カーゴニュース 2025年3月11日 第5322号
信号システムトップメーカーの京三製作所(本社・横浜市鶴見区、國澤良治社長)は、環境負荷軽減の取り組みの一環として鉄道貨物輸送へのモーダルシフトを推進している。「2024年問題」でトラックドライバー不足が社会課題としてクローズアップされる中、昨年4月からはオリジナルデザインのラッピングコンテナ2基を導入。企業活動を通じた環境負荷低減の取り組みについて対外的な発信にも力を入れている。
名古屋、長野向けの中距離帯でも鉄道を利用
同社は1917年の創業で、今日では基軸の「鉄道信号システム」「交通管理システム」「電力交換システム」に加え、ホーム安全設備・旅客案内システムなどの「旅客サービスシステム」などの分野にも事業領域を拡大。JR各社や私鉄・地下鉄などの顧客に高品質な製品を提供している。
本社・工場(横浜市鶴見区)では鉄道信号システムの中でも受注生産品や大型装置を生産し、座間工場(神奈川県座間市)では踏切しゃ断機、転てつ機など形状が決まった製品が多い。工場から出荷された製品は顧客の保守区、機器室に直接納品するほか、資材センターを経由した納品形態もある。
同社の製品は納品時にユニック車での荷役を要するものも多く、従来はトラック輸送が主体だった。環境負荷の低い輸送モードを志向する中で、2009年頃から座間工場で鉄道貨物輸送の取り組みを本格化。同工場で扱う製品は定型物が多いため、鉄道コンテナにマッチしやすく、座間工場を主体に鉄道貨物輸送を積極的に推進している。
12年には一部の踏切しゃ断機に対し「エコレールマーク」の商品認定を受け、22年にはエコレールマーク協賛企業に認定された。サステナビリティの観点から、コストも勘案しながら輸送距離が500㎞未満でも、可能な限り鉄道貨物輸送を採用することとし、名古屋、長野向けの中距離帯でも利用している。
私有コンテナ往復運用へ 共同利用の可能性探る
同社ではマテリアリティ(経営重要課題)のひとつとして「脱炭素社会貢献」を掲げ、2030年にCO2排出量を13年度比で46%以上削減、50年度にはCO2排出量実質ゼロを目標に掲げている。24年3月期は省エネ目標である「モーダルシフトおよび効率輸送の推進」についてCO2排出量を前期比115t削減し、目標値(44t)を大幅にクリアした。
ここ1、2年は鉄道貨物輸送を前期比で1・5倍に増やす目標を定め、鉄道貨物輸送のさらなる拡大を目指している。従来、鉄道貨物輸送は「1コンテナ・1荷主」だったが、座間工場では30㎏以下の軽量貨物の発送で、通運会社の協力を得ながら、12ftコンテナに環境に配慮した複数の荷主企業の製品を混載する取り組みも今期からスタートした。
環境にやさしい物流に取り組む企業姿勢を対外的にアピールするため、24年4月からは、京三製作所の社名、ロゴマーク、企業理念などをあしらったオリジナルデザインの私有コンテナ2基を投入した。日本石油輸送(JOT)が製作したもので、ベース色は白色のほか、京三製作所のコーポレートカラーである青色の2種類となっている。
京三製作所が鉄道貨物輸送で利用している3駅(横浜本牧駅、横浜羽沢駅、相模貨物駅)のうち、横浜本牧駅からの発送分で運用し、札幌、盛岡、神戸、岡山、広島向けに輸送実績がある。出荷が不定期のため、往復運用のハードルは高いが、着地から神奈川方面へのモーダルシフトを希望する荷主との共同利用の可能性も探る。
鉄道貨物輸送は、トラック輸送と比べてリードタイムが長くなってしまうという課題がある。着地で鉄道コンテナからユニック車に積み替えて納品するケースが多く、ユニック車の手配が難しくなってきている。また、線路の保守作業は夜間に行われるため、夜間の配送に対応できる運送会社の確保なども将来的な物流課題として挙げる。これらの課題解決を図り、モーダルシフト推進に取り組んでいる。
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