カーゴニュース 2025年3月13日 第5323号
2024年2月から13年ぶりにフレイター事業を再開した日本航空。東アジア発着の旺盛な航空貨物需要を取り込み、1年目を順調に終えようとしている。執行役員貨物郵便本部長として事業を牽引する木藤祐一郎氏に、航空貨物のマーケット動向や新年度に向けた事業戦略などをインタビューした。 (インタビュアー/西村旦)
――日本発着を中心とした航空貨物市場の現況はいかがでしょうか。
木藤 2024年度の航空貨物マーケットは、非常に厳しかった23年度に比べおおむね好調に推移しています。とくにアジア・中国から北米向けの太平洋路線は、旺盛な中国発のeコマース(EC)需要によって供給スペースが非常にタイトになり、高水準な運賃単価が続いています。その流れもあり、日本発の輸出についても好調でした。一方、日本着の輸入については為替の影響もあり、コロナ前の状況には戻っていません。
25年度についても、現在の市況が大きく変わるという見立てはしておらず、基本的に今期と同様のトレンドが続くと考えています。トランプ政権による関税政策の変更という不透明な要素はあるため注視する必要はあるものの、米国の消費動向は堅調であり、米国が世界からモノを買わなくなるということは、少なくとも短期的にはないだろうと見ています。
フレイター再開でコンビネーションキャリアへ
――御社は昨年2月にフレイター(貨物専用機)事業を再開しました。13年ぶりの復活となったわけですが、まずは再開を決めた理由と経緯について教えてください。
木藤 最大の理由はコロナを経験したということです。ご存知の通り、当社は2010年に経営破綻し、最大14機保有していたフレイターの運航を停止して機材を売却しました。当時の状況を振り返ると、航空貨物市場はリーマンショック後の低迷が続いており、当社の貨物事業も供給過多の状態にありました。そこにタイミング悪く、機材更新の時期が重なってしまいました。それ以前は償却が終わった機材を使うことで低コストに運航できていましたが、最新機材に入れ替えたことで償却負担が増え、利益率が一気に悪化しました。そのため、破綻後は旅客事業に一点集中して再生を遂げるという方針のもと、貨物は旅客機のベリースペースを活用する形に転換し、これまでビジネスを続けてきました。
しかし、その後に起きたコロナによって、今度は旅客事業が大きな打撃を受けてしまいました。コロナ期間中は、運休となった旅客機を使って貨物便を月間1000便ペースで運航し、赤字額の抑制に一定程度寄与するなど、貨物事業が経営の一端を支える役割を担いました。そうした経験もあり、旅客事業による〝一本足打法〟ではなく、JALグループとして収益の柱を複数持っておく必要があるという経営判断に至りました。
――それがフレイター事業の再開につながるわけですね。
木藤 東アジアの高まる需要にお応えするため、B767―300ER型の旅客機3機をフレイターに改修することを決定しました。また、フレイター事業を再開するのであれば、経営破綻前と同じビジネスモデルを踏襲することは避ける必要がありました。具体的には、すべてをマーケットの趨勢に委ねるのではなく、DHLとの長期的な提携関係を構築することで収益を安定化させると同時に、自社でも販売するというハイブリッドモデルを採用することにしました。それによって、フレイタービジネスの最大の弱点であるボラティリティを抑制することを目指したわけです。
運航は、昨年2月から成田と中部を基点に台北、ソウルから開始し、3月に上海、4月に香港、天津、6月に大連と順次路線を増やし、現在は東アジアの6都市を結んでいます。
――貨物搭載状況はいかがでしょうか。また、搭載貨物はどのようなものが多いのでしょうか。
木藤 運航開始から1年が経過しましたが、非常に順調です。とくに日本着の便についてはほぼ満載状態が続いています。基本的には日本国内向けよりも北米向けの貨物が多く、成田を経由して当社の北米便につなぐケースが多くなっています。当社は太平洋路線ではフレイターを運航していませんが、大型旅客機のベリーであれば最大20t程度の搭載が可能です。
搭載貨物は、自動車部品や半導体関連、生鮮品などが中心です。中国や韓国発では一部、EC貨物もありますが、比率自体はそれほど高いものではありません。
――現在は2機による運航ですが、近く3機体制に増強されると聞いています。
木藤 機材としては3機保有していますが、整備などの関係から現在に飛んでいるのは2機となります。これを今年5月にも3機運航に増やします。運航体制が強化されることで、既存路線の増便に加え、新たにベトナム・ハノイへも就航します。
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