カーゴニュース 2025年4月24日 第5334号
日本自動車工業会(片山正則会長)はこのほど、2024年度に実施した「普通トラック市場動向調査」の結果をまとめた。それによると、トラックユーザーである運輸業、自家用とも経営状況が好転した事業所は前回調査より増えたものの少数派にとどまっており、エネルギー価格の高止まりなどが経営を圧迫している。とくに運輸業では「2024年問題」の影響でドライバー不足傾向が強まっている実態が明らかになった。また、物流DXへの認識は高まっているものの、現状での取り組みは限定的であることが浮き彫りになった。
経営状況「好転」は少数、燃油高騰が圧迫
同調査は、普通トラックの保有・使用実態や輸送ニーズ、市場環境の変化を時系列的に捉えるため隔年で実施している。今回は昨年8~10月に、全国の普通トラック保有事業所(運輸業、自家用)にアンケート調査し、有効サンプル数は1324(運輸業1005、自家用319)。また、大手荷主4社へのヒアリング調査も行った。
ユーザーの経営状況を見ると、「好転」した事業所は、運輸業では前回(22年度)の15%から24%に増加。自家用も35%と増加傾向が続いているものの、比率では少数派。2年前と比べた荷扱量水準は、運輸業で平均96・7%と前回の93・0%より増加。トラックの稼働状況が「繁忙」な割合は、運輸業で34%(前回31%)に増えた一方、自家用は28%(同38%)に減少。燃油費は経営上の課題として引き続き大きく、大半の事業所が本格的な経営の回復には至っていない様子がうかがえる。
普通トラックの新車販売台数は、22年に過去10年で最低となった後、23年、24年と回復傾向にある。一方、普通トラック保有台数は24年3月推計値で減少に転じた。運輸業の保有車の購入形態は「代替」が6割台で過半数を占める。保有台数の増減や今後5年間の購入意向は前回調査から大きな動きはないが、運輸業の中で保有台数の多い事業所や経営状況が好転した事業所では購入意向が相対的に高くなっている。
「24年問題」対応の一環で車両大型も検討
ドライバー不足感(「かなり」と「やや」合計)は、自家用で19%(前回21%)と微減したが、運輸業では45%(前回39%)に増加し、運輸業で切迫感が強まっている傾向がうかがえる。また、運輸業では1回あたり平均運行距離と月間走行距離が減少傾向にあり、時間外労働上限規制の影響がうかがえる。「2024年問題」への運輸業の対策では、「荷主への運賃値上げ交渉」「高速道路利用を増やす」「ドライバー給与引き上げ」が上位を占めた。また、10tクラスの保有率増加や大型免許対応車の増車計画があり、対策としてトラック大型化による輸送効率化を考えている事業所があるとした。荷主への要望では「運賃適正化」「荷待ち時間短縮」「運行時間帯最適化」が上位を占め、金銭面と時間面の両面からさらなる改善を望んでいる状況がうかがえる。
実施している環境施策は「エコドライブ」「低燃費車の使用」が運輸業・自家用ともに上位。環境配慮型トラックの導入意向では、中型ハイブリッドトラックが2割弱と前回並みとなった。導入に向けた課題は「車両価格が高い」「充電インフラ」「航続距離の短さ」「積載量・スペースの縮小」などが多く、導入時の用途は「中・近距離の幹線輸送」が半数近くを占めた。
一方、事故防止を含めた安全対策では、運輸業で「乗務前の酒気帯び確認」が9割と最多で、対面点呼、健康管理が8割弱で続く。自動運転・隊列走行については「ドライバー不足解消」「事故減少」での効果を認識しつつも、自動運転の導入意向は3割程度と前回調査並みにとどまった。
物流DXへの認識高まるも対応は限定的
物流DXへの対応については、今後の取り組み予定としての認識が高まっている(運輸業24%、自家用18%)ものの、実施状況は「輸送業務関連ソフト・ハードのDX化」が運輸業で11%と下位にとどまる。運行管理システム関連では「車両位置確認」が運輸業の4割弱導入されているが、求貨求車(Web配車マッチング)などの導入は1割以下にとどまった。また、荷主との連携におけるDX関係の取り組みも低位にとどまり、本格的な取り組みには至っていない状況がうかがえる。
大手荷主は多角的な対応を促進
調査では、荷主企業4社(キユーピー、大林組、キリングループロジスティクス、セブン―イレブン・ジャパン)へのヒアリングも併せて実施。各社ともトラックドライバー対応、ASN(事前出荷情報)活用、倉庫・現場管理、環境車導入など幅広い取り組みを進めていることが確認された。
「24年問題」に対しては、ドライバーの労働時間管理や運賃改定への対応が進んでいる。リードタイム短縮、待機時間削減、荷役作業改善といった商慣行の見直しや、ドライバーの労働環境改善にも積極的に対応。共同輸配送や鉄道・船舶へのモーダルシフト、中継輸送なども活用している。トラックメーカーに対しては、荷室形状改善、コンテナサイズ標準化、動態管理標準装備化などを要望する声があった。
物流DXでは、ASNによる検品レス化、倉庫内作業システム、入退場管理、動態管理などで効率化や見える化が進んでおり、フィジカルインターネットなど最新動向を踏まえたトラックメーカーからの提案や、自動運転への期待も聞かれたという。環境対応面では、EV・FCV導入に加え、バッテリー技術、再生可能エネルギー利用、水素ステーション整備、リトレッドタイヤ利用など多岐にわたる。行政に対しては、環境対応車種の拡充や、車両価格・インフラ整備への補助・支援を求める声があった。
特徴的なのは、自社の事業範囲にとどまらず、3PLや同業他社、異業種、自治体など、幅広いステークホルダーとの連携が進んでいる。物流が「商流を超えた関係性の構築」の契機となり、連携や共同化を拡大するための支援が必要とされていることが確認できたとしている。
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