カーゴニュース 2025年3月13日 第5323号

インタビュー
グローバル営業を加速させる基盤づくりを進めていく
NIPPON EXPRESSホールディングス
専務執行役員 グローバル事業本部長
古江忠博 氏

2025/03/12 17:00
FOCUS インタビュー グローバル物流

 変化の激しい事業環境の中で難しい舵取りが求められるグローバル事業。その中で、NXグループは「2037年に海外売上高を5割以上に高める」という目標を掲げ、長期ビジョン実現に向け着実に歩みを進めている。グローバル部門を統括するGBHQ(グローバル事業本部)のトップである古江忠博氏に、フォワーディング事業の現状と今後、さらなる成長に向けた戦略や課題を聞いた。

(インタビュアー/西村旦)

 

前期は航空運賃の上昇に苦戦

 

 ――前期(2024年1~12月期)のグローバル事業のマーケット環境はかなり厳しいものがありました。

 

 古江 上期については、世界的に荷動きが低調に推移し、当初の見通し通り厳しい状況が続きました。一方、下期からは回復に向かうと予想しており、実際、物量的にはかなり回復したのですが、途中で若干の息切れもあり、利益面での着地は計画を下回りました。ただ、売上高については年初にグループ化したCP(cargo-partner)社の寄与もあり大幅な増収となりました。

 

 利益が計画を下回った最大の要因は、航空運賃のボラティリティに尽きます。中国などアジア発欧米向けを中心に、eコマース(EC)の需要増に伴って運賃が高水準で推移しており、日本発の運賃もそれに連動して大きく上昇しました。その結果、ウィンターシーズンにおける航空会社との交渉に苦戦し、お客様への価格転嫁のタイミングにずれが生じるなど、想定通りに進まなかった面がありました。

 

 海上輸送の場合は、BCO(Beneficial Cargo Owner=実荷主)が船社と直接契約を結ぶ比率が高いこともあり、フォワーダー(FWD)との交渉でも船運賃の上昇をすぐに反映していただける傾向があります。しかし航空輸送は、大半がFWDを介した取引になるため、大口顧客との交渉でも上昇分をすぐに転嫁できずに難航するケースが多く見られました。

 

 また前期は、米東海岸での港湾ストや紅海情勢などにより、船落ち貨物がもう少し増えるのではないかと考えていましたが、結果的に大きなインパクトを与えるほどの動きにはつながりませんでした。

日本発航空貨物の粗利益推移

――EC需要を背景にした航空運賃の高止まりは今後も続くでしょうか。

 

 古江 当面は高い水準が続くと思います。今まさに、サマーシーズンの運賃交渉の最中なのですが、運賃高騰の影響を極力避けるためには、特定の航空会社に一定数量を傾斜的に搭載していったほうがインセンティブを受けやすく、年間トータルでは有利に働くだろうと考えています。そのためにも、当社とCP社の物量と合わせたスケールメリットを活かし、航空会社から競争力のあるレートを引き出していく方針です。とはいえ、マーケットの状況によってはスポットで単発的にスペースを仕入れたほうがいいケースもありますので、バランスをしっかり見ていく必要があります。

 

 ――トランプ大統領の就任による影響についてはどのように見ていますか。

 

 古江 EC貨物について言えば、中国から直接航空輸送で持ち込むのではなく、米国内で一度在庫する動きが一部で始まっています。また、現在800ドルに設定されている個人輸入の非課税枠が引き下げられることになれば、米国向けECの荷動きが多少減速することも考えられます。昨年のピーク時には、中国から1日あたり約9000tのEC貨物が海外に輸出されていたと聞きます。これを大型フレイターに換算すると、1日で約100機のフレイターが欧米などに向けて飛んでいた計算になります。仮にEC貨物の荷動きが多少でも鈍化すれことになれば、余剰分のフレイターのスペースが市場に出回ることになるので、運賃市況にインパクトを及ぼす可能性もあります。今期はそうした状況についても慎重に見極めていかなければなりません。

 

今期はSMEの新規獲得で利益の積み上げを

 

 ――今期はグローバル全体でどの程度の成長を見込んでいますか。

 

 古江 マーケット全体では5%程度の伸長が見込まれており、そこにNXグループとしての自助努力をどこまで積み上げていけるかだと思います。当社の最大の強みは日本発とイントラアジアの域内物流にありますが、例えば南アジア発欧米向けといったロングホールの取り扱いをこれまで以上に増やしていくことで、数量、売上ともに増やしていきたいと考えています。

 

 FWD事業では、引き続き数量拡大にこだわっていきます。そのためには、社内でGAM(Global Account Management)やJAM(Japan Account Management)と呼んでいる非日系および日系の大口顧客から出荷される貨物を、ビッドを通じて着実に確保していく必要があります。ここで一定のボリュームを担保することによって、航空会社に対する購買力を強化することができます。一方で今期は、SME(Small and Midsize Enterprises)と呼ばれる中小・中堅企業の新規開拓に従来以上に注力していきます。分かりやすく言えば、大口顧客でボリュームを確保した上で、中小・中堅規模の顧客を獲得していくことで利益を積み上げていくというイメージです。

FWD数量の実績と目標

 ――FWD事業の物量はグローバル成長における重要なKPIのひとつになっていますが、航空で年間100万t、海上で年間100万TEUの大台が見えてきました。

 

 古江 前期はオーガニック成長に加えてCP社の寄与もあり、航空を92・1万t、海運を89・9万TEUまで増やすことができました。前期からスタートした経営計画では、最終年度となる28年度に航空で130万t、海運で140万TEUという目標を掲げていますが、その実現に向けて順調なペースで進んでいます。

 

 海運については、以前から100万TEUがひとつのベンチマークになるという見立てをしてきましたが、その数字に近づいてきたことで、欧米系のメガ船社としっかりしたディールができるようになるなど、数量効果を実感しています。とくに欧州船社にとってはCP社を買収したことによるインパクトが大きかったようで、彼らに対する当社のプレゼンスが少しずつ上がってきました。

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