カーゴニュース 2026年7月14日 第5451号

物流戦略のキーマン “CLOに訊く”シリーズ

CLOに訊く vol.6
「社会最適」実現へ業界の枠を超えた連携を主導
花王
執行役員ロジスティクス部門統括
CLO(物流統括管理者)
森 信介 氏

物流は単なるコストセンターでなく「経営資源」

2026/07/13 17:00
全文公開記事 FOCUS 荷主・物流子会社 インタビュー

商慣行の見直し、メーカー、小売業双方がWin-Win

 

 ――CLOとしてどのようなことにチャレンジしたいですか。

 

  花王だからできることがたくさんある――とその可能性の大きさにワクワクしています。花王はメーカーと卸機能の両方を有しおり、メーカー物流と卸の販売物流の両方の領域を自社でカバーしています。このため小売業に対して、一気通貫での物流提案を行うことが可能です。販売物流の領域までカバーしていることに加え、グループには物流事業を手がける会社もあり、物流に関する知見とデータ量が豊富です。このことが、物流が競争領域から協調領域になったいま、業界内外の皆様を呼び込める源泉になっていると考えています。

 

 ――後ほど、「連携」についても詳しくお聞きしたいと思いますが、近年、商慣行の見直しにも注力してきたそうですね。

 

  ドラッグストアなどの小売業のお客様からは「当日受注・当日出荷」といった厳しい要請がある中で、一部の小売業様と受注の前倒しによるリードタイムの延長に取り組んでいます。これによりリードタイムが1日(24時間)延びるため、花王の物流センターでは計画的に人員や車両を配置し、作業を平準化でき、余裕を持って配送計画を立てられます。花王の物流センターだけにメリットがあるわけではなく、小売業の物流センターでもトラックの入庫を計画的に行えるようになり、それに合わせて人員を配置できますので、お互いがWin-Winです。

 

 改正物流効率化法では、着荷主である小売業も「特定荷主」(特定第二種荷主)と位置づけられ、中長期的な物流改善計画の策定などが義務付けられます。物流センターで荷待ちが発生していれば、当然、是正指導の対象になります。荷待ち時間や荷役時間の削減、積載率の向上といった課題に対応するためにも、リードタイムの延長はメーカー、小売りの双方にとって有効です。

 

 このほか商慣行の見直しの一例として、納品単位をバラからケース単位に切り替えていただけるようお願いしています。これにより庫内作業の効率化が可能になります。「小売業側の在庫が増えてしまう」という懸念に対しては、AI需要予測システムを活用し、納品先のデータをいただきながら最適な単位と頻度で納品する――といった取り組みを始めているところです。

 

「CODE」では幹事会社に(森氏は前列左から2人目)

物流の面白さは「取り組みの結果が見えること」

 

 ――物流の現場からキャリアをスタートし、荷主企業の物流のトップであるCLOに就任しました。現場、経営の2つの視点で長年物流に携わってこられた森様にとって、「物流の魅力」とは何でしょうか。

 

 森 「改善」という言葉が適切かわかりませんが、物流は自分のアイデアひとつで、見える“景色”が変わります。何か仕組みを変えることによって、会社の数字(業績)はもちろん、働いている人たちの働き方、動き方が目に見えて変わってくる――。物流はそうした領域です。自分が考えて、取り組んだことの結果がしっかり見えるところに、物流の面白さがあります。また、「生産性が改善した」「作業が楽になった」など感謝されることも多く、そうしたことにモチベーションを感じられるのではないかと思います。

 

 生活者の方々に安心・安定して製品をお届けすることが花王の使命であり、物流はサステナブルであることが求められます。そのために、行政には様々な商慣行やルールの変更、DX投資にかかわる支援を期待しています。また、花王にとって物流事業者の皆様は「パートナー」です。単なる荷主と委託先という関係性ではなく、パートナーとして花王に対して積極的に「気づき」や生産性改善のための提案をいただきたいと思います。物流事業者が対等な立場で意見を出していただけるように、双方向でのコミュニケーションの活性化を図っていきたいです。

もり・しんすけ 1988年立教大学社会学部卒。97年にヤマト運輸へSDとして入社。「羽田クロノゲート」など大規模物流拠点の構築と全国ネットワーク改革を主導。ヤマトロジスティクス取締役常務執行役員、ヤマト運輸執行役員を経て、2024年10月、花王執行役員ロジスティクス改革担当として着任。26年1月から執行役員ロジスティクス部門統括CLOに就任し現在に至る

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