カーゴニュース 2026年7月30日 第5456号
奈良を中心とした近畿圏と東海、関東へ運送事業を展開するハンナ(本社・奈良県奈良市)。3代目社長として同社を率いる下村由加里社長は、持続的な会社経営には社員の成長が不可欠という方針のもと、現場との双方向のコミュニケーションを重視した風通しの良い職場づくりや「健康経営」の推進に注力している。社員の幸福度向上を業務の安全や会社の成長、社会貢献につなげ、創業時からの理念である〝三方善し〟を実現していく。
社員の期待背負い、専業主婦から社長へ
ハンナは下村社長の父が1980年に「阪奈運輸」の社名で創業。その名の通り、創業当時は創業地である奈良と大阪を結ぶ地域密着型の運送事業を行っていた。現在は関西圏を軸に幅広いエリアへと、共同配送や定温配送などを展開。今年6月には埼玉・所沢に営業所を開設し、関東エリアに初進出した。
下村社長は83年に入社。その後、1994年に下村社長の夫が2代目社長に就き、下村社長は専業主婦として家事や3人の子どもの育児に注力した。契機となったのは2004年、2代目社長が他の上場企業から役員としてスカウトされたことから、後任に下村社長の名前が挙がった。一方で下村社長は当時の状況を「子育てとの両立が難しいということもあり、家族から反対の声があった」と振り返る。また、当時の運送業は仕事を獲得するための接待や個人主義のドライバーが多いなど、まだまだ〝男の世界〟という側面が強かったことも懸念点だった。
それでも社長の座を引き継ぐ決意をしたのは、創業時から在籍しているベテラン社員からの言葉がきっかけだった。「2代目社長は数字や効率を追求する経営方針だったため、現場主義だった初代社長の時代からいる昔からの社員から『これではこの会社にいる意味がない』と言われた。そこで、初代社長の方針に理解がある私に経営を引き継いでほしいという要望があり、私も自分がやるしかないと思った」(下村社長)という。こうした声に後押しされ、準備期間を置いて06年に3代目社長として経営を引き継いだ。
現場の意見をくみ上げる〝双方向〟の経営に注力
就任後はまず、奈良県トラック協会や日本物流団体連合会といった組織に参加し、多くの事業者と関わりを持つことで、経営者としての知見を蓄積。さらに、地元の委員活動や商工会議所への参加、社会奉仕活動といった取り組みにも積極的に乗り出すことで、多くの知識や情報を取り入れていった。下村社長は「私はそれまでトラックに乗ったこともなかったので、それならば外の世界から多くのことを学んできて、事業計画や戦略に活かすということを行動指針にした」と語る。
さらに、下村社長は「社長の立場になってわかったのは、初代社長は輸送の安全やドライバーの成長に、2代目社長は仕事の獲得に投資していたものの、『社員のために持続できる会社を作らなければならない』という点で同じ考え方を持っていたということ」と説明。「会社を存続させるうえで重要なのは社員が成長し、定着すること。社員がすぐにやめるようであれば会社を続ける意味がなく、荷主にも失礼にあたる」と強調する。
とくに重視しているのは、現場に指示するだけでなく、現場からの意見をくみ上げて反映する環境を構築すること。「仕事は基本縦割りであっても、経営と現場間だけでなく社員間も含め、フラットな状態で互いを認め合い、双方向のコミュニケーションを取り合うこと。社長になってからの20年間はその点にとくに集中してきた」(下村社長)。意見を言い合える風通しの良い環境を作ることで自分を冷静に客観視できる人材が増え、社員ひとりひとりの仕事への意識が向上し、事業計画や数値目標の達成にもつながるという。
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