カーゴニュース 2024年10月17日 第5284号
「営業倉庫」の意義に注目! オペレーションに宿る“魂”
倉庫会社が営む「営業倉庫」と、不動産デベロッパーが運営する「物流不動産」との業態の垣根が低くなっている。物流不動産デベロッパーは従来、スペースを提供する「賃貸業」であり、荷物を預かる「倉庫業」とは異なる業態というスタンスだったが、施設内に設置する自動倉庫を使い“保管サービス”を手掛ける新たなビジネスモデルが台頭し始めている。
自動倉庫を活用、任意の期間パレット単位で
霞ヶ関キャピタルはこのほど、JA三井リース建物と共同開発した冷凍自動倉庫「LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰ」を竣工。同時に霞ヶ関キャピタルとSREホールディングスが合弁で設立したX NETWORKが提供する冷凍保管サービス「COLD X NETWORK」を同施設に導入し、10月以降、順次サービスを展開していく。
同サービスでは、季節要因等による荷主の需要変動に応じて短期間から長期間まで、柔軟にパレット単位で冷凍荷物を保管。冷凍自動倉庫等における保管スペースの確認・予約や入出庫・在庫管理の効率化を実現する。同所では冷凍自動倉庫内の容量の約半分に相当する2000パレット分の荷物を5年間SBSゼンツウから“寄託”を受ける予定。
同サービスは、冷凍貨物の季節性による小口かつ短期の倉庫利用ニーズに着目したもの。倉庫1棟を借りる際にかかる敷金・仲介手数料等のコストをかけずに、繫忙期の既存倉庫に収まりきらない冷凍荷物の保管や倉庫移転の間の一時的な保管場所としてパレット単位で利用できる保管スペースのオンデマンドプラットフォームの提供を目指している。
野村不動産とIHIが共同開発を進めている大規模物流施設「Landport横浜杉田」では、立体自動倉庫「シェアリングサービス」を導入する。荷量に応じて任意の期間でパレット単位の予約ができ、柔軟な入出庫・保管が可能。各テナントが共通のシステム上で、空き情報の確認や事前予約、実績の照会などが可能な仕組みとなる。
「シェアリングサービス」を利用することで、自動化設備導入の初期費用や固定費がかからず、新たな投資財源の確保が可能。「従量課金制」のため、使いたいときに必要な分だけを利用できる。季節波動により発生する荷量の変動部分についてシェアリングを活用することで、固定賃借面積の削減につながる。
物流不動産も従量課金制で「変動費」化
2000年代以降、物流不動産デベロッパーは「賃貸業」であると自らを位置づけ、営業倉庫とも正面から“競合”することを避け、倉庫会社が物流不動産を活用して拠点を拡大する“協業”も進んだ。ここへ来て、荷主サイドから見た時に、営業倉庫と物流不動産との業際があいまいになってきている。
倉庫の契約形態のうち、営業倉庫と結ぶ「寄託契約」は荷物の量によって料金が変動し、一方、物流不動産の「賃貸借契約」はスペースを借りるため固定費が発生する。「営業倉庫を使うことで費用を変動費化できるメリットを荷主に提案してきたが、物流不動産でも従量課金制のサービスが始まると、営業倉庫の存在意義が問われかねない」とある倉庫会社は指摘する。
一方、別の倉庫会社は、「一般的に自動倉庫による保管サービスは、型通りに入出庫できる荷物がターゲットとなる。倉庫内で流通加工を行っている当社のサービスとは競合しない」と話す。また、営業倉庫が繁忙期にオーバーフローした場合、「日頃からお付き合いのある同業者に再寄託することが第一の選択肢として考えられる」とみる。
倉庫を巡っては、倉庫シェアリングサービスを展開する企業が、「自家倉庫シェアリングスキーム」として、自家倉庫のスペースを賃貸借し、入出庫などの庫内作業についても業務委託契約を結んで自家倉庫が請け負う――という「不動産賃貸」と「業務委託」を組み合わせた新たなスキームも登場。営業倉庫の間で業際が問題視され、懸念が広がる事態もあった。
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