2026年7月14日 第5451号
物流戦略のキーマン “CLOに訊く”シリーズ
CLOの起点は「物流現場の課題を理解すること」
――CLOの役割についてはどのようにお考えでしょうか。経営視点と物流知識と両方が求められると言いますが、企業によっては適任の人材が見つからないという悩みもあるようです。
森 CLOに選任され、物流現場と経営の“距離感”を感じておられる方もいらっしゃるのではないかと思います。花王の考え方をお話しますと、物流部長は「現場最適」、ロジスティクス部門統括は「全社最適」、さらにその上のCLOは「社会最適」を実現することが求められます。「社会最適」を実現するには、他メーカーや納品先など社外の方々との連携を主導していかなければなりません。全国でCLOの選任義務があるのは約3000社と言われていますが、3000人のCLO全員が、一足飛びに「社会最適」を目指せるかというと、それはなかなか難しいのではないかと思います。
では、CLOとして一番大切なことは何か――。私はまずは「現場を知ること」だと思います。「物流部長とCLOは違う」と言われますが、やはり現場を知り、現場の課題が分かってこそ、上位の目線で物流を考えることができます。CLOは役員レベルの方から選任されますので、経営視点はすでに持たれていますが、そのうえで物流を理解するには、とにかく現場を見ることが大事です。
――現場ではどのようなところに注目したらよいのでしょうか。何かアドバイスはありますか。
森 具体的に見るべきところは、モノの流れの結節点です。たとえば、「トラックからの荷降ろしが効率的に行われているか」「バースでの荷待ちが発生していないか」「倉庫に入庫された荷物がスムーズに格納されているか」――などで、そこでどのようなシステム、設備が導入されているかもチェックポイントです。物流はモノの流れですから、スムーズに流れていない箇所、すなわちボトルネックを解消することが重要です。
物流とはまったく異なる領域からCLOに選任された方は、まずは現場を見る視点を磨くことが大事だと思います。しかし、それだけでは物流部長と変わりません。もっと大きな役割としては、いわば“外交官”のように他のメーカーや取引先、業界の枠を超えた連携を主導していくべきです。物流を取り巻く現在の環境を見ると、個社、1業界だけでできる効率化には限界が来ています。そういった意味で、業界の外部の方を巻き込んで連携を主導していくのがCLOだと思っています。
商慣行の見直し、メーカー、小売業双方がWin-Win
――CLOとしてどのようなことにチャレンジしたいですか。
森 花王だからできることがたくさんある――とその可能性の大きさにワクワクしています。花王はメーカーと卸機能の両方を有しおり、メーカー物流と卸の販売物流の両方の領域を自社でカバーしています。このため小売業に対して、一気通貫での物流提案を行うことが可能です。販売物流の領域までカバーしていることに加え、グループには物流事業を手がける会社もあり、物流に関する知見とデータ量が豊富です。このことが、物流が競争領域から協調領域になったいま、業界内外の皆様を呼び込める源泉になっていると考えています。
――後ほど、「連携」についても詳しくお聞きしたいと思いますが、近年、商慣行の見直しにも注力してきたそうですね。
森 ドラッグストアなどの小売業のお客様からは「当日受注・当日出荷」といった厳しい要請がある中で、一部の小売業様と受注の前倒しによるリードタイムの延長に取り組んでいます。これによりリードタイムが1日(24時間)延びるため、花王の物流センターでは計画的に人員や車両を配置し、作業を平準化でき、余裕を持って配送計画を立てられます。花王の物流センターだけにメリットがあるわけではなく、小売業の物流センターでもトラックの入庫を計画的に行えるようになり、それに合わせて人員を配置できますので、お互いがWin-Winです。
改正物流効率化法では、着荷主である小売業も「特定荷主」(特定第二種荷主)と位置づけられ、中長期的な物流改善計画の策定などが義務付けられます。物流センターで荷待ちが発生していれば、当然、是正指導の対象になります。荷待ち時間や荷役時間の削減、積載率の向上といった課題に対応するためにも、リードタイムの延長はメーカー、小売りの双方にとって有効です。
このほか商慣行の見直しの一例として、納品単位をバラからケース単位に切り替えていただけるようお願いしています。これにより庫内作業の効率化が可能になります。「小売業側の在庫が増えてしまう」という懸念に対しては、AI需要予測システムを活用し、納品先のデータをいただきながら最適な単位と頻度で納品する――といった取り組みを始めているところです。
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