「R_TIME」を利用した共同回収

カーゴニュース 2024年10月3日 第5280号

「パレットの日」特集

ガラスびん業界    
システム導入でパレット回収を高度化

遠隔地からの輸送で積載率を大幅改善

2024/10/03 07:00
全文公開記事 荷主・物流子会社 パレット

 日本ガラスびん協会(野口信吾会長)は、会員各社が生産するガラスびん製品の輸送パレットの共同回収を進めてきたが、新たに専用のパレット回収システムを活用することで、さらなる使用トラック車両の削減とCO2排出量の抑制を実現した。取り組みは「令和5年グリーン物流パートナーシップ会議」の「物流DX・標準化表彰」を受賞し、他産業界からも注目を集めている。

 

トランコムの回収システムを共同利用

 

 同協会は正会員である大手ガラスびんメーカー6社と準会員の7社、および関連産業界からの賛助会員で構成され、正会員6社によるガラスびんの市場占有率(重量ベース)は91~92%に上る。2023年のガラスびんの出荷は年間89万7000tに上るが、その約94%の製品はパレットで輸送され、年間約180万枚が使用されている。

 

 一方で、納品用のパレットは次回以降の納品時に回収することが多く、配送頻度の少ない納品先などは要請に応じて個別にトラックを仕立てて回収。納品先は全国で3000ヵ所以上に上り、低積載率で長距離の納品先から回収するケースもあることから、環境負荷や今後の車両確保、さらにはパレット滞留期間の長期化が紛失につながるなどの課題とリスクを抱えていた。

 

 こうした状況を受け、協会の物流委員会では11年ごろより、パレット回収時に他会員社のパレットも併せて回収する「共同回収」に着手。パレットは回収したメーカーの工場などの拠点で一時保管し、一定量たまった段階で、各メーカーの納品輸送の帰り便などの手配車両で引き取る。当初は各メーカーのパレット回収担当者同士が直接声かけや調整を行っていたが、メーリングサービスを導入したことでメンバー全員が情報を共有しやすくなったという。

 

 さらに、22年からは回収パレットの輸送が長距離になる遠隔地での対応として、トランコムのパレット回収サービス「R_TIME」の利用を開始。一部の会員会社が使用していたシステムを水平展開したもので、現在は東北エリアで複数の会員会社が共同でトランコムに回収を依頼し、同社の輸送ネットワークと集積拠点を活用した回収を行う。これにより、回収依頼から車両手配に至る進捗管理や回収実績などの情報をWeb上でリアルタイムに把握できるようになった。

 

 東北エリアのほか、中国エリアでも一部会員が使用しており、四国や北関東などでも各社が利用を検討中にある。こうした情報を協会の物流委員会で共有し、他の会員会社が参加を希望した場合には東北エリアのように共同化することで、さらに効率化効果を高める方針。「『2024年問題』などを背景に、今後はパレット回収といった静脈物流への運賃コストの影響が大きくなることが想定され、これまで以上にパレット回収の効率化が求められる」と大西豊・物流委員長(石塚硝子ガラスカンパニー業務部長)は話す。

 

トラック積載率とCO2が大幅改善

 

 一連の施策の結果、パレットの共同回収率は19年に1・5%だったものが、現在は1・8%まで上昇。開始当初は競合相手のパレットを回収することに戸惑いもあったが、現在は納品先にも運送会社にも取り組みが浸透しているという。共同回収の仕組みにより、一部のエリアはパレット回収時のトラック積載率は43%から82%へ向上し、CO2排出量も6・5tから3・2tへ約50%の削減を達成。さらに、「R_TIME」の導入ではCO2排出量を15tから7・5tへ50%削減、トラック積載率を19%から73%へ大幅に向上できたという。

 

 コスト面でも大きく貢献し、とくにトランコムのパレット回収サービスと同社の回収依頼システム「R_TIME」を活用する東北エリアでは、「これまでは数枚のパレットを運ぶためにトラックを手配していたが、納品先から回収し、東北エリアの数ヵ所に設置された集積所に一定量たまったところで一括して各メーカーの工場へ移送するスキームとなるため、集積所での保管費用が上乗せされても、トータルコストは4割ほど削減できた」と大西氏は説明する。

 

 ガラスびん協会ではパレットの紛失・滞留抑止にも取り組み、個社で協力を要請しにくい納品先への依頼も、協会としてリーフレットの作成・配布を継続することで浸透を図ってきた。その結果、パレットの回収率も取り組みを開始した11年(同10月~翌9月)時点で94%だったものが、19年(同)に98・6%、22年(同)には98・8%となり、目標回収率の98・5%を達成。遺失数も、取り組み前は年間3~4万枚あったものが直近では半数程度にまで削減し、「10年以上にわたる取り組みが定着した成果」(同氏)という。

 

 今回、グリーン物流パートナーシップ会議で表彰されたことにより「ガラスびんはそもそも環境配慮型の容器。『2024年問題』や環境負荷低減に対応する業界のサステナブルな取り組みが、ガラスびんのさらなるイメージアップにつながれば」と大西氏は話す。山田重紀専務理事も「ガラスびんの出荷量は年々減少傾向にあるが、その良さは天然素材で環境優位性を持ち、3Rが成り立つ“唯一の”容器であること。業界全体の共通認識として物流委員会で連携して進めてきた施策が評価され、非常にありがたい」と話す。

 

物流適正化へ自主行動計画を策定

 

 同協会では昨年12月に「物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画」を策定。政府の「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」に則って策定し、各項目について具体的な取り組み事項と今後のスケジュールを経済産業省へ提出した。とくに荷待ち時間の削減に向けては、ガラスびん業界として、納品先での自主荷役廃止と荷役作業の有料化を明示するとともに、到着時間指定の緩和も進めることを表明した。

 

 大西氏は「ガラスびん業界は素材メーカーゆえに集車競争力に乏しく、車を安定的に集めるには運送会社に選んでもらえる荷主になることが必要と判断した。自主行動計画は強制ではないが、今後も物流委員会で各社の取り組みを積極的に共有し、対策を講じていく」と話す。

山田氏(左)と大西氏
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